株式会社キユーソー流通システムの2025年11月期第3四半期連結累計期間の決算は、増収を達成したものの、利益面では減益となった。営業収益は前年同期比3.8%増の1,506億95百万円と堅調に推移したが、営業利益は同9.7%減の44億51百万円、経常利益は同15.3%減の37億68百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同14.8%減の20億81百万円となった。これは主に運送・倉庫コストの増加やインドネシアにおける保管貨物の減少などが影響した。
一方で、同社は「グループビジョン2036」および「第8次中期経営計画」を策定し、将来の成長戦略を明確に打ち出している点はポジティブな要素である。また、通期業績予想は据え置きながらも、第3四半期時点での経常利益および純利益の進捗率は高く、通期目標達成への期待は持てる。株主還元については、2025年11月期の年間配当予想を前年同期比で増配となる27.50円としており、株主還元への意欲を示している。
全体として、売上は堅調に推移しているものの、コスト増による利益圧迫が課題として浮上した四半期であった。しかし、長期的な成長戦略の策定と増配予想は、投資家にとって一定の安心材料となる。
2025年11月期第3四半期連結累計期間の全社業績は、営業収益が前年同期比3.8%増の1,506億95百万円と増収を達成した。これは適正料金施策や既存取引の拡大などが寄与した。しかし、利益面ではコスト増が響き、営業利益は同9.7%減の44億51百万円、経常利益は同15.3%減の37億68百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同14.8%減の20億81百万円と減益となった。特に運送・倉庫コストの増加やインドネシアにおける保管貨物の減少が利益を圧迫した。
指標 | 2025年11月期3Q(累計) | 2024年11月期3Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
営業収益 | 1,506.95億円 | 1,452.15億円 | 3.8% |
営業利益 | 44.51億円 | 49.30億円 | △9.7% |
経常利益 | 37.68億円 | 44.47億円 | △15.3% |
純利益 | 20.81億円 | 24.44億円 | △14.8% |
共同物流事業は、全社売上高の約67.8%を占める主要セグメントである。当第3四半期連結累計期間において、営業収益は前年同期比3.7%増の1,021億54百万円と増収を達成した。これは主に適正料金施策の進捗や既存取引の拡大が寄与した結果である。しかし、利益面では、増収による利益増加やコスト改善が進捗したものの、運送・倉庫のコストアップが大きく影響し、営業利益は同4.2%減の22億31百万円となった。物流業界全体で人手不足や燃料費高騰などのコスト上昇圧力が高まる中、適正料金施策による収益改善とコスト抑制のバランスが課題となっている。今後も効率的な物流ネットワークの維持とコスト管理が重要となる。
専用物流事業は、全社売上高の約19.8%を占めるセグメントである。当第3四半期連結累計期間において、営業収益は前年同期比0.9%減の298億38百万円と微減となった。これは適正料金施策が進捗した一方で、チェーンストアに関する取引が減少したことが主な要因である。利益面では、労務費などの費用増加があったものの、適正料金施策やチェーンストア取引減少による収益の適正化が寄与し、営業利益は同1.0%増の11億14百万円と増益を確保した。取引先の変動や市場環境の変化に柔軟に対応しつつ、収益性を維持するための事業構造改革が進行している状況がうかがえる。
関連事業は、全社売上高の約12.4%を占めるセグメントである。当第3四半期連結累計期間において、営業収益は前年同期比12.6%増の187億3百万円と大幅な増収を記録した。これは国内における車両・燃料販売の増加や、インドネシアでの配送業務の取引拡大が主な要因である。しかし、利益面では、増収による利益増加があったものの、インドネシアにおける保管貨物の減少が影響し、営業利益は同26.5%減の10億80百万円と減益となった。海外事業の拡大は成長ドライバーとなる一方で、地域ごとの市場変動リスクも顕在化しており、グローバルな事業展開におけるリスク管理と収益性向上が今後の課題となる。
株式会社キユーソー流通システムは、具体的な事業/資本提携やM&Aの発表はなかったものの、中長期的な企業価値向上に向けた重要な動向として「グループビジョン2036」を策定した。これは1966年の設立以来培ってきた「創意工夫」の精神と4温度帯の全国物流ネットワークを基盤に、「作り手」と「使い手」の「つなぎ手」として豊かな暮らしを支えるという企業理念を再確認するものである。このビジョン実現に向けた第一歩として、2025年11月期から2028年11月期までの4ヵ年を対象とした「第8次中期経営計画」を策定した。「物流の持続性確保と新たな価値創出」をテーマに掲げ、「国内事業の整備」「新領域の拡充と更なる開拓」「経営基盤の強化」の3つを基本方針として、取り組みを推進している。これらの計画は、将来の事業成長と企業価値向上に向けた戦略的な方向性を示すものであり、今後の事業展開に大きな影響を与える動向である。
2025年11月期の通期連結業績予想は、直近に公表された数値から修正はなく、据え置きとなった。第3四半期連結累計期間の実績は、通期予想に対して高い進捗率を示している。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
---|---|---|
営業収益 | 2,000.00億円 | 75.3% |
営業利益 | 56.00億円 | 79.5% |
経常利益 | 42.00億円 | 89.7% |
純利益 | 23.00億円 | 90.5% |
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ45億46百万円増加し、1,351億81百万円となった。資産増加の主な要因は、現金及び預金の4億12百万円増、受取手形及び営業未収入金の7億21百万円増、有形固定資産の23億67百万円増、無形固定資産の5億19百万円増などである。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ36億47百万円増加し、796億29百万円となった。負債増加の主な要因は、短期借入金の24億69百万円増、長期借入金の25億69百万円増などである。一方で、未払費用等の減少によるその他の流動負債は9億24百万円減少した。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べ8億99百万円増加し、555億52百万円となった。純資産増加の主な要因は、利益剰余金の14億47百万円増、非支配株主持分の60百万円増などである。ただし、為替換算調整勘定は4億46百万円減少した。自己資本比率は32.4%であり、前連結会計年度末の32.8%から微減しているものの、安定した財務基盤を維持している。
配当
株式会社キユーソー流通システムの今後の見通しは、増収基調を維持しつつも、利益面での課題克服と中長期的な成長戦略の実行が焦点となる。国内経済は緩やかな回復基調にあるものの、食品物流業界は消費者の節約志向継続、人手不足、コストアップなど、依然として不透明な事業環境に直面している。このような状況下で、同社は「グループビジョン2036」および「第8次中期経営計画」を策定し、国内事業の整備、新領域の拡充と更なる開拓、経営基盤の強化を基本方針として掲げている点は、将来の企業価値向上に向けた明確なロードマップを示しており、投資家にとってはポジティブな要素である。
第3四半期累計期間の業績は、営業収益は堅調に増加したものの、運送・倉庫コストの増加やインドネシアにおける保管貨物の減少が利益を圧迫し、営業利益、経常利益、純利益は減益となった。これは、コストコントロールが今後の収益性改善の鍵となることを示唆している。通期業績予想は据え置きであり、第3四半期時点での経常利益および純利益の進捗率は高い水準にあるため、通期目標達成への期待は持てる。しかし、残りの期間でコスト上昇圧力をいかに吸収し、利益を確保できるかが重要となる。
セグメント別に見ると、主力の共同物流事業は増収減益、専用物流事業は減収増益、関連事業は増収減益と、事業間で明暗が分かれている。各セグメントにおける収益構造の改善と効率化が、全社的な利益率向上に不可欠である。特に、海外事業を含む関連事業の成長と収益性改善は、今後の企業価値向上に大きく寄与する可能性がある。
株主還元については、増配予想を発表しており、株主への還元意欲は高い。これは、厳しい事業環境下でも安定した配当を維持・向上させようとする経営姿勢を示しており、投資家にとって安心材料となる。
総じて、今回の決算発表は、売上成長は評価できるものの、利益面での課題が浮き彫りになった点で、投資家にとってはややネガティブな側面もあった。しかし、長期的な成長戦略の明確化と株主還元への積極的な姿勢は、将来への期待を持たせるポジティブな要素である。今後は、中期経営計画の具体的な進捗と、コスト構造改革による収益性改善が、企業価値を左右する重要なポイントとなるだろう。
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