株式会社ケア21は、2025年10月期第3四半期連結累計期間において、売上高359億18百万円(前年同期比6.9%増)、営業利益3億86百万円(前年同期は4億32百万円の営業損失)、経常利益1億85百万円(前年同期は79百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は2億26百万円(前年同期は1億円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となった。介護業界全体では、高齢化の進行を背景にサービス需要は堅調に推移する一方で、労働需給の逼迫が続き、人財確保が引き続き大きな課題となっている。このような状況下、同社は人財確保・定着、費用構造の適正化、入居率の向上に向けた取り組みを推進し、施設系介護サービスの流入経路の拡充と稼働最大化に向けて入居促進部を新設した結果、入居率は前年同期比で改善するなど、施設系介護サービスは持ち直しの動きが続いている。株主還元としては、2025年10月期の年間配当予想は17.00円となっている。本決算発表は、売上高の増加と赤字からの脱却という点でポジティブに評価できるが、依然として人財確保が課題であり、利益率の改善にはコスト要因による抑制もみられるため、今後の取り組みが注目される。
株式会社ケア21の2025年10月期第3四半期連結累計期間の業績は、売上高が前年同期比6.9%増の359億18百万円となった。これは、主に施設系介護サービスの入居率改善や、人財確保・定着に向けた取り組みによる効果が寄与した結果である。営業利益は、前年同期の営業損失から黒字転換し、3億86百万円を計上した。経常利益も同様に、前年同期の経常損失から黒字転換し、1億85百万円となった。親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期の純損失から黒字転換し、2億26百万円となった。これらの業績は、介護業界全体が抱える人財確保の課題や、エネルギー費高止まりといったコスト要因の影響を受けながらも、同社が推進する事業戦略が一定の効果を上げていることを示している。
指標 | 2025年10月期(累計) | 2024年10月期(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 35,918百万円 | 33,602百万円 | 6.9% |
営業利益 | 386百万円 | △432百万円 | - |
経常利益 | 185百万円 | △79百万円 | - |
親会社株主に帰属する四半期純利益 | 226百万円 | △100百万円 | - |
在宅系介護事業は、全社売上高の約31.2%を占める。当第3四半期連結累計期間において、在宅系介護事業の売上高は112億17百万円となった。これは、外部経路の活用や見学対応体制の強化による入居促進策が奏功し、入居率の向上に繋がった結果である。また、人財確保・定着に向けた取り組みとして、ケア21独自の評価制度「チャレンジキャリア制度」の推進や、パートタイマーの無期雇用への転換、外国籍人財の積極採用・育成などを実施しており、人員の定着率向上に繋がっている。さらに、DXによる標準手順の徹底と自動処理、データ連携の拡充を進め、事務関連費・外注費・通信費を中心に販売費及び一般管理費の抑制に努めている。これらの取り組みにより、在宅系介護事業は堅調な推移を示している。
施設系介護事業は、全社売上高の約52.7%を占める。当第3四半期連結累計期間において、施設系介護事業の売上高は189億33百万円となった。施設系介護サービスにおいては、入居促進部を新設し、外部経路の活用および見学対応体制を強化した結果、見込み客の増加と入居決定率の向上が見られ、入居率は前年同期比で改善するなど、持ち直しの動きが続いている。人財確保においては、国籍・世代・雇用形態を問わず働きやすい職場環境の整備を進めており、定年制度の撤廃やパートタイマーの無期雇用への転換、外国籍人財の積極採用・育成などを実施している。また、DXによる業務効率化や、調達の見直しとエネルギー費対策を継続し、不採算事業所の見直しを進めることで、収益構造の改善に努めている。
その他事業は、全社売上高の約16.1%を占める。当第3四半期連結累計期間において、その他事業の売上高は57億67百万円となった。このセグメントには、福祉用具の貸与・販売、住宅改修、訪問看護サービス、医療サポート事業、軽作業請負、介護人財の教育事業、介護人財の紹介・派遣事業、ダイニング事業、障がい者(児)通所支援、就労継続支援A型事業、就労継続支援B型事業、保育事業、不動産事業、ソフトウエア開発事業、薬局に対するコンサルティング事業、薬局事業等の各事業が含まれる。これらの事業は、多様なニーズに対応し、収益源の多角化に貢献している。
株式会社ケア21は、当第3四半期連結累計期間において、特定の譲渡制限付株式報酬としての自己株式処分を実施した。これは、2025年2月21日開催の取締役会において決議され、2025年3月17日に払込手続きが完了したものである。対象取締役(社外取締役を除く)4名に対し、15,000株の自己株式が1株につき387円で処分された。この処分の目的は、対象取締役の報酬と株式価値との連動性をより一層強めることにより、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを与えるとともに、対象取締役と株主との価値共有を進めることにある。
株式会社ケア21は、2025年10月期の通期業績予想を売上高48,000百万円、営業利益600百万円、経常利益200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益250百万円と見込んでいる。第3四半期終了時点での進捗率は、売上高が74.8%、営業利益が64.3%、経常利益が92.5%、親会社株主に帰属する当期純利益が88.0%となっている。業績予想からの修正はなく、堅調な進捗を示している。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
---|---|---|
売上高 | 48,000百万円 | 74.8% |
営業利益 | 600百万円 | 64.3% |
経常利益 | 200百万円 | 92.5% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 250百万円 | 88.0% |
2025年10月期第3四半期末の連結財政状態を見ると、総資産は313億31百万円となり、前連結会計年度末の316億68百万円から減少した。純資産は43億52百万円となり、前連結会計年度末の47億27百万円から減少した。自己資本比率は13.7%となり、前連結会計年度末の14.9%から低下した。これは、主に純資産の減少によるものである。キャッシュフローについては、四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていないが、減価償却費は10億30百万円(前年同期比1.1%増)となっている。
配当:
自己株式取得:
株主優待:
株式会社ケア21は、2025年10月期第3四半期決算において、売上高の増加と営業利益の黒字転換を達成し、事業の回復基調を示している。特に、施設系介護サービスにおける入居率の改善や、人財確保・定着に向けた積極的な取り組みが業績に寄与している点はポジティブである。しかしながら、介護業界全体が直面する人財不足という構造的な課題は依然として大きく、今後の収益拡大においては、この課題への継続的な対応が不可欠となる。また、エネルギー価格の高止まりなど、コスト要因による利益率への圧迫も無視できない。
投資家目線で見ると、同社はこれらの課題に対し、DXの推進による業務効率化や、調達の見直し、不採算事業所の見直しといった費用構造の適正化策を講じており、一定の成果を上げている。入居促進部の新設など、具体的な施策が奏功している点は評価できる。
今後の見通しとしては、引き続き人財の確保・育成・定着に注力し、サービス品質の向上と安定的な事業運営を目指すことが重要となる。また、外部環境の変化に柔軟に対応しつつ、収益構造の改善を継続していくことで、さらなる利益成長を目指すことが期待される。配当予想の据え置きや、自己株式処分によるインセンティブ付与は、株主還元への意識を示すものとして好意的に受け止められるだろう。
総じて、今回の決算は、厳しい事業環境下においても着実に事業を立て直しつつあることを示すものであり、今後の持続的な成長に向けた基盤が着実に築かれていると評価できる。しかし、人財確保という根本的な課題への対応の進捗と、コスト抑制策の効果が、今後の企業価値向上における重要な鍵となるだろう。
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