アスクル株式会社の2026年5月期第1四半期連結累計期間の決算は、売上高が1,223.24億円(前年同期比3.3%増)と増収を達成した。しかし、営業利益は10.53億円(同59.1%減)、経常利益は9.38億円(同62.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3.44億円(同77.7%減)と大幅な減益となった。これは主に、2025年6月に稼働した「ASKUL関東DC」に係る減価償却費等の固定費増加や、基幹システムリプレイスに伴う費用発生といった先行投資が利益を圧迫したためである。
事業セグメント別では、eコマース事業が売上高1,202.49億円(同3.4%増)と堅調に推移したものの、営業利益は10.64億円(同58.5%減)と減益。ロジスティクス事業は売上高19.12億円(同2.0%増)で増収となったが、営業損失は0.33億円(前年同期は0.25億円の営業損失)と損失が拡大した。その他事業は売上高5.40億円(同23.2%減)、営業利益0.18億円(同82.5%減)と減収減益となった。
財務状態では、総資産が2,331.28億円と増加したが、純資産は734.86億円と減少し、自己資本比率は30.0%に低下した。これは自己株式取得や配当金支払いによる影響が大きい。
株主還元については、2025年3月18日開催の取締役会決議に基づき、当第1四半期連結累計期間において自己株式3,992,600株(62.19億円)を取得した。また、2026年5月期の年間配当金は中間・期末それぞれ19円00銭、合計38円00銭を予定しており、直近の予想からの修正はない。
全体として、短期的な業績は先行投資による利益圧迫が顕著であり、投資家にとってはネガティブな印象を与える可能性がある。しかし、これらの投資は中長期的な成長に向けたものであり、2027年5月期のV字回復を目指すという会社の姿勢は評価できる。
当第1四半期連結累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比3.3%増の1,223.24億円と増収を達成した。しかし、物流センターの再編に伴う固定費増加や基幹システムリプレイス費用などの先行投資が影響し、営業利益は10.53億円(前年同期比59.1%減)、経常利益は9.38億円(前年同期比62.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3.44億円(前年同期比77.7%減)と大幅な減益となった。売上総利益率は改善したものの、販管費比率が増加したことが利益を圧迫した主要因である。
指標 | 2026年5月期1Q(累計) | 2025年5月期1Q(累計) | 前年同期比 |
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売上高 | 1,223.24億円 | 1,183.84億円 | 3.3% |
売上総利益 | 303.12億円 | 279.77億円 | 8.3% |
営業利益 | 10.53億円 | 25.74億円 | △59.1% |
経常利益 | 9.38億円 | 25.10億円 | △62.6% |
純利益 | 3.44億円 | 15.44億円 | △77.7% |
eコマース事業は全社売上高の約98.3%を占める。当第1四半期連結累計期間の売上高は1,202.49億円(前年同期比3.4%増)と堅調に伸長したが、営業利益は10.64億円(前年同期比58.5%減)と大幅な減益となった。売上総利益率は為替ポジションの改善等により1.1ポイント改善したものの、2025年6月に稼働した「ASKUL関東DC」に係る減価償却費等の固定費増加影響により、販管費比率が2.5ポイント増加し、利益を圧迫した。
ASKUL事業では、従来型オフィス用品(オフィス家具、インクやトナー、文具など)に対する需要は伸び悩んだものの、生活用品やMRO(Maintenance, Repair and Operations)は堅調に推移し、前年同期比3.0%の伸長を記録した。お客様数については、法人向けの販促効果が奏功し、中堅大企業は伸長し、中小企業所も改善トレンドが継続している。一方で、法人以外のお客様数は減少傾向にある。中小企業所向け売上高は需要回復の遅れにより購買金額が伸び悩んだが、中堅大企業向け売上高は堅調に推移した。
LOHACO事業では、LINEヤフー株式会社と連携した販促施策の効果や備蓄米の販売が寄与し、前年同期比5.4%の伸長を達成した。グループ会社である株式会社アルファパーチェスの売上高も堅調に推移し、前年同期比4.5%の伸長となった。
ロジスティクス事業は全社売上高の約1.6%を占める。当第1四半期連結累計期間の売上高は19.12億円(前年同期比2.0%増)と増収となったが、営業損失は0.33億円(前年同期は0.25億円の営業損失)と損失が拡大した。これは、当社グループ外の物流業務受託の売上高は増収となったものの、業務外注費を始めとした費用増加を吸収するまでには至らず、減益となったためである。
その他事業は全社売上高の約0.4%を占める。当第1四半期連結累計期間の売上高は5.40億円(前年同期比23.2%減)、営業利益は0.18億円(前年同期比82.5%減)と減収減益となった。嬬恋銘水株式会社での飲料水の販売は猛暑の影響もあり堅調に推移したが、前年同期に倉庫移転に伴う在庫商品の一括販売による売上高増加影響があったことの反動により、減収減益となった。
アスクル株式会社は、2025年7月に公表した中期経営計画(2026年5月期~2029年5月期)の目標達成に向け、リテール事業の再成長と新たな価値提供領域の確立を掲げ、施策を推進している。この戦略の一環として、2025年6月には「ASKUL関東DC」が稼働を開始した。この稼働に伴い、減価償却費等の固定費増加や立ち上げに係る一時コストが発生しており、当第1四半期連結累計期間の営業利益に影響を与えている。また、基幹システムのリプレイスに伴う費用も発生しており、これも販管費の増加要因となっている。これらの投資は、将来の物流効率化と事業基盤強化を目指すものであり、中長期的な企業価値向上に資すると想定される。
2026年5月期の通期連結業績予想は、直近に公表された予想から修正はなく据え置きである。当第1四半期連結累計期間の実績は、売上高は通期予想に対して順調な進捗を見せる一方で、利益面では先行投資の影響により進捗率が低い水準にとどまっている。
| 指標 | 通期予想 | 進捗率(1Q累計) |
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