株式会社ワールドの2026年2月期第2四半期(中間期)連結決算は、売上収益が1,369.16億円(前年同期比24.3%増)、コア営業利益が83.03億円(同3.4%増)、営業利益が93.17億円(同18.1%増)、純利益が56.40億円(同20.8%増)と、大幅な増収増益を達成した。特に、プラットフォーム事業とデジタル事業が好調に推移し、グループ全体の業績を牽引した。一方で、主力のブランド事業は春夏商戦の苦戦や商品切り替えの遅延により、コア営業利益が計画未達となったものの、非アパレル事業の好調がこれを補い、強靭な収益構造への転換が進んでいることを示した。財務面では、株主資本コスト(COE)の低減や成長投資加速の基盤整備が進み、ROEは14.5%、ROICは9.3%と目標値を上回る進捗を見せている。また、ナルミヤ・インターナショナル株式会社を株式交換により完全子会社化し、今後の利益流出停止効果を見込む。通期業績予想も修正(増額)されており、会社としては今後の業績に自信を持っていることが伺える。全体として、非アパレル事業の成長とM&A効果により好調な決算であり、今後の成長に向けた基盤は着実に強化されていると評価できる。
2026年2月期第2四半期(中間期)連結累計期間の全社業績は、売上収益が前年同期比24.3%増の1,369.16億円、コア営業利益が同3.4%増の83.03億円、営業利益が同18.1%増の93.17億円、税引前利益が同14.3%増の84.01億円、親会社の所有者に帰属する中間利益(純利益)が同20.8%増の56.40億円となり、大幅な増収増益を達成した。これは、事業ポートフォリオ改革の成果として、非アパレル事業が好調に推移し、アパレルブランド事業の不振を補完した結果、グループ全体として全ての損益段階で増益を確保したことによる。
指標 | 2026年2月期2Q(累計) | 2025年2月期2Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上収益 | 1,369.16億円 | 1,101.13億円 | 24.3% |
コア営業利益 | 83.03億円 | 80.33億円 | 3.4% |
営業利益 | 93.17億円 | 78.90億円 | 18.1% |
税引前利益 | 84.01億円 | 73.47億円 | 14.3% |
純利益 | 56.40億円 | 46.69億円 | 20.8% |
ブランド事業が占める全社売上割合は約67.7%である。 ブランド事業においては、あるべきブランドポートフォリオ戦略の完遂に向けて、成長性と収益性のバランスが取れた持続的成長を追求している。百貨店を中心に展開するミドルアッパーブランドは、差別化された高付加価値商品開発や自社工場体制の垂直統合による国産回帰を進めている。マルチチャネル化やOMO戦略を通じてお客様との強いつながりを構築し、新たな成長創造に取り組んでいる。ショッピングセンターを中心に展開するミドルロワーブランドは、商品調達部隊の垂直統合による直貿化推進で原価率低減や価格競争力強化に努めている。また、ミドルロワーブランド事業子会社の一社統合によるスケール活用やノウハウ共有で、店舗運営の改良や店舗開発の強化に取り組んでいる。ライフスタイルブランドは、暮らしに寄り添った衣・食・住を提案し、お客様の支持拡大に努めている。前連結会計年度に行ったミドルロワー系のライフスタイルブランド事業の一社統合によるリソース融通やノウハウ共有により、収益構造の抜本的な改革効果も発現している。新規ライフスタイルブランドの開発も継続して取り組んでいる。投資グループにおいては、プラットフォーム導入によるシナジー追求や収益構造の向上・確立をテーマに掲げ、株式会社ライトオンの事業再生も当初想定を上回る進捗を見せている。海外事業の開発・拡張も積極的に進め、タイでは「RAGTAG」の海外1号店・2号店を出店し、台湾ではナルミヤ・インターナショナルと共同で「プティマイン」の海外1号店・2号店を香港に出店した。当中間連結会計期間では、春夏商戦における一部アパレルブランドのMD設計が顧客ニーズを捉えきれなかったことや、暑秋への切り替え課題による苦戦が響き、ライフスタイルブランドの好調さを打ち消す形となった。この結果、ブランド事業の売上収益は956.61億円(前年同期比1.0%減)、コア営業利益は42.57億円(同16.3%減)と減収減益となった。
デジタル事業が占める全社売上割合は約4.0%である。 デジタル事業は「B2Bソリューション」と「B2Cネオエコノミー」から構成されている。B2Bソリューションでは、EC運営受託サービスにおいて、自社ブランドの直営ファッション通販サイト「ワールドオンラインストア(WOS)」や他社公式ECの開発・運営を受託している。自社サイト運営ではアプリの機能改善やOMO活動への投資を進め、直営店舗とのシームレスなサービス改善を推進している。ソリューションサービスでは、自社グループの物流コスト抑制や基幹システム更新に加え、他社への在庫コントロールシステム導入・運用サービス提供を進め、売上拡大に向けた営業活動を強化している。B2Cネオエコノミーでは、「サーキュラー」に焦点を当てた成長戦略を追求しており、ユーズドセレクトショップ「RAGTAG」を運営する株式会社ティンパンアレイは店舗とECの相互活用による仕入・販売両面のOMO戦略で成長を追求している。海外展開ではタイ国内での店舗展開に挑戦しており、オフプライスストア「& Bridge」を運営する株式会社アンドブリッジは、株式会社ティンパンアレイとの事業連携を推進し、店舗収支の改善やECの大幅伸長といったシナジー効果を出している。当中間連結会計期間のセグメント利益は、上場に伴うラクサス・テクノロジーズ株式会社の連結子会社から持分法適用関連会社への連結範囲の変更がマイナスに影響したものの、B2BソリューションでEC受託事業の収支改善を実現した株式会社ファッション・コ・ラボなどが牽引し、期初計画に対して強含みの好調な推移となった。この結果、デジタル事業の売上収益は149.61億円(前年同期比11.8%減)、コア営業利益は9.49億円(同22.1%減)と減収減益となった。
プラットフォーム事業が占める全社売上割合は約28.2%である。 プラットフォーム事業では、ワールドグループが培ってきたノウハウと仕組みを活用し、外部企業へのオープン化を推進することで、業界の枠組みを超えた新たな事業領域の拡大に取り組んでいる。中間持株会社の株式会社ワールドプラットフォームサービスは、事業マネジメント機能と外部顧客へのマーケティング機能を有し、各プラットフォームのノウハウ・仕組みを横断的に組み合わせ、最適なサービスをワンストップで提供している。生産プラットフォームの株式会社ワールドプロダクションパートナーズは、商社機能を発揮して直接貿易スキームの構築や、製造子会社群の生産性改善の指導・支援を行っている。外販主体の専門商社である株式会社イディオムや縫製工場の株式会社ラ・モードでは、他社アパレルの商品開発及び製造(OEM・ODM事業)を受託している。販売プラットフォームの株式会社ワールドストアパートナーズは、アウトレット「NEXT DOOR」や他社ブランドの出店を増やし、ファミリーセール等の催事運営や販売代行業務を拡充している。アパレル起点の生産・販売プラットフォーム以外では、株式会社アスプルンドに代表される子会社群が、空間創造や什器・備品の製造販売、家具や雑貨の卸からコントラクトに至るライフスタイル領域も手掛けており、サービスラインやクライアント層の幅を拡張している。M&Aも活用し、B2B事業基盤の拡充を進め、「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築に向けて更なる事業基盤の拡充を図っている。具体的な事例として、2025年2月28日付で子会社化したエムシーファッション株式会社、2025年3月1日付で子会社化した株式会社ワールドソーイングの連結加入により、生産プラットフォームのリソースが大きく拡充され、シナジー効果を追求している。当中間連結会計期間では、取引条件の変更による粗利確保や案件単位の採算性吟味による外販受注を継続的に進め、為替変動に対する抵抗力強化やクロスセルなどで成果を得つつある。前年同期との比較では、エムシーファッション株式会社の連結加入に伴うB2B外販の収益拡大がセグメント利益の増加へ大きく寄与した。この結果、プラットフォーム事業の売上収益は643.70億円(前年同期比82.1%増)、コア営業利益は23.50億円(同185.7%増)と大幅な増収増益となった。
株式会社ワールドは、2025年7月3日開催の取締役会において、株式会社ナルミヤ・インターナショナル(以下「ナルミヤ」)を株式交換により完全子会社化することを決議し、同日、株式交換契約を締結した。この株式交換は、2025年10月1日を効力発生日として実施された。これにより、当社とナルミヤは情報や人的資源の協業体制を強化し、迅速な意思決定体制のもとで経営を推進できる環境を構築することで、グループ全体の企業価値を将来にわたり最大化することを目指す。ナルミヤはベビー・子ども服の企画販売事業、オリジナル、ライセンスブランドの展開による子ども服及び関連製品の製造加工販売を手掛けており、今回の完全子会社化により、非支配持分への利益流出の停止効果が見込まれる。 また、当中間連結会計期間の開始前である2025年2月末にはエムシーファッション株式会社を、2025年3月1日には株式会社ワールドソーイングをそれぞれ連結子会社化した。これらのM&Aにより、特にプラットフォーム事業における生産リソースが大きく拡充され、シナジー効果を追求しながら一層の事業拡大を推進している。エムシーファッション株式会社の連結加入は、B2B外販の収益拡大に大きく寄与し、プラットフォーム事業の売上収益およびコア営業利益の大幅な増加に貢献した。
2026年2月期の通期連結業績予想は、本日(2025年10月3日)公表された「通期業績予想の修正及び配当予想の修正(増配)に関するお知らせ」にて修正された。売上収益、各利益項目ともに上方修正されており、会社として今後の業績に強い自信を持っていることが示されている。第2四半期(中間期)時点での進捗率は、売上収益が45.6%、純利益が47.0%であり、通期目標達成に向けて順調な進捗を見せている。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
---|---|---|
売上収益 | 3,000.00億円 | 45.6% |
コア営業利益 | 200.00億円 | 41.5% |
営業利益 | 195.00億円 | 47.8% |
税引前利益 | 183.00億円 | 45.9% |
純利益 | 120.00億円 | 47.0% |
当中間連結会計期間末の資産合計は2,638.45億円となり、前連結会計年度末に比べて99.81億円減少した。これは主に、現金及び現金同等物が約84億円、使用権資産が約52億円それぞれ減少した一方で、売上債権及びその他の債権が約31億円増加したことによる。 負債合計は1,738.15億円となり、前連結会計年度末に比べて135.60億円減少した。主な要因は、仕入債務及びその他の債務が約30億円、借入金が約50億円、リース負債が約56億円それぞれ減少したことである。 資本合計は900.30億円となり、前連結会計年度末に比べて35.79億円増加した。これは主に、親会社の所有者に帰属する中間利益約56億円を計上した一方で、配当金を約15億円支出したことによる。親会社の所有者に帰属する持分は849.06億円となり、前連結会計年度末から37.06億円増加した。 ネットD/Eレシオは0.86倍と前連結会計年度末と同じ水準を維持しており、財務体質の健全化が進んでいる。ROEは14.5%(前連結会計年度比1.0ポイント増加)、ROICは9.3%(同0.8ポイント増加)となり、資本効率も改善している。 キャッシュフローの状況では、営業活動によるキャッシュフローは97.41億円の収入となったが、前年同期比では60.04億円の収入減となった。これは主に、エムシーファッション株式会社の連結加入を背景とした運転資本の増加がマイナス要因となったためである。投資活動によるキャッシュフローは34.25億円の支出となり、前年同期比で16.59億円の支出増となった。これは、今後の金利上昇を見据え、店舗の出店・改装に係る投資をリースから自社取得に切り替えたことによる有形固定資産の取得約15億円が主なマイナス要因である。財務活動によるキャッシュフローは148.44億円の支出となり、前年同期比で6.33億円の支出減となった。短期借入金の純増減約60億円がマイナス要因となった一方で、その他資本性金融商品の償還約50億円、長期借入れ約30億円がプラス要因となった。 これらの結果、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物残高は133.08億円となり、前連結会計年度末より84.40億円減少した。
配当
自己株式取得
自己株買い
株主優待
株式会社ワールドの2026年2月期第2四半期決算は、売上収益、各利益項目ともに大幅な増収増益を達成し、通期業績予想も上方修正されたことから、投資家にとっては全体としてポジティブな内容と評価できる。特に、プラットフォーム事業やデジタル事業といった非アパレル事業が好調に推移し、グループ全体の業績を牽引している点は、事業ポートフォリオ改革の成果が着実に表れていることを示唆し、特定の事業環境変化に左右されにくい強靭な収益構造への転換が進んでいるという経営陣の認識は、企業価値の安定性向上に寄与する。
しかし、主力のブランド事業において、春夏商戦の苦戦や商品切り替えの遅延によりコア営業利益が計画未達となった点は、今後の課題として注視が必要である。気候変動への対応、MD設計の精度向上、生販コントロールの質・量両面での改善が、ブランド事業の収益性回復と持続的成長には不可欠となる。この課題への具体的な取り組みと進捗が、今後の投資判断において重要な要素となるだろう。
M&A戦略も積極的に推進されており、ナルミヤ・インターナショナル株式会社の完全子会社化は、非支配持分への利益流出停止効果を通じて、今後の利益成長に貢献する見込みである。また、エムシーファッション株式会社や株式会社ワールドソーイングの連結加入による生産プラットフォームのリソース拡充は、B2B外販の収益拡大に寄与し、プラットフォーム事業のさらなる成長を後押しする。これらのM&Aによるシナジー効果の最大化が、今後の企業価値向上に直結する。
財務面では、株主資本コスト(COE)の低減や成長投資加速のための基盤整備が進み、ROEやROICといった資本効率指標も目標値を上回る進捗を見せている。これは、資本を効率的に活用し、株主価値を向上させるという経営陣のコミットメントを示すものであり、投資家にとっては安心材料となる。
通期業績予想の上方修正は、会社が今後の業績に対して自信を持っていることの表れであり、第2四半期時点での進捗率も順調である。しかし、通期目標達成には後半の巻き返しも必要であり、特にブランド事業の課題克服が通期目標達成の重要な鍵となる。
総じて、株式会社ワールドは、事業ポートフォリオ改革とM&A戦略を通じて、非アパレル事業の成長を加速させ、強靭な収益構造への転換を進めている。主力ブランド事業の課題解決と、M&Aによるシナジー効果の最大化、そして資本効率のさらなる改善が、今後の企業価値向上に向けた重要なドライバーとなる。投資家は、これらの戦略の実行状況と、それに伴う業績の推移を継続的に評価していく必要がある。
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