トーセイ株式会社の2025年11月期第3四半期連結累計期間の決算は、売上高839.61億円(前年同期比20.9%増)、営業利益207.98億円(同21.9%増)、税引前利益194.37億円(同20.8%増)、親会社所有者帰属四半期利益140.45億円(同25.0%増)と、全ての主要利益項目で大幅な増益を達成した。これは、国内不動産投資市場の堅調な需要と、不動産再生・開発事業における物件販売の好調、ストックビジネスの着実な拡大、特にアセットマネジメント受託資産残高の増加やホテル事業の収益改善が寄与した結果である。通期業績予想は据え置きだが、第3四半期時点で純利益の進捗率が99.72%と非常に高く、通期目標達成への確実性が示された。また、2025年12月1日を効力発生日とする1株につき2株の株式分割を発表し、投資単位の引き下げと流動性向上を通じて投資家層の拡大を図る方針を示した。全体として、今回の決算発表は、堅調な業績推移と将来に向けた株主還元策が示された点で、投資家にとって非常にポジティブな内容であった。
2025年11月期第3四半期連結累計期間において、トーセイ株式会社は売上高、営業利益、税引前利益、親会社所有者帰属四半期利益の全てで前年同期を大きく上回る成長を遂げた。国内不動産投資市場の活況を背景に、不動産売買事業が好調に推移し、ストックビジネスも着実に拡大したことが業績を牽引した。特に親会社所有者帰属四半期利益は25.0%増と高い伸びを示し、収益性の改善が明確に表れている。
指標 | 2025年11月期3Q(累計) | 2024年11月期3Q(累計) | 前年同期比 |
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売上高 | 839.61億円 | 694.19億円 | 20.9% |
売上総利益 | 337.68億円 | 290.44億円 | 16.3% |
営業利益 | 207.98億円 | 170.55億円 | 21.9% |
税引前利益 | 194.37億円 | 160.90億円 | 20.8% |
純利益 | 140.45億円 | 112.34億円 | 25.0% |
不動産再生事業の売上高は379.22億円(前年同期比13.2%増)、セグメント利益は67.09億円(同13.1%増)を達成した。全社売上高に占める割合は約45.2%である。当四半期連結累計期間では、「T's garden東陽町」(東京都江東区)、「T's garden東尾久」(東京都荒川区)、「T's garden西大島」(東京都江東区)など32棟のバリューアップ物件と中古区分マンション93戸を販売した。仕入面では、収益オフィスビル、賃貸マンション等合わせて34棟、土地1件及び中古区分マンション70戸を取得し、積極的な取得活動を進めている。建築費の高止まりが続く中、事業ポートフォリオマネジメントとして不動産再生事業の比率を意識的に高める戦略が奏功し、好調な業績を維持している。
不動産開発事業の売上高は218.61億円(前年同期比46.0%増)、セグメント利益は60.24億円(同19.0%増)を達成した。全社売上高に占める割合は約26.0%である。当四半期連結累計期間では、物流施設「T's Logi佐野」(栃木県佐野市)、賃貸マンション「THE PALMS千葉中央」(千葉県千葉市)、「THE PALMS柏」(千葉県柏市)など12棟を販売した。戸建住宅では「THEパームスコート桜新町」(東京都世田谷区)等において32戸を販売した。仕入面では、ホテル開発用地2件、賃貸アパート開発用地9件、57戸分の戸建住宅開発用地を取得し、将来の収益源確保に努めている。建築費の上昇率が比較的穏やかな木造にシフトし、木造賃貸アパートに注力することで、着実に実績を積み重ねている。
不動産賃貸事業の売上高は66.00億円(前年同期比13.3%増)、セグメント利益は36.40億円(同25.3%増)を達成した。全社売上高に占める割合は約7.9%である。当四半期連結累計期間は、保有する賃貸物件のリーシングに注力した。期末の賃貸物件数は、物件取得27棟、賃貸開始13棟、物件売却37棟、賃貸終了1棟に伴い、前連結会計年度末の123棟から2棟増加し125棟となった。首都圏賃貸マンション市場では平均募集賃料が上昇傾向を継続しており、J-REITが保有するマンションの平均稼働率も97.0%と高水準を維持している。
不動産ファンド・コンサルティング事業の売上高は68.94億円(前年同期比30.5%増)、セグメント利益は44.30億円(同42.8%増)を達成した。全社売上高に占める割合は約8.2%である。前連結会計年度末のアセットマネジメント受託資産残高2兆4,438.08億円から、ファンドの物件売却等により1,623.55億円の残高が減少した一方で、新たにアセットマネジメント契約を受託したことにより3,611.45億円の残高が増加し、当第3四半期連結会計期間末のアセットマネジメント受託資産残高は2兆6,425.99億円となった。特に第2四半期にウォーバーグ・ピンカスから新規受託した国内最大級のシェアハウスポートフォリオのアセットマネジメント受託が寄与し、AUMが前期末比1,987億円増と大きく拡大した。
不動産管理事業の売上高は54.33億円(前年同期比2.9%増)、セグメント利益は8.67億円(同7.1%減)を達成した。全社売上高に占める割合は約6.5%である。当四半期連結累計期間は、新規契約の獲得及び既存契約の維持に努めた。期末での管理棟数は、オフィスビル、ホテル及び物流施設等で574棟、分譲マンションおよび賃貸マンションで398棟、合計972棟(前年同四半期末比12棟増加)となった。
ホテル事業の売上高は52.47億円(前年同期比15.1%増)、セグメント利益は20.62億円(同31.7%増)を達成した。全社売上高に占める割合は約6.2%である。国内需要の回復とインバウンド需要の取り込みにより、客室稼働率及び客室単価が向上し、売上高、セグメント損益ともに前年同期を大きく上回った。過去最高となっている訪日外客数が稼働率および平均客室単価の上昇に寄与しており、ホテル収益は計画を上回って推移している。
当第3四半期連結累計期間において、重要な子会社の異動に関する記載はなく、M&Aの実施は確認されていない。しかし、事業提携の動向として、不動産ファンド・コンサルティング事業において、第2四半期にウォーバーグ・ピンカスから国内最大級のシェアハウスポートフォリオのアセットマネジメント受託を新規に獲得した。これにより、国内受託資産残高(AUM)は前期末比1,987億円増の2兆6,425億円まで拡大し、事業規模の拡大に大きく貢献している。この提携は、同社の不動産ファンド・コンサルティング事業の成長戦略において重要な位置を占め、今後の収益基盤強化に繋がるものと想定される。
2025年11月期の全社業績予想は、2025年7月7日に公表された内容から現時点で変更はなく、据え置きである。第3四半期連結累計期間の実績は、通期予想に対して非常に高い進捗率を示している。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
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売上高 | 981.25億円 | 85.6% |
営業利益 | 216.17億円 | 96.2% |
税引前利益 | 198.00億円 | 98.2% |
純利益 | 140.85億円 | 99.7% |
当第3四半期連結会計期間末の総資産は2,948.94億円となり、前連結会計年度末に比べ180.79億円増加した。これは主に現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権、棚卸資産の増加によるものである。負債は1,926.70億円となり、前連結会計年度末に比べ67.21億円増加した。これは営業債務及びその他の債務、有利子負債の増加が主な要因である。資本は1,022.24億円となり、前連結会計年度末に比べ113.58億円増加した。これは主に利益剰余金の積み上げと配当金の支払いによるものである。
キャッシュフローの状況を見ると、現金及び現金同等物は401.00億円となり、前連結会計年度末に比べ52.26億円増加した。営業活動によるキャッシュ・フローは68.88億円の獲得となり、前年同期の11.22億円の使用から大幅に改善した。これは税引前四半期利益の増加が主な要因である。投資活動によるキャッシュ・フローは△37.91億円の使用となり、前年同期比で72.1%増の使用となった。これは主に貸付金の実行による支出が増加したことによる。財務活動によるキャッシュ・フローは21.26億円の獲得となり、長期借入れによる収入が長期借入金の返済及び配当金の支払いを上回ったことによる。
配当
自己株式取得
株主優待
トーセイ株式会社の今後の見通しは、現在の堅調な業績と戦略的な事業展開を背景に、投資家にとって非常にポジティブな要素が多い。国内経済の緩やかな回復基調と、国内外投資家による不動産投資需要の継続は、同社の主要事業である不動産売買事業にとって追い風となる。特に、不動産再生事業では事業ポートフォリオマネジメントを意識的に高め、不動産開発事業では建築費上昇が比較的穏やかな木造賃貸アパートに注力するなど、市場環境の変化に合わせた柔軟な戦略が奏功している。
ストックビジネスも着実に拡大しており、不動産ファンド・コンサルティング事業におけるアセットマネジメント受託資産残高の増加や、インバウンド需要を取り込んだホテル事業の収益改善は、安定的な収益基盤を強化する。2025年12月には「トーセイホテル ココネ蒲田」の新規開業も予定されており、ホテル事業のさらなる成長が期待される。
通期連結業績予想が据え置かれているにもかかわらず、第3四半期時点で純利益の進捗率が99.72%と極めて高い水準に達していることは、通期目標達成への確実性が非常に高いことを示唆し、投資家にとっては安心材料となる。これは、保守的な業績予想設定か、あるいは予想を上回るペースで事業が推移している可能性を示しており、今後の上方修正への期待も高まる。
さらに、2025年12月1日を効力発生日とする1株につき2株の株式分割の実施は、投資単位の金額を引き下げ、株式の流動性を向上させることで、より広範な投資家層の獲得を目指すものであり、企業価値向上への積極的な姿勢を示す。これは、個人投資家にとってアクセスしやすい環境を整備し、長期的な株主基盤の強化に繋がるポジティブな施策である。
国内外の金利動向や世界景気の変動といった外部要因への注視は必要だが、現在の好調な不動産市況を最大限に活用し、各事業を推進していく方針は、今後も同社の持続的な成長と企業価値の向上に寄与すると考えられる。総じて、トーセイ株式会社は堅調な業績と将来を見据えた戦略、そして株主還元策を通じて、投資家にとって魅力的な投資対象であり続ける見通しである。
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