DCMホールディングス株式会社の2026年2月期第2四半期(中間期)連結決算は、営業収益2,803億円(前年同期比△2.6%)、営業利益208億円(同△1.1%)と減収減益となった。しかし、経常利益は199億円(同1.7%増)、親会社株主に帰属する中間純利益は121億円(同3.6%増)と増益を確保した。これは、売上総利益の減少を営業外収益の増加と営業外費用の減少でカバーし、さらに法人税等調整額の減少が純利益を押し上げた結果である。
財政状態では、総資産は前連結会計年度末から61億円減少し6,418億円、純資産は186億円増加し2,829億円となり、自己資本比率は44.1%に改善した。キャッシュフローは、営業活動によるキャッシュフローが329億円の収入、投資活動によるキャッシュフローが76億円の支出、財務活動によるキャッシュフローが487億円の支出となった。
事業面では、2025年9月1日付で株式会社エンチョーを株式交換により完全子会社化した。これにより、仕入コスト低減や商品調達力強化によるシナジー効果の最大化を目指す。通期業績予想は据え置きで、中間期時点での純利益進捗率は62%と順調な推移を見せている。
配当については、2026年2月期の年間配当予想を1株当たり46円(中間23円、期末23円)とし、前年同期の45円から1円増配する見込みである。
全体として、売上・営業利益は微減となったものの、利益面では増益を確保し、エンチョーの子会社化による事業基盤強化や、増配予想など、投資家にとってはポジティブな要素も含まれる決算発表であった。
当中間連結会計期間のわが国経済は、雇用・所得環境の改善により緩やかな景気の回復が見られる一方、国際情勢の不安定さやエネルギー・原材料価格の高止まりなど、先行きの不透明な状況が続いた。小売業界においても、物価上昇による生活防衛意識の高まりや競争激化により、厳しい経営環境が継続した。DCMホールディングスは、第3次中期経営計画に基づき、店舗の「再」活性化と事業領域の拡大を推進した。販売面では、南海トラフ地震臨時情報による防災用品需要の反動があったものの、猛暑による熱中症対策商材が好調に推移した。DCMブランド商品の売上構成比率も向上し、新規出店7店舗、退店5店舗を実施し、店舗数は845店舗となった。
指標 | 2026年2月期2Q(累計) | 2025年2月期2Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 2,803億円 | 2,878億円 | △2.6% |
売上総利益 | 955億円 | 969億円 | △1.4% |
営業利益 | 208億円 | 211億円 | △1.1% |
経常利益 | 199億円 | 196億円 | 1.7% |
純利益 | 121億円 | 117億円 | 3.6% |
ホームセンター事業は全社売上高の87.7%を占める。当中間期は、梅雨明け以降の猛暑の影響で、日除けや散水用品が好調に推移した園芸部門は売上高467億円(前年同期比96.4%)となった。ホームインプルーブメント部門は、昨年の南海トラフ地震臨時情報発表と台風の影響による防災需要の反動があったものの、空調服などの猛暑対策商材が好調に推移し、DIY関連商品も引き続き好調で、売上高539億円(同98.1%)となった。ホームレジャー・ペット部門は、犬猫フードが低調だったが、DCMブランドの電動自転車が好調に推移し、売上高396億円(同95.8%)となった。ハウスキーピング部門は、洗濯洗剤の販売強化や、非常食などの防災用品の反動があったものの米が好調で、売上高415億円(同97.8%)となった。ホームファニシング部門は、水筒や使い捨て食器などの行楽用品が好調だったが、インテリア用品や家具収納用品は買い控えの影響を受け低調で、売上高293億円(同95.5%)となった。ホームエレクトロニクス部門は、カセットコンロやボンベ、電池など防災需要の反動があったが、猛暑の影響でエアコンやLED蛍光管が好調に推移し、売上高228億円(同91.5%)となった。
エクスプライス事業は全社売上高の12.2%を占める。当中間期におけるエクスプライス事業の売上高は337億円(前年同期比105.0%)と増収を達成した。DCMホールディングスグループは、エクスプライス株式会社のPB商品(MAXZEN)についても重点販売に取り組んでおり、グループ全体の売上向上に貢献している。
DCMホールディングス株式会社は、2025年5月9日開催の取締役会で締結した株式交換契約に基づき、株式会社エンチョーを2025年9月1日付で株式交換により完全子会社化した。本株式交換の目的は、スケールメリットを活かした仕入コスト低減と商品調達力強化によるエンチョーの収益性改善である。DCMホールディングスは、エンチョーとの経営統合委員会を設置し、商品・販促、システム、店舗運営、総務、人事、財務等の部門ごとの分科会方式にて、経営統合に係る課題を解決しつつ、シナジー効果の最大化に向けて取り組んでいく方針である。この完全子会社化による2026年2月期連結業績への影響は軽微なものとなる見込みである。
2026年2月期の全社業績予想は、2025年4月11日の決算短信発表時に公表された内容から変更はなく、据え置きである。中間期時点での進捗率は、営業収益が51%、営業利益が60%、経常利益が59%、純利益が62%となっている。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
---|---|---|
売上高 | 5,536億円 | 51% |
営業利益 | 350億円 | 60% |
経常利益 | 336億円 | 59% |
純利益 | 196億円 | 62% |
当中間連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ61億円減少し6,418億円となった。これは主に季節的要因による売掛金の増加や、長期借入の返済による現金及び預金の減少が影響した。負債合計は、前連結会計年度末に比べ248億円減少し3,589億円となった。これは金融機関の休日による買掛金の増加や、長期借入の返済による借入金の減少が主な要因である。純資産合計は、親会社株主に帰属する中間純利益の計上により186億円増加し2,829億円となり、自己資本比率は44.1%に改善した。
キャッシュフローの状況では、営業活動によるキャッシュフローは、税金等調整前中間純利益の計上や仕入債務の増加などにより、329億円の収入となった。投資活動によるキャッシュフローは、新規出店や改装などの有形固定資産の取得による支出やソフトウェアなどの無形固定資産の取得による支出が主な要因で、76億円の支出となった。財務活動によるキャッシュフローは、長期借入金の返済による支出や配当金の支払いにより、487億円の支出となった。これらの結果、当中間連結会計期間末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ233億円減少し961億円となった。
配当
DCMホールディングス株式会社の今後の見通しは、現在の経済環境と事業戦略を総合すると、投資家にとって慎重ながらも期待できる側面がある。国内経済は緩やかな回復基調にあるものの、国際情勢の不安定さやエネルギー・原材料価格の高止まりは依然として不透明要因であり、小売業界は物価上昇による生活防衛意識の高まりと競争激化に直面している。このような厳しい環境下で、DCMは第3次中期経営計画「新世代ホームセンター創造への挑戦~店舗の“再”活性化+事業領域の拡大〜」を着実に推進している。
今回の第2四半期決算では、営業収益と営業利益は微減となったものの、経常利益と純利益は増益を確保した。これは、コストコントロールや営業外収益の改善が寄与した結果であり、経営の効率化が進んでいることを示唆する。特に、通期業績予想が据え置かれている中で、中間期時点での純利益進捗率が62%と順調な推移を見せている点は、通期目標達成への期待を高めるポジティブな要素である。
また、株式会社エンチョーの完全子会社化は、DCMグループの事業基盤強化に向けた重要な一歩である。仕入コスト低減や商品調達力強化によるシナジー効果の最大化は、今後の収益性向上に大きく貢献する可能性がある。現時点では連結業績への影響は軽微とされているが、中長期的にはグループ全体の競争力強化に繋がる戦略的な動きと評価できる。
株主還元についても、年間配当予想を前年比1円増の46円とすることで、株主への還元意欲を示している。これは、厳しい事業環境下でも安定的な利益創出と株主還元を両立しようとする企業の姿勢を反映しており、投資家にとっては安心材料となる。
しかし、猛暑による熱中症対策商材の好調や、防災用品需要の反動といった一時的な要因が業績に影響を与えている点には注意が必要である。今後は、これらの特殊要因に頼らない持続的な成長戦略の実行が重要となる。DCMブランド商品の強化や新規出店・退店の最適化、そしてエンチョーとの経営統合によるシナジー効果の具体的な進捗が、今後の企業価値向上を左右する鍵となるだろう。
総じて、今回の決算発表は、短期的な売上・営業利益の課題を抱えつつも、利益面での堅調な推移と、M&Aによる事業基盤強化、そして株主還元への積極的な姿勢を示しており、投資家にとっては中長期的な成長への期待を持たせるポジティブな内容であったと評価できる。
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