ファーストブラザーズ株式会社の2025年11月期第3四半期決算資料に基づき、以下のレポートを作成する。
ファーストブラザーズ株式会社の2025年11月期第3四半期連結累計期間は、売上高103.14億円(前年同期比30.4%増)、営業利益15.77億円(同37.3%増)、経常利益9.25億円(同25.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益6.59億円(同31.4%増)と、大幅な増収増益を達成した。これは主に投資銀行事業の好調が牽引した結果である。しかしながら、通期業績予想に対する進捗率は、売上高が約57.5%、営業利益が約44.8%、経常利益が約42.4%、純利益が約48.1%と、第3四半期終了時点としてはやや低調な水準にとどまっている。通期業績予想は据え置きであり、残りの四半期での挽回が期待される。株主還元については、2025年11月期の期末配当予想を35.00円としており、年間合計で35.00円の配当を予定している。全体として、好調な事業セグメントがある一方で、外部環境の不透明感や通期予想に対する進捗の遅れが見られ、投資家にとっては今後の動向を慎重に見極める必要がある決算発表であった。
当社グループは、投資運用事業、投資銀行事業、施設運営事業を収益の柱として事業を推進している。当第3四半期連結累計期間は、売上高103.14億円、営業利益15.77億円、経常利益9.25億円、親会社株主に帰属する四半期純利益6.59億円を計上し、前年同期比で大幅な増収増益を達成した。これは主に、投資銀行事業における計画に沿った物件売却や賃貸不動産の収益性向上施策が奏功したことによる。一方で、投資運用事業は受託残高の減少により減収減益となり、施設運営事業は損失を計上したものの、前年同期比では損失幅を縮小した。当社グループの四半期業績は、物件の売却時期等により大きく変動する特性がある。
指標 | 2025年11月期3Q(累計) | 2024年11月期3Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 103.14億円 | 79.09億円 | 30.4% |
営業利益 | 15.77億円 | 11.49億円 | 37.3% |
経常利益 | 9.25億円 | 7.35億円 | 25.8% |
純利益 | 6.59億円 | 5.02億円 | 31.4% |
投資運用事業は全社売上高の約1.09%を占める。当第3四半期連結累計期間において、投資運用事業の売上高は1.13億円(前年同期比23.8%減)、営業利益は0.73億円(前年同期比7.3%減)となった。投資家から資金を預かり、都心・大型不動産への投資・運用を行うファンドビジネスを展開している。当期は、ファンドの投資対象となる都心・大型不動産売買市場において、投資家の投資意欲は高いものの、国外不動産市場の動向や長期金利上昇傾向等から慎重な取引環境が続いた。このため、当社が主体的に組成するファンドでの新規取得はなかった。一方で、投資家からの求めに応じ、期中管理業務受託をしている不動産については、質の高いサービスを提供することで、アセットマネジメントフィーを受領している。しかし、前年に比べて受託残高が減少したこと等から、売上高および営業利益は減少した。
投資銀行事業は全社売上高の約86.15%を占める。当第3四半期連結累計期間において、投資銀行事業の売上高は88.86億円(前年同期比34.7%増)、営業利益は22.90億円(前年同期比21.4%増)と大幅な増収増益を達成した。自己勘定で不動産を中心に投資・運用を行うビジネスであり、流通件数が多い中小型の賃貸不動産を主な投資対象としている。首都圏のみならず全国に投資対象を広げ、良質な不動産を厳選・取得し、ポートフォリオの利回りを確保している。期中の運用では、物件ごとの個別性を踏まえて価値最大化施策を実施し、時機を逃さず物件価値が最大化されたタイミングで売却を行い、得られた売却益を新たな物件の取得原資として活用している。第2四半期に引き続き、中小型不動産市場も長期金利の上昇傾向や都心部での過熱感による利回り低下傾向が見られたが、金融機関の貸出態度は大きな変化はなく、投資家の投資意欲は高い状態が続いている。短期金利は長期金利と比較して緩やかではあるものの、上昇傾向にあるが、上昇ペースは落ち着きを見せている。現時点で大きな影響は出ていないが、今後も金利動向を注視し、投資基準や財務規律をより一層慎重にモニタリングする方針である。保有する賃貸不動産の収益性向上施策と計画に沿った物件売却が、業績を大きく牽引した。
施設運営事業は全社売上高の約13.30%を占める。当第3四半期連結累計期間において、施設運営事業の売上高は13.72億円(前年同期比8.8%増)、営業損失は0.44億円(前年同期は0.94億円の損失)となった。宿泊施設(ホテル、旅館)等の運営を行うビジネスであり、旅行・ホテル市場は堅調な日本人の旅行・観光需要に加え、訪日外国人観光客の増加等宿泊需要の回復が継続している。一方で、物価上昇に伴う原材料費の上昇や人手不足など、オペレーションを取り巻く厳しい環境が続いている。当期は、SNS等で「日本で地震が発生する」という情報が拡散された影響により、アジアの一部地域で訪日旅行を控える動きが見られ、一部施設ではインバウンド需要が減退した。のれん償却による費用負担やオペレーションコストの上昇等もあり、営業損失は継続しているものの、前年同期比では損失幅を縮小した。
当第3四半期連結累計期間において、事業/資本提携やM&Aに関する具体的な発表はなかった。投資運用事業においては、当社が主体的に組成するファンドでの新規取得は行われなかった。投資銀行事業では、物件売却益を新たな物件の取得原資として活用し、ポートフォリオの規模拡大・成長に努めている。これは、既存事業の強化と持続的な成長を目指す方針の一環である。
2025年11月期通期の連結業績予想は、2025年1月10日に公表された内容から変更なく据え置きである。第3四半期連結累計期間の実績は、通期予想に対して売上高で約57.5%、営業利益で約44.8%、経常利益で約42.4%、純利益で約48.1%の進捗率となっている。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
---|---|---|
売上高 | 179.50億円 | 57.5% |
営業利益 | 35.20億円 | 44.8% |
経常利益 | 21.80億円 | 42.4% |
純利益 | 13.70億円 | 48.1% |
当第3四半期連結会計期間末の総資産は879.12億円となり、前連結会計年度末に比べ12.28億円減少した。これは主に、現金及び預金が10.48億円、販売用不動産が6.70億円減少した一方で、土地が6.17億円増加したことによる。負債は626.58億円となり、前連結会計年度末に比べ15.75億円減少した。これは主に、ノンリコース長期借入金が14.86億円、未払法人税等が3.45億円減少した一方で、短期借入金が2.72億円増加したことによる。純資産は252.53億円となり、前連結会計年度末に比べ3.46億円増加した。これは主に、その他有価証券評価差額金が1.56億円増加したこと、および親会社株主に帰属する四半期純利益を計上したことにより利益剰余金が1.82億円増加したことによる。なお、当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。
配当
ファーストブラザーズ株式会社の今後の見通しは、第3四半期累計期間の増収増益という好調な業績と、通期業績予想の据え置きという現状維持の姿勢が混在しており、投資家にとっては慎重な評価が求められる。
投資銀行事業は引き続き好調を維持しており、計画に沿った物件売却と賃貸不動産の収益性向上施策が業績を牽引している。金融機関の貸出態度に大きな変化がなく、投資家の投資意欲も高い状態が続いていることはポジティブな要素である。しかし、中小型不動産市場における長期金利の上昇傾向や都心部での過熱感による利回り低下傾向は、今後の事業展開において注視すべきリスク要因となる。金利動向の慎重なモニタリングは、収益性の維持に不可欠である。
一方で、投資運用事業は受託残高の減少により減収減益となっており、国外不動産市場の動向や長期金利上昇傾向が新規取得の抑制に繋がっている。このセグメントの回復には、新たなファンド組成や投資機会の創出が鍵となる。施設運営事業は損失を計上しているものの、前年同期比で損失幅を縮小しており、回復基調にあると評価できる。しかし、物価上昇に伴う原材料費の高騰や人手不足、さらにはSNSでの地震情報拡散によるインバウンド需要の一部減退など、外部環境の厳しさは依然として残る。
通期業績予想が据え置きであるにもかかわらず、第3四半期終了時点での進捗率が営業利益、経常利益、純利益で50%を下回っている点は、投資家にとって懸念材料となる。残りの1四半期で目標達成するためには、投資銀行事業のさらなる好調維持に加え、投資運用事業の改善や施設運営事業の黒字化に向けた具体的な施策の実行が不可欠である。特に、不動産市場の変動リスクや金利上昇の影響をいかに管理し、収益機会を最大化できるかが、今後の企業価値向上に大きく影響する。投資家は、次回の決算発表で通期目標達成に向けた具体的な進捗と、各事業セグメントの課題に対する解決策が示されるかどうかに注目するだろう。現状では、ポジティブな要素とネガティブな要素が混在しており、今後の経営手腕が試される局面である。
• 提供されるレポートに誤った情報が含まれる場合があります。正確性や品質を保証するものではないため、決算短信全文を併せてご確認ください。
• 提供されるレポートに投資を推奨するようにも読み取れる内容が含まれる可能性がありますが、当社が投資を推奨するものではありません。投資に関する決定は、利用者ご自身の判断で行ってください。
• 決算短信についての訂正の開示があった場合でも、訂正の内容はレポートに反映されませんので、最新の適時開示をご参照ください。また、提供されるレポートの内容は予告なく変更されることがありますのでご注意ください。
• 本レポートにより提供される内容について、当社は、その信頼性、正確性、最新性、完全性、有効性、特定目的への適合性、有用性(有益性)、継続性について保証しません。これらに起因してお客様が何らかの損害を被ったとしても、当該損害につき責任を負わないものとします。
• 提供されるレポートを利用する際は、著作権法、商標法、金融商品取引法などの法令に違反しないようご注意ください。
• 提供されるレポートに関する権利は当社に帰属します。これらの情報を第三者に提供する目的での転用、複製、販売、加工、再利用および再配信は固く禁じます。