キユーピー株式会社の2025年11月期第3四半期連結累計期間の決算は、売上高が前年同期比6.2%増の3,834.24億円と増収を達成した。これは海外事業の継続的な成長に加え、国内でのタマゴ商品の販売回復やカット野菜の需要拡大、単価上昇が寄与した。しかし、営業利益は主原料高騰の長期化や物流コスト上昇の影響を受け、前年同期比△9.2%減の270.62億円、経常利益も同△9.2%減の292.18億円と減益となった。一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益は、工場跡地売却による特別利益の増加により、前年同期比31.9%増の260.55億円と大幅な増益を記録した。
通期の業績予想は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも修正が行われ、売上高は5,120.00億円、営業利益は345.00億円、経常利益は366.00億円、純利益は292.00億円を見込む。第3四半期時点での進捗率は、売上高が74.9%、営業利益が78.4%、経常利益が79.8%、純利益が89.2%となっている。純利益の進捗率が高いのは、特別利益の計上が大きく影響している。
株主還元については、2025年11月期の年間配当金予想を1株当たり64.00円(うち記念配当10円を含む)としている。また、2025年7月3日開催の取締役会決議に基づき、自己株式1,927,000株、77.28億円の取得を実施した。
全体として、売上は堅調に推移したものの、コスト増により本業の収益性が圧迫された状況がうかがえる。しかし、特別利益の計上により最終的な純利益は大きく改善しており、通期純利益予想に対する進捗も良好である。
2025年11月期第3四半期連結累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比6.2%増の3,834.24億円と増収を達成した。これは海外事業の堅調な成長に加え、国内におけるタマゴ商品の販売回復やカット野菜の需要拡大、単価上昇が寄与した結果である。しかし、主原料高騰の長期化や物流コスト上昇の影響が大きく、営業利益は270.62億円(前年同期比△9.2%減)、経常利益は292.18億円(前年同期比△9.2%減)と減益となった。一方で、工場跡地売却による特別利益の計上により、親会社株主に帰属する四半期純利益は260.55億円(前年同期比31.9%増)と大幅な増益を記録した。
指標 | 2025年11月期3Q(累計) | 2024年11月期3Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 3,834.24億円 | 3,609.11億円 | 6.2% |
営業利益 | 270.62億円 | 298.15億円 | △9.2% |
経常利益 | 292.18億円 | 321.82億円 | △9.2% |
純利益 | 260.55億円 | 197.56億円 | 31.9% |
市販用事業が占める全社売上割合は37.6%である。 当第3四半期連結累計期間において、市販用事業は売上高が1,439.76億円と前年同期比2.4%の増収となった。これは、調味料・調理食品の販売数量増加およびカット野菜の単価上昇が寄与したためである。しかし、鶏卵や野菜相場の高騰による原材料高の影響を受け、営業利益は97.77億円と前年同期比△22.6%の減益となった。国内市場では、多様化するニーズに対応した高付加価値商品の展開を強化し、価格改定の浸透やロボット導入による生産自動化を進めることで、収益性・生産性の向上に取り組んでいる。消費者の節約志向が高まる厳しい市場環境の中で、増収を維持しつつも、原材料高騰が利益を圧迫する状況が続いている。
業務用事業が占める全社売上割合は35.7%である。 当第3四半期連結累計期間において、業務用事業は売上高が1,369.95億円と前年同期比8.9%の増収となった。これは、価格改定による単価上昇とタマゴ商品の販売数量増加が主な要因である。しかし、調味料やタマゴの価格改定効果があったものの、鶏卵相場高騰に伴う原材料高の影響を受け、営業利益は82.09億円と前年同期比△17.2%の減益となった。国内市場では、価格改定の浸透と生産自動化による効率化を進め、収益性の改善を図っているが、原材料コストの上昇が引き続き課題となっている。
海外事業が占める全社売上割合は19.2%である。 当第3四半期連結累計期間において、海外事業は売上高が735.67億円と前年同期比8.4%の増収、営業利益は110.70億円と前年同期比13.5%の増益となった。アジアパシフィックおよび米州地域での販売が堅調に推移し、増収に貢献した。特にアジアパシフィックを中心とした売上増や中国での生販効率化の取り組みにより、増益を達成した。海外では「現地生産・現地販売」を基本方針とし、新工場の稼働による供給能力強化と生産効率化を進めている。また、KEWPIEブランドの認知度向上や現地料理と融合したメニュー提案型プロモーションを展開し、需要拡大に注力している。
フルーツ ソリューション事業が占める全社売上割合は3.5%である。 当第3四半期連結累計期間において、フルーツ ソリューション事業は売上高が133.93億円と前年同期比1.5%の増収、営業利益は6.33億円と前年同期比130.2%の増益となった。家庭用ジャム・スプレッドと産業用フルーツ加工品が好調に推移し、増収増益を達成した。
ファインケミカル事業が占める全社売上割合は2.3%である。 当第3四半期連結累計期間において、ファインケミカル事業は売上高が89.73億円と前年同期比4.4%の増収、営業利益は4.12億円と前年同期比19.8%の増益となった。医薬原料の販売数量は減少したものの、通信販売が好調に推移し、増収増益を達成した。
共通事業が占める全社売上割合は1.7%である。 当第3四半期連結累計期間において、共通事業は売上高が65.17億円と前年同期比33.3%の増収、営業利益は11.16億円と前年同期比14.9%の増益となった。外部向け機械販売および原料販売の増加が寄与した。
キユーピー株式会社は、2025年7月3日開催の取締役会決議に基づき、自己株式の取得を実施した。当第3四半期連結累計期間において、自己株式1,927,000株を取得し、取得額は77.28億円であった。この結果、期末の自己株式は135.56億円に増加した。これは株主還元策の一環として行われたものであり、資本効率の向上と株主価値の向上に資する動向である。
2025年11月期の連結業績予想は、最近の業績動向を勘案し、2025年1月9日に公表された予想から修正が行われた。売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも修正されている。第3四半期連結累計期間の実績に対する通期予想の進捗率は、売上高が74.9%、営業利益が78.4%、経常利益が79.8%、純利益が89.2%となっている。純利益の進捗率が他の利益項目よりも高いのは、工場跡地売却による特別利益の計上が大きく影響している。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
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売上高 | 5,120.00億円 | 74.9% |
営業利益 | 345.00億円 | 78.4% |
経常利益 | 366.00億円 | 79.8% |
純利益 | 292.00億円 | 89.2% |
当第3四半期連結会計期間末の総資産は4,689.18億円となり、前連結会計年度末に比べ65.46億円増加した。これは主に有価証券、建物及び構築物、投資その他の資産のその他に含まれる長期定期預金の増加によるものであり、一方で現金及び預金は減少した。負債は1,300.64億円と前連結会計年度末に比べ6.70億円減少した。これは流動負債のその他に含まれる未払金、社債の減少、賞与引当金、流動負債のその他に含まれる1年内償還社債の増加が主な要因である。純資産は3,388.54億円と前連結会計年度末に比べ72.16億円増加した。これは主に利益剰余金の増加と自己株式の取得によるものである。なお、当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。
配当
自己株式取得
キユーピー株式会社の今後の見通しは、増収基調を維持しつつも、収益性の改善が課題となる状況が続く見込みである。当第3四半期連結累計期間では、海外事業の堅調な成長と国内でのタマゴ商品販売回復、カット野菜需要拡大により売上高は増加した。しかし、主原料高騰の長期化や物流コスト上昇が営業利益と経常利益を圧迫し、減益となった。このコスト増のトレンドが今後も継続する可能性があり、本業の収益性改善に向けた取り組みが重要となる。
通期の業績予想は修正されたものの、売上高、営業利益、経常利益は前年同期比で増収減益の見込みである。特に営業利益と経常利益の進捗率は第3四半期時点で約8割に達しているが、これはコスト増の影響を織り込んだ上での慎重な予想と解釈できる。一方で、純利益は工場跡地売却による特別利益の計上により、通期予想に対する進捗率が89.2%と非常に高く、最終的な利益は大きく押し上げられる見込みである。この特別利益は一時的な要因であるため、来期以降の純利益には同様の押し上げ効果は期待できない点に注意が必要である。
投資家目線で見ると、今回の決算発表は複雑な要素を含んでいる。売上高の成長はポジティブな要素であり、特に海外事業の拡大は中長期的な成長ドライバーとして期待できる。国内市場においても、高付加価値商品の展開や生産効率化への投資は、将来的な競争力強化に繋がる。しかし、原材料価格の高止まりや物流コストの上昇といった外部環境の厳しさが本業の利益を圧迫している点はネガティブな要素である。特別利益による純利益の大幅な増加は短期的な株価にはポジティブに作用する可能性があるが、本業の収益性改善が伴わない限り、持続的な企業価値向上には繋がりにくい。
今後の焦点は、コストコントロールと価格転嫁の進捗、そして中長期的な成長戦略の実行状況に移る。特に、人的資本やサステナビリティ、新規領域への投資がどのように具体的な成果に結びつくかが注目される。これらの投資が将来の収益源となり、本業の利益率改善に貢献できるかが、投資家がキユーピーの企業価値を評価する上での重要なポイントとなるだろう。現状では、一時的な特別利益に支えられた純利益の好調と、本業の利益圧迫という二面性を持つため、投資家にとっては慎重な評価が求められる決算である。
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