株式会社アンドエスティHDの2026年2月期第2四半期(中間期)連結決算は、売上高が前年同期比3.6%増の1,493.45億円と増収を達成したものの、営業利益は同19.4%減の79.73億円、経常利益は同24.3%減の77.90億円、親会社株主に帰属する中間純利益は同13.7%減の59.87億円と、利益面では減益となった。これは、雇用・所得環境の底堅さやインバウンド需要による増収効果があった一方で、円安や原材料・エネルギー価格の高騰、人件費の増加、プロモーション強化、旗艦店出店に伴う販管費の増加が利益を圧迫したためである。特にアパレル・雑貨関連事業の売上総利益率が悪化したことが響いた。
株主還元については、2026年2月期の年間配当予想は前年と同額の90円(中間45円、期末45円)を据え置いた。中間配当は前年同期の35円から45円に増額しており、株主還元への意欲は維持している。また、当中間期において自己株式取得に6.35億円を支出した。
全体として、売上は堅調に推移したものの、コスト増が利益を圧迫し、投資家にとっては利益面でのネガティブな要素が目立つ決算となった。しかし、中期経営計画「Play fashion! プラットフォーマー」への進化に向けた戦略的な投資や、持株会社体制への移行、固定資産譲渡による特別利益計上など、将来に向けた構造改革の動きも見られる。
当中間連結会計期間における全社業績は、売上高が前年同期比3.6%増の1,493.45億円と堅調に推移した。しかし、営業利益は同19.4%減の79.73億円、経常利益は同24.3%減の77.90億円、親会社株主に帰属する中間純利益は同13.7%減の59.87億円と、利益面では減益となった。これは、円安や原材料価格の高騰、人件費の増加、プロモーション費用や店舗家賃の増加など、販管費の増加が主な要因である。売上総利益率も前年同期比で0.5ポイント悪化し、収益性を圧迫した。
指標 | 2026年2月期2Q(累計) | 2025年2月期2Q(累計) | 前年同期比 |
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売上高 | 1,493.45億円 | 1,442.03億円 | 3.6% |
営業利益 | 79.73億円 | 98.95億円 | △19.4% |
経常利益 | 77.90億円 | 102.97億円 | △24.3% |
純利益 | 59.87億円 | 69.39億円 | △13.7% |
アパレル・雑貨関連事業は全社売上高の約94.7%を占める。当中間連結会計期間の売上高は1,414.25億円(前年同期比3.0%増)、セグメント利益は77.76億円(前年同期比26.8%減)となった。国内売上高は4月の低気温による夏物衣料の動き出しの遅れがあったものの、カジュアルファッション需要の底堅さや、マルチブランド・マルチカンパニー戦略による多様な商品展開、TVCM、ポイント還元などのプロモーション施策が奏功し、前年同期比2.9%の増収を達成した。特にトゥデイズスペシャルとジョージズの2ブランドがM&Aによりグループに加わった純増分も寄与している。海外売上高は、中国大陸でのECクロスチャネル戦略の好調、香港・台湾でのマルチブランド戦略による新規出店とECの好調により増収となった。一方で、米国事業からの撤退に伴い、Velvet, LLCの出資持分譲渡が完了した。収益面では、円安の影響が残る中、在庫コントロールと値引き販売の抑制に努めたものの、春夏物衣料の正価販売が想定を下回り、在庫消化を優先した結果、売上総利益率は前年同期から悪化した。店舗展開においては、56店舗の出店(うち海外17店舗)と19店舗の退店(うち海外4店舗)があり、中間期末の店舗数は1,594店舗(うち海外152店舗)となった。プラットフォーム戦略では、自社EC「and ST」とリアル店舗連動プロモーション、人気キャラクターやスタッフとのコラボ商品展開、他社ブランドの出店拡大により、and ST会員数は前期末比100万人増の2,070万人に伸長し、アクティブ会員数は760万人となった。また、外部企業出店によるモール型ビジネスにおける取り扱いブランド数・流通総額も伸長している。
その他(飲食事業)は全社売上高の約5.3%を占める。当中間連結会計期間の売上高は79.58億円(前年同期比14.6%増)、セグメント利益は0.13億円(前年同期はセグメント損失3.28億円)となった。外食産業における原材料価格や光熱費の上昇、人手不足といった厳しい経営環境が続いたが、既存店の堅調な推移、決算期変更の影響、海外を含む新店の純増により増収を達成した。商品価格の見直しや原価低減に取り組んだものの、原価高騰を吸収しきれず、売上総利益率は低下した。店舗展開においては、2店舗の出店と3店舗の退店があり、中間期末の店舗数は75店舗となった。
当中間連結会計期間において、株式会社アンドエスティHDは複数の重要な事業再編とM&A関連の動きを見せた。まず、2025年3月31日付でカリマーインターナショナル株式会社を連結子会社化した。これにより、アウトドア・ライフスタイル分野での事業強化が図られる。次に、2025年7月24日開催の取締役会において、米国事業からの撤退を決定し、特定子会社(孫会社)であるVelvet, LLCの出資持分全部をPIVOT GROWS LLCに譲渡することを決議した。これは、グローバルブランド戦略、マーケティング、ライセンス管理を専門とするPIVOT社への譲渡であり、米国事業の再編と効率化を進める方針を示している。さらに、2025年9月1日付で株式会社アダストリアから株式会社アンドエスティHDへ商号変更し、持株会社体制へ移行した。これにより、グループ各事業会社が「and ST」を中心につながり、それぞれのミッションと役割を明確化し、自律的な成長戦略を策定・実行するマルチカンパニー経営を実現する。この体制移行は、カテゴリーやサービスの拡充、海外展開の加速を目指すM&A戦略を推進するための基盤強化となる。また、連結子会社である株式会社アダストリア・ロジスティクスが保有する固定資産(福岡物流センター)の譲渡を決議し、これにより約34億円の譲渡益を計上する見込みである。これは物流拠点の集約による設備投資の効率化と経営資源の有効活用を目的としている。
進行期の全社業績予想は、2025年4月4日に公表された内容から修正はなく、据え置きとなった。当中間期までの実績は、売上高、各利益項目ともに通期予想に対する進捗率が50%を下回る水準で推移している。売上高は進捗率が約49.0%とほぼ計画通りだが、営業利益は約42.0%、経常利益は約41.0%、純利益は約48.3%と、利益項目は売上高の進捗率に比べてやや低い。これは、当中間期におけるコスト増による利益率の悪化が影響していると考えられる。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
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売上高 | 3,050.00億円 | 49.0% |
営業利益 | 190.00億円 | 42.0% |
経常利益 | 190.00億円 | 41.0% |
純利益 | 124.00億円 | 48.3% |
当中間連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて63.01億円増加し1,394.09億円となった。これは主に、現金及び預金が12.92億円、受取手形及び売掛金が27.42億円、店舗内装設備(純額)が12.83億円、無形固定資産のその他が10.93億円それぞれ増加したことによる。負債は、前連結会計年度末に比べて30.52億円増加し589.60億円となった。これは主に、未払金が14.29億円、固定負債のその他が11.32億円それぞれ減少した一方で、支払手形及び買掛金が19.32億円、短期借入金が45億円それぞれ増加したことによる。純資産は、前連結会計年度末に比べて32.48億円増加し804.48億円となった。これは主に、自己株式が4.70億円増加(純資産は減少)した一方で、利益剰余金が34.14億円増加したことによる。
キャッシュフローの状況を見ると、現金及び現金同等物の期末残高は223.68億円となり、前連結会計年度末に比べて12.87億円増加した。営業活動によるキャッシュフローは100.19億円の収入となり、前年同期の116.53億円の収入から減少した。これは主に法人税等の支払額が26.97億円あった一方で、税金等調整前中間純利益が76.48億円、減価償却費が59.97億円あったことによる。投資活動によるキャッシュフローは88.89億円の支出となり、前年同期の114.99億円の支出から減少した。これは主に、有形固定資産の取得による支出が60.79億円、無形固定資産の取得による支出が29.56億円あったことによる。財務活動によるキャッシュフローは3.87億円の収入となり、前年同期の35.27億円の支出から改善した。これは主に、配当金の支払額が25.72億円、自己株式の取得による支出が6.35億円、リース債務の返済による支出が8.93億円あった一方で、短期借入金の増加が45億円あったことによる。
配当
自己株式取得
株主優待
株式会社アンドエスティHDの今後の見通しは、中期経営計画「Play fashion! プラットフォーマー」への進化と、それに伴う構造改革の進捗が鍵を握る。今回の決算では、売上高は堅調に推移したものの、利益面ではコスト増が響き減益となった。これは、円安や原材料価格の高騰、人件費増加といった外部環境要因に加え、プロモーション強化や旗艦店出店といった戦略的投資が販管費を押し上げた結果である。投資家目線では、短期的な利益の圧迫はネガティブな要素と捉えられるが、これらの投資は将来の成長に向けた基盤強化と位置づけられる。
特に、2025年9月1日付での持株会社体制への移行は、グループ各事業会社の自律的な成長戦略策定・実行を促し、マルチカンパニー経営を加速させる重要な一歩である。これにより、カテゴリーやサービスの拡充、海外展開の加速を目指すM&A戦略の推進が期待される。米国事業からの撤退とVelvet, LLCの出資持分譲渡は、不採算事業の整理と経営資源の最適配分を進める動きであり、短期的な業績への影響は限定的であるものの、長期的な収益性改善に寄与する可能性がある。
また、連結子会社が保有する固定資産の譲渡により、約34億円の特別利益を計上する見込みであり、これは今後の財務状況にポジティブな影響を与える。しかし、連結子会社ZETTON, INC.における偶発債務(レストラン活性化基金の受給資格調査)は、今後の進捗次第で業績に影響を与える可能性があり、不確実性要因として注視が必要である。
中期経営計画における重点分野戦略、特に自社EC「and ST」を中心としたプラットフォーム戦略の推進は、会員数や流通総額の伸長に貢献しており、デジタル領域での競争力強化はポジティブな要素である。グローバル戦略では東南アジアへの投資加速とECプラットフォームによるOMO戦略展開、グレーターチャイナでのマルチブランド戦略強化が掲げられており、海外市場での成長機会を捉える姿勢は評価できる。ブランドリテール戦略におけるマルチカンパニー化の推進も、多様な商品展開と顧客選択肢の拡大に繋がる。
通期業績予想は据え置きだが、中間期時点での利益進捗率は売上高に比べて低い水準にあるため、下半期での利益改善が課題となる。コストコントロールと収益性改善策の実行が、通期目標達成には不可欠である。
総じて、今回の決算発表は、短期的な利益減益というネガティブな側面があったものの、持株会社体制への移行、不採算事業の整理、戦略的投資の継続といった将来に向けた構造改革と成長戦略の推進が明確に示された。投資家としては、これらの戦略が着実に実行され、中長期的な企業価値向上に繋がるかどうかに注目する必要がある。特に、プラットフォーム事業の成長と海外展開の加速が、今後の業績を牽引する重要なドライバーとなるだろう。
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