日本プロセス株式会社の2026年5月期第1四半期連結決算は、売上高、各利益項目ともに前年同期比で大幅な増益を達成し、総じてポジティブな内容だった。売上高は27.5億円(前年同期比15.2%増)、営業利益は3.4億円(同50.9%増)、経常利益は3.5億円(同10.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は2.6億円(同15.6%増)となった。売上高の増加に加え、費用が当初計画通りに推移したことが利益を押し上げた。特に営業利益の伸びが顕著であり、収益性の改善がうかがえる。
また、決算発表日と同日にSCSK株式会社との資本業務提携を発表した。これは、自動車システム分野を最重点領域とする中期経営計画の達成に向けた重要な戦略的提携であり、開発リソースの強化と顧客基盤の拡大を通じて、競争優位性の確立を目指すものだ。株主還元については、安定的な配当の継続と連結配当性向66%を目標とし、今中期経営計画期間(2025年5月期から2029年5月期)にわたり、毎期1株当たり8円の特別配当を実施する累進配当政策を継続する方針を示している。
当第1四半期連結累計期間における日本経済は、雇用・所得環境の改善により緩やかな回復基調が続いたものの、アメリカの通商政策や物価上昇の継続が景気下押しリスクとなった。情報サービス産業では、AI、IoT、クラウドサービスなどの先端技術導入が進み、IT投資ニーズは好調に推移している。このような環境下、日本プロセスは中期経営計画に基づき、T-SES(トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス)のレベル向上と人材育成に注力し、新規設計案件や大規模案件の受注拡大を目指した。特に社会インフラのDXに注力し、保守性・拡張性・サイバーセキュリティを備えた先進的なシステム開発に貢献している。この結果、売上高は前年同期比15.2%増の27.5億円、営業利益は同50.9%増の3.4億円と大幅な増益を達成した。
指標 | 2026年5月期1Q(累計) | 2025年5月期1Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 27.5億円 | 23.8億円 | 15.2% |
営業利益 | 3.4億円 | 2.2億円 | 50.9% |
経常利益 | 3.5億円 | 3.2億円 | 10.1% |
純利益 | 2.6億円 | 2.2億円 | 15.6% |
制御システム事業の全社売上高に占める割合は14.4%(27.5億円中3.97億円)である。 当四半期単体では、電力グリッド関連の開発規模拡大が順調に推移し、東京圏輸送管理システムも前期から開始した大型開発案件により売上・利益ともに好調だった。一方で、在来線および新幹線の運行管理システムは開発案件の切れ目により減少した。この結果、売上高は3.97億円(前年同期比9.8%増)、セグメント利益は0.94億円(前年同期比8.2%増)となった。電力インフラや交通インフラといった社会基盤を支えるシステム開発において、安定的な需要と大型案件の獲得が業績を牽引している。特に、東京圏輸送管理システムのような大規模案件の継続的な受注は、セグメント全体の収益性を高める要因となっている。
自動車システム事業の全社売上高に占める割合は23.7%(27.5億円中6.51億円)である。 当四半期単体では、自動運転/先進運転支援関連が複数の車種一括受注により新規案件を獲得し、担当範囲を拡大するなど順調に推移した。車載情報関連も新たな案件を獲得し好調だった。しかし、電動化関連は開発規模縮小に伴い減少した。この結果、売上高は6.51億円(前年同期比10.4%増)、セグメント利益は1.68億円(前年同期比17.1%増)となった。自動車業界におけるソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)の進展に伴い、車載システム開発の高度化と複雑化が進む中、同社は自動運転や先進運転支援システムといった最先端技術分野での強みを発揮している。新規案件の獲得と担当範囲の拡大は、今後の成長を期待させる。
特定情報システム事業の全社売上高に占める割合は15.6%(27.5億円中4.29億円)である。 当四半期単体では、危機管理関連の開発量増加により体制を拡大し好調に推移した。航空宇宙関連も新たな案件獲得により堅調だった。しかし、衛星画像関連は一部開発が終了したことで売上・利益ともに減少した。この結果、売上高は4.29億円(前年同期比9.8%増)、セグメント利益は1.07億円(前年同期比49.3%増)となった。危機管理分野における開発量の増加は、社会の安全・安心への貢献という同社のビジョンと合致しており、今後も安定的な需要が見込まれる。航空宇宙分野での新規案件獲得も堅調な成長を支える一方で、衛星画像関連の動向には注視が必要だ。
組込システム事業の全社売上高に占める割合は15.7%(27.5億円中4.32億円)である。 当四半期単体では、ストレージデバイス開発が半導体市場の回復を背景に体制を拡大し好調に推移した。IoT建設機械関連も開発量の増加により体制を拡大し好調だった。この結果、売上高は4.32億円(前年同期比32.7%増)、セグメント利益は0.89億円(前年同期比71.8%増)と大幅な増収増益となった。半導体市場の回復は、ストレージデバイス開発に直接的な恩恵をもたらし、同社の技術力が市場ニーズと合致していることを示している。IoT建設機械関連の好調も、建設業界におけるDX推進の動きと連動しており、今後の成長が期待される分野である。
産業・ICTソリューション事業の全社売上高に占める割合は30.5%(27.5億円中8.40億円)である。 当四半期単体では、クラウドシステムがガバメント向け開発の受注量増加により売上・利益ともに順調に推移した。システム構築も前期から開始した開発案件で体制を拡大し好調だった。しかし、IoTクラウドは一部開発が終了したことで売上・利益ともに減少した。社会インフラ関連の駅務機器開発はシンクライアント対応などで体制を拡大し順調に推移した。この結果、売上高は8.40億円(前年同期比16.8%増)、セグメント利益は1.61億円(前年同期比22.2%増)となった。ガバメント向けクラウド開発の受注増加は、政府・公共機関におけるDX推進の動きを捉えていることを示しており、同社の技術力が評価されている証拠だ。システム構築や社会インフラ関連の駅務機器開発も堅調であり、幅広い分野での貢献が期待される。
日本プロセス株式会社は、2025年9月30日開催の取締役会において、SCSK株式会社との資本業務提携契約を締結することを決議した。この提携は、両社の協力関係を推進し、関係強化を図ることを目的としている。
提携の目的と理由: 近年、自動車開発におけるソフトウェアの重要性が高まり、自動運転(AD)/先進運転支援システム(ADAS)を含む「ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)」の進展により、車載システム開発の高度化と複雑化が加速している。これに対応するため、開発体制の強化と新たな販売チャネルの獲得が競争優位性の確立に不可欠となっている。日本プロセスは、中期経営計画において自動車システム分野を最重点領域の一つとして成長戦略を推進しており、SCSKとの協業を通じて、同社のAD・ADAS分野における技術力がSCSKから高く評価されたことが今回の提携に繋がった。豊富な開発リソースと幅広い顧客基盤を持つSCSKとの連携により、自動車システムをはじめとする産業分野において、早期に強固な競争力を築くことを目指す。
資本提携の内容: SCSKは、日本プロセスの主要株主である大部仁氏および大部力氏が保有する株式をそれぞれ1,002,550株(発行済み株式総数の9.42%)ずつ、市場外での相対取引により取得する。これにより、SCSKは日本プロセスの持分法適用関連会社となる予定である。株式取得後のSCSKの議決権所有割合は20.71%(予定)となる。
業務提携の内容: 両社は、以下の分野で連携し、新たな競争優位性を創造する。
役員の派遣: SCSKは、議決権所有割合が15%以上である限り、1名を日本プロセスの取締役候補者として提案する権利を有する。
SCSKの株式引受権: 資本業務提携契約の有効期間中、SCSKの日本プロセスにおける議決権所有割合が20%を下回る場合、SCSKは、当該株式等の発行等に応じた数の株式等を引き受ける権利を有する。
SCSKによる日本プロセス株式の譲渡に関する協議等: 資本業務提携契約の有効期間中、SCSKが保有する日本プロセス株式を第三者に譲渡する場合、両社は事前に誠実に協議を行う。また、提携契約終了後、SCSKが保有する株式の全部または一部を日本プロセスが買い取ることを希望する場合、両社は誠実に協議を行う。
この資本業務提携は、日本プロセスが中期経営計画で掲げる成長戦略を加速させ、特に自動車システム分野における競争力を強化する上で極めて重要な一歩となる。SCSKの持つリソースと顧客基盤を活用することで、新規案件の獲得や開発体制の強化が期待され、企業価値向上に大きく貢献する可能性が高い。
進行期の全社業績予想は、2025年7月10日公表の2026年5月期の連結業績予想から修正はなく、据え置きとなった。第1四半期の実績は順調に推移しており、通期業績予想に対する進捗率は売上高で約23.9%、営業利益で約27.1%、経常利益で約27.6%、純利益で約27.7%となっている。これは、第1四半期としては堅調な進捗であり、通期目標達成に向けて順調な滑り出しと言える。
指標 | 通期予想 | 進捗率(1Q) |
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売上高 | 115.0億円 | 23.9% |
営業利益 | 12.6億円 | 27.1% |
経常利益 | 12.8億円 | 27.6% |
純利益 | 9.4億円 | 27.7% |
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べて16.8億円減少し、127.9億円となった。これは主に賞与支給および法人税等の支払いに伴う現金および預金の減少が要因である。負債も同様に16.0億円減少し、17.9億円となった。これは賞与支給および法人税等の支払いにより、賞与引当金および未払法人税等が減少したためである。純資産は、親会社株主に帰属する四半期純利益により利益剰余金が増加したものの、配当金の支払いにより84百万円減少し、110.0億円となった。この結果、自己資本比率は86.0%と高い水準を維持している。なお、当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていないが、減価償却費は0.1億円計上されている。
配当
日本プロセス株式会社の2026年5月期第1四半期決算は、売上高、各利益項目ともに前年同期比で大幅な増益を達成し、通期業績予想に対する進捗も堅調であることから、投資家にとっては非常にポジティブな内容と評価できる。特に営業利益の50.9%増という高い伸びは、同社の収益構造が改善していることを示唆しており、今後の利益成長への期待を高める。
同社は「ソフトウェアで社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」という中期経営ビジョンを掲げ、2027年5月期までに連結売上高120億円以上、連結営業利益12億円以上、ROE8.0%以上を目標としている。この目標達成に向け、「トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス(T-SES)」のレベル向上、人材育成、新規設計案件や大規模案件の受注拡大を基本方針としている。特に社会インフラのDXへの注力は、保守性、拡張性、サイバーセキュリティを備えた先進的なシステムへの転換を目指すものであり、IoTやクラウド、AIなどの最新技術を活用したシステム開発に注力する姿勢は、市場の成長トレンドと合致している。自動運転/先進運転支援関連、ガバメントクラウド、航空宇宙・危機管理関連といった注力分野での規模拡大は、今後の持続的な成長を牽引するだろう。
さらに、決算発表と同日にSCSK株式会社との資本業務提携を発表したことは、企業価値向上に向けた強力な戦略的推進力となる。SCSKの豊富な開発リソースと幅広い顧客基盤との連携は、特に自動車システム分野における同社の競争力を飛躍的に高める可能性を秘めている。SCSKが日本プロセスの株式を取得し、持分法適用関連会社となることで、両社の関係はより強固になり、モビリティ領域および産業・ICT領域での協業が具体的に進展する見込みだ。これにより、新規顧客の開拓、開発体制の強化、技術力の向上といった多岐にわたるシナジー効果が期待され、中期経営計画の達成を大きく後押しするだろう。
人的投資においても、4期連続の賃上げ実施や新卒・中途採用の強化、資格取得報奨金制度の拡充、オンライン学習プラットフォームの導入など、優秀な人材の確保と育成に積極的に取り組んでいる。これは、ソフトウェア開発企業にとって最も重要な資産である「人財」への投資であり、長期的な競争力強化に繋がる。
株主還元についても、安定配当と連結配当性向66%目標に加え、中期経営計画期間にわたる毎期1株当たり8円の特別配当を継続する累進配当政策は、株主への還元意識の高さを示しており、投資家からの評価を高める要因となる。
総合的に見て、日本プロセスは堅調な業績推移に加え、SCSKとの資本業務提携という強力な成長戦略を打ち出し、人財投資も怠らない。これらの要素は、同社が中期経営計画の目標達成に向けて順調に進捗しており、将来的な企業価値のさらなる向上に期待が持てることを示唆している。投資家にとっては、成長性と安定性を兼ね備えた魅力的な投資対象として、引き続き注目すべき企業である。
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