株式会社エイチ・アイ・エスは、2025年10月期第3四半期連結決算において、売上高は前年同期比12.2%増の2,663億24百万円、営業利益は同20.4%増の62億65百万円、経常利益は同16.1%増の60億46百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は、連結子会社であるHIS ULUSLARARASI TURIZM SEYAHAT ACENTASI LIMITED SIRKETIの事業縮小に伴う事業整理損失引当金繰入額等により、前年同期比49.8%減の17億82百万円となった。
旅行事業においては、欧州・中近東の予約集客強化や「SUPER SUMMER SALE! 2025」の展開が奏功し、好調に推移した。国内旅行事業では、大阪・関西万博関連のツアーや沖縄の体験型ツアーが牽引した。訪日旅行事業では、日本の四季や文化を体験できる商品開発やSNS活用により集客を強化した。法人事業では、官公庁・自治体事業やUber Japanとの提携によるサービス強化を進めた。
ホテル事業では、国内外の宿泊市場の回復により、稼働率・客室単価ともに上昇し、売上・利益ともに順調に推移した。特に、大阪・関西万博関連のコラボレーションルーム展開が寄与した。
九州産交グループでは、高速バス、貸切バス、航空代理店、飲食物販事業が好調に推移し、増収増益となった。
株主還元については、2025年10月期の配当予想は、期末配当10円、年間配当合計20円となっている。
本決算発表は、売上高・営業利益・経常利益が増加したものの、親会社株主に帰属する四半期純利益が大幅に減少したことから、投資家目線では、事業の成長性は評価できるものの、一時的な損失要因による純利益の減少が懸念材料となり、総じて中立的な評価となる。
株式会社エイチ・アイ・エスの2025年10月期第3四半期連結累計期間の業績は、売上高が前年同期比12.2%増の2,663億24百万円となり、旅行需要の回復を背景に堅調に推移した。営業利益は同20.4%増の62億65百万円、経常利益は同16.1%増の60億46百万円と、増収効果により利益も増加した。しかしながら、連結子会社の事業縮小に伴う特別損失の計上等により、親会社株主に帰属する四半期純利益は同49.8%減の17億82百万円と大幅な減益となった。これは、一時的な要因によるものであり、事業の根幹となる収益力は維持されている。
指標 | 2025年10月期(累計) | 2024年10月期(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 266,324億円 | 237,337億円 | 12.2% |
営業利益 | 6,265億円 | 5,201億円 | 20.4% |
経常利益 | 6,046億円 | 5,210億円 | 16.1% |
EBITDA | 15,107億円 | 10,651億円 | 42.3% |
純利益 | 1,782億円 | 3,579億円 | △50.2% |
旅行事業は、全社売上高の約73%を占める主要事業である。当第3四半期連結累計期間においては、欧州・中近東の予約集客強化や「SUPER SUMMER SALE! 2025」の展開が奏功し、好調に推移した。特に、大阪・関西万博関連のツアーは注目度が高く、集客を牽引した。また、沖縄においては、新たなテーマパークを組み込んだツアーやバスツアーの拡充により、着地型サービスの強化を図り、集客を強化した。訪日旅行事業では、日本の四季や文化を体験できる付加価値の高い商品開発や、SNSを活用した情報発信により、海外からの旅行需要を取り込んだ。法人事業においては、報奨旅行・研修旅行の需要が引き続き堅調であり、官公庁・自治体事業では、地域活性化プロジェクトを推進した。Uber Japanとの提携により、企業向けの移動手段の提供や経費精算の効率化にも貢献した。海外アウトバウンド事業では、カナダからのカリブ・中南米方面への送客は好調であったものの、国際情勢の変化による米国渡航需要の減少が影響し、前年同期を下回った。しかし、各国の現地法人においては、業務渡航および現地でのレジャー需要が増加傾向にあり、堅調な推移をみせた。
ホテル事業は、全社売上高の約7%を占める。当第3四半期連結累計期間においては、国内外の宿泊市場の回復に伴い、稼働率および客室単価が前年同期比で上昇し、売上・利益ともに順調に推移した。特に、大阪・関西万博の開催に関連し、関西圏の「変なホテル」では、公式キャラクターとのコラボレーションルームを展開し、宿泊需要の獲得に努めた。海外においては、韓国の「変なホテル ソウル」が、グローバルからの集客により引き続き好調を維持した。
九州産交グループは、全社売上高の約7%を占める。当第3四半期連結累計期間においては、主要事業である高速バス、貸切バス、航空代理店、飲食物販事業が好調に推移し、増収増益となった。特に、高速バス事業はインバウンド需要や国内観光客の増加が継続し、輸送人員が堅調に推移した。航空代理店事業では、外航受託手数料の新規獲得や航空機発着取扱手数料の増加が寄与した。飲食物販事業も、阿蘇くまもと空港やサクラマチクマモトでの販売が好調であった。
株式会社エイチ・アイ・エスは、官公庁・自治体事業において、Uber Japan株式会社と提携し、企業・法人の業務渡航や団体旅行を対象にUber Taxiの利用を提案することで、移動手段の確保と経費精算の効率化を図っている。また、地域活性化プロジェクトにおいては、さとゆめ社と共に、全国に新しい目的地を創る取り組みを進めており、今期は8自治体との連携を開始した。これらの提携・連携は、新たな収益機会の創出や事業領域の拡大に繋がる可能性があり、企業価値向上に寄与すると考えられる。
株式会社エイチ・アイ・エスは、2025年10月期の通期業績予想を修正している。修正後の通期業績予想は、売上高3,900億円(前期比13.6%増)、営業利益120億円(前期比10.6%増)、経常利益110億円(前期比5.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益65億円(前期比25.4%増)となっている。第3四半期累計期間の進捗率は、売上高が約79.7%、営業利益が約52.2%、経常利益が約54.9%、親会社株主に帰属する当期純利益が約27.4%となっている。特に、売上高の進捗率は順調に進んでいるが、利益面では、通期業績予想の達成に向けて、下期における更なる収益改善が求められる。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
---|---|---|
売上高 | 390,000億円 | 79.7% |
営業利益 | 12,000億円 | 52.2% |
経常利益 | 11,000億円 | 54.9% |
純利益 | 6,500億円 | 27.4% |
株式会社エイチ・アイ・エスは、株主還元として配当を実施している。2024年10月期の配当は実施されなかったが、2025年10月期は期末配当10円、年間配当合計20円を予想している。自己株式取得や株主優待に関する具体的な情報は、本決算短信からは確認されなかった。
株式会社エイチ・アイ・エスは、2025年10月期の通期業績予想を上方修正しており、これは投資家にとってポジティブな材料である。特に、売上高は堅調な伸びを示しており、旅行需要の回復が継続していることを示唆している。しかしながら、親会社株主に帰属する当期純利益の進捗率は約27.4%と、通期予想達成に向けては下期における更なる収益改善が不可欠である。
旅行事業においては、引き続き訪日旅行需要の取り込みや、国内旅行における体験型商品の拡充が期待される。ホテル事業も、国内外の観光需要の回復に伴い、安定した収益が見込まれる。一方で、国際情勢の変動や為替レートの変動は、業績に影響を与える可能性があるため、引き続き注視が必要である。
特に、大阪・関西万博の開催は、インバウンド需要のさらなる喚起や、関連する旅行・宿泊需要の増加に繋がる可能性があり、同社にとって大きな追い風となるだろう。また、地域活性化プロジェクトや新たなテクノロジーを活用したサービス展開は、中長期的な成長戦略として注目される。
投資家目線では、通期業績予想の達成に向けた下期の具体的な施策や、一時的な損失要因の解消による純利益の回復が今後の株価を左右する重要なポイントとなるだろう。事業の成長性は評価できるものの、利益面での安定性と持続的な成長を実現できるかどうかが、今後の企業価値向上における鍵となる。
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