株式会社サカタのタネの2026年5月期第1四半期連結決算は、売上高230億5百万円(前年同期比9.6%増)、営業利益44億62百万円(同63.5%増)、経常利益48億66百万円(同90.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益36億37百万円(同222.6%増)と、大幅な増収増益を達成した。特に純利益は前年同期の3倍以上となり、非常に好調な滑り出しとなった。この好業績は、国内・海外ともに野菜種子の販売が好調に推移したこと、円高によるマイナス影響を打ち消すほどの増収を達成したこと、売上総利益率の改善、和解金収入の計上、そして前期に計上された災害による損失の剥落などが主な要因である。
また、2025年7月1日付でブラジルのAgritu Sementes Ltda.の全株式を取得し連結子会社化したことを発表。これはブラジル市場でのタマネギ種子ビジネス強化とシェア拡大を目的としたM&Aであり、今後の成長戦略に期待が持てる。株主還元については、2025年10月7日開催の取締役会で自己株式の取得および公開買付けを決議した。取得総数1,100,100株(上限)、取得価額総額36億13百万円(上限)で、取得期間は2025年10月8日から2025年12月31日まで。株主還元の充実と資本効率の向上を目的としており、投資家にとってポジティブな材料である。全体として、本業の堅調な成長に加え、M&Aによる事業拡大、積極的な株主還元策が示されており、投資家にとっては非常にポジティブな決算発表であった。
2026年5月期第1四半期連結累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比9.6%増の230億5百万円を記録し、堅調な成長を示した。利益面では、営業利益が同63.5%増の44億62百万円、経常利益が同90.2%増の48億66百万円と大幅な増益を達成。親会社株主に帰属する四半期純利益に至っては、同222.6%増の36億37百万円と、前年同期を大きく上回る結果となった。これは、主に野菜種子の販売好調、売上総利益の増加、為替差損の減少、受取和解金の計上、および前期に計上された災害損失の剥落が寄与した。
指標 | 2026年5月期1Q(累計) | 2025年5月期1Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 230億円 | 209億円 | 9.6% |
営業利益 | 44億円 | 27億円 | 63.5% |
経常利益 | 48億円 | 25億円 | 90.2% |
純利益 | 36億円 | 11億円 | 222.6% |
国内卸売事業の外部顧客への売上高は43億45百万円で、全社売上高の約18.9%を占める。前年同期比で4.6%の増収、営業利益は22億98百万円で前年同期比6.6%の増益となった。花種子と資材は減収となったものの、野菜種子の売上が大きく伸びたことが増収の主要因である。品目別では、野菜種子においてブロッコリー、トマト、ダイコン、ニンジンが特に好調に推移した。一方で、花種子は花の需要停滞の影響を受け、全般的に低調な推移となった。資材分野では、高機能液肥やバイオスティミュラント資材が増加したが、農園芸用土の減少により微減に留まった。国内市場における野菜種子の堅調な需要が、セグメント全体の業績を牽引した形である。
海外卸売事業の外部顧客への売上高は167億74百万円で、全社売上高の約72.9%を占める。前年同期比で12.3%の増収、営業利益は52億34百万円で前年同期比47.1%の大幅増益を達成した。花種子は減収となったが、野菜種子がその他地域を除くすべての地域で大幅な増収を記録し、セグメント全体の増収に貢献した。地域別では、北中米においてブロッコリー、スイカ、ペッパー、ヒマワリが増加し、野菜種子・花種子ともに増収。欧州・中近東では花種子が減収したものの、野菜種子(トマト、カボチャ)が大きく伸び増収。南米ではカボチャ、ブロッコリー、ビート、ヒマワリが増加し、野菜種子・花種子ともに増収となった。アジアではネギとニンジンが大きく伸び野菜種子が増収したが、花種子(ヒマワリ)の減少により減収となった。グローバルな野菜種子の需要が、海外事業の成長を強く後押ししている。
小売事業の外部顧客への売上高は9億42百万円で、全社売上高の約4.1%を占める。前年同期比で12.0%の減収となり、営業損益は2億10百万円の損失(前年同期は1億17百万円の営業損失)と悪化した。通信販売分野および量販店向けのホームガーデン分野ともに、全国的に厳しい天候要件などにより市場全体が低調に推移したことが減収の主な要因である。市場環境の悪化が直接的に業績に影響を与え、収益性が低下した。
その他の事業の外部顧客への売上高は9億44百万円で、全社売上高の約4.1%を占める。前年同期比で13.6%の増収、営業利益は20百万円で前年同期比166.8%の大幅増益となった。造園緑花分野は、夏の酷暑によるマイナス影響があったものの、公共・民間の植栽工事とマンションなどの植栽維持管理業務が順調に推移したことが増収の要因である。
株式会社サカタのタネは、2025年7月1日付でブラジルのAgritu Sementes Ltda.の全株式を取得し、連結子会社化した。この企業結合の主な目的は、ブラジルにおける野菜種子市場、特にタマネギ種子ビジネスの強化と市場シェアの拡大である。ブラジル市場はトマトに次いでタマネギが大きな市場規模を有しており、Agrituブランドの取得により、サカタのタネグループのSakata Seed Sudamerica Ltda.は、同市場での高い認知度と存在感を活用し、ブラジル市場におけるプレゼンスを向上させることを目指す。
取得対価は現金15億87百万円と繰延対価79百万円の合計16億66百万円であり、繰延対価は万が一の補償に備えて留保されている。このM&Aにより、13億36百万円ののれんが発生しており、これはブラジル市場でのタマネギビジネス強化により期待される将来の超過収益力に起因する。のれんは超過収益効果が発現する期間にわたって均等償却される予定だが、償却期間は現在算定中である。この戦略的なM&Aは、サカタのタネのグローバルな事業展開を加速させ、特に成長市場である南米での基盤を強化し、長期的な企業価値向上に貢献すると想定される。
2026年5月期の連結業績予想は、第1四半期決算発表時点では据え置きである。第1四半期累計の実績は、売上高、各利益項目ともに通期予想に対して順調な進捗を示している。
指標 | 通期予想 | 進捗率(1Q) |
---|---|---|
売上高 | 955億円 | 24.1% |
営業利益 | 110億円 | 40.6% |
経常利益 | 110億円 | 44.2% |
純利益 | 90億円 | 40.4% |
当第1四半期連結累計期間末の総資産は1,936億72百万円となり、前連結会計年度末と比較して26億86百万円増加した。純資産は1,645億66百万円で、前連結会計年度末から27億98百万円増加し、自己資本比率は84.7%と高水準を維持している。
資産面では、流動資産が3億23百万円減少した一方で、固定資産は30億10百万円増加した。流動資産の減少は、商品及び製品の増加があったものの、仕掛品、現金及び預金が減少したことによる。固定資産の増加は、建設仮勘定の減少があったものの、建物及び構築物(純額)や投資有価証券が増加したことが主な要因である。
負債合計は291億5百万円で、前連結会計年度末から1億11百万円減少した。流動負債は支払手形及び買掛金の減少により13億73百万円減少したが、固定負債は繰延税金負債の増加により12億61百万円増加した。
純資産の増加は、配当金の支払による減少があったものの、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により株主資本が17億21百万円増加したこと、およびその他有価証券評価差額金の増加などによりその他の包括利益累計額が10億74百万円増加したことによる。全体として、財務基盤は引き続き安定しており、自己資本比率も高い水準を維持している。
配当
自己株式取得
自己株式の消却
株式給付信託(BBT)
株式会社サカタのタネの2026年5月期第1四半期決算は、売上高、各利益ともに前年同期を大幅に上回る非常に好調な結果であり、投資家にとっては極めてポジティブな内容と評価できる。特に純利益が前年同期比で222.6%増と大きく伸長したことは、本業の収益力向上と、前期の災害損失剥落や和解金収入といった一時的要因が重なった結果であり、今後の業績に対する期待感を高める。
事業面では、国内・海外ともに野菜種子の販売が堅調に推移しており、グローバル市場での競争力が着実に強化されていることが示された。特に海外卸売事業の売上高と営業利益の大幅な成長は、同社の国際展開戦略が奏功している証拠である。一方で、小売事業は天候不順の影響で減収・営業損失を計上しており、このセグメントの回復が今後の課題となる。
M&A戦略として、ブラジルのAgritu Sementes Ltda.の全株式取得を発表したことは、成長市場である南米でのタマネギ種子ビジネスを強化し、市場シェアを拡大する意欲的な姿勢を示すものである。これにより、新たな収益源の確保と地域ポートフォリオの多様化が期待され、長期的な企業価値向上に貢献する可能性が高い。のれんの発生は伴うものの、戦略的な意義は大きい。
株主還元策として、自己株式の取得および公開買付けを決議したことは、株主還元の充実と資本効率の向上に対する経営陣の強いコミットメントを示すものであり、投資家からの評価をさらに高める要因となる。取得期間が比較的短期間に設定されている点も、迅速な還元姿勢として好感されるだろう。また、自己株式の消却も実施しており、発行済み株式数の減少による1株当たり利益の向上も期待できる。
通期業績予想は据え置きであるものの、第1四半期時点での各利益項目の進捗率は40%を超えており、特に営業利益、経常利益、純利益は通期予想に対して非常に順調なペースで推移している。この高い進捗率から、今後の業績上振れへの期待も高まる可能性がある。財務状態も総資産、純資産ともに増加し、自己資本比率も高水準を維持しており、安定した経営基盤が確認できる。
総合的に見て、今回の決算発表は、堅調な本業の成長、戦略的なM&Aによる事業拡大、そして積極的な株主還元策が示されたことで、投資家にとっては非常にポジティブな内容であった。今後の企業価値は、グローバルな野菜種子市場でのさらなる成長、M&Aによるシナジー効果の実現、そして小売事業の回復状況に左右されるが、現時点では強い成長モメンタムと株主還元への意欲が評価され、ポジティブな見通しが示されている。
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