株式会社平和堂の2026年2月期第2四半期(中間期)連結決算は、営業収益2,235.4億円(前年同期比3.2%増)、営業利益68.3億円(同8.4%増)、経常利益75.1億円(同6.3%増)、親会社株主に帰属する中間純利益49.0億円(同7.4%増)と、全ての主要項目で増収増益を達成した。特に小売事業が好調に推移し、営業収益が「2030年定量目標」に向けて先行して向上している状況だ。
中長期ビジョン「地域密着ライフスタイル総合(創造)企業」の実現に向け、「第五次中期経営計画」の重点戦略である「子育て世代ニーズ対応による顧客支持の獲得」「ドミナント戦略をベースとしたHOP経済圏の拡大」「生産性改善も含むコスト構造改革の推進」を着実に進めている。HOPアプリ会員数は105万人に達し、HOPマネーチャージ可能金融機関も10行に拡大するなど、顧客基盤強化の取り組みが奏功している。
株主還元については、2026年2月期の年間配当金は前年同期の63.00円から3.00円増の66.00円(中間33.00円、期末33.00円)を予想しており、増配基調を維持している。また、当中間期において自己株式100万株を取得し、自己株式が26.96億円増加した。
全体として、厳しい経済環境下においても、戦略的な取り組みと小売事業の堅調な推移により、増収増益を達成し、株主還元も強化していることから、投資家にとってはポジティブな決算発表と評価できる。
当中間連結会計期間(2025年2月21日~2025年8月20日)における全社業績は、営業収益が2,235.4億円となり、前年同期比で3.2%増加した。これは主に小売事業の売上が好調に推移したことによる。営業利益は68.3億円で前年同期比8.4%増加し、営業利益率は3.1%と前年同期より0.2%向上した。経常利益は75.1億円で前年同期比6.3%増加し、経常利益率は3.4%と前年同期より0.1%向上した。親会社株主に帰属する中間純利益は49.0億円で前年同期比7.4%増加した。厳しい経営環境が続く中で、コスト上昇要因があったものの、営業総利益の増加が利益を押し上げ、全ての主要項目で増収増益を達成した。
指標 | 2026年2月期2Q(累計) | 2025年2月期2Q(累計) | 前年同期比 |
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営業収益 | 2,235.4億円 | 2,166.5億円 | 3.2% |
営業利益 | 68.3億円 | 63.1億円 | 8.4% |
経常利益 | 75.1億円 | 70.7億円 | 6.3% |
純利益 | 49.0億円 | 45.6億円 | 7.4% |
小売事業が占める全社売上割合は約94.7%である。 グループの中核企業である株式会社平和堂は、「第五次中期経営計画」の重点戦略を推進し、増収増益を達成した。既存店客数は閏年影響を除くと101.2%、客単価は102.3%と前年よりも上昇し、好調に推移している。子育て世代ニーズ対応として、日常使い商品の価格対応強化、生鮮品・PB商品の差別化、アプリを活用したコミュニケーション強化を進めている。HOPアプリは2024年7月にリリースされ、2025年7月現在で105万人が会員登録しており、HOPマネーチャージができる金融機関は年度初めの6行から10行に増加し、出店地域を広くカバーしている。アプリを通じた情報発信やOne to Oneマーケティングの取り組みも進展している。子育て世代に人気のテナント誘致も積極的に行い、当期にはアル・プラザ守山、高富店に無印良品が出店し、無印良品のテナント出店は計18店舗となった。ドミナント戦略の強化として、4月には滋賀県東近江市にフレンドマート八日市妙法寺店を出店し、滋賀県内でのドミナントを強化した。2月に実施したフレンドマート能登川店の改装と合わせ、東近江市エリアでのシェア率向上を実現している。エリアごとに店舗規模別の役割を明確化する「フォーマット戦略」を推進し、イベント需要に応えるショッピングセンターや日常使いの食品スーパーと、それぞれに適した商品構成で最適化を図っている。また、商圏分析から食品スーパーの可能性を再検討し、最大売上/利益を目指す「ポテンシャル店舗」を設定し、販売力向上の取り組みを進めている。2024年8月21日には株式会社丸善より承継した6店舗を、それぞれのエリアの中で平和堂と一体的にエリア戦略を構成するよう、一部は業態転換して営業している。
小売周辺事業が占める全社売上割合は約1.5%である。 惣菜・米飯及び生鮮品の製造加工を営む株式会社ベストーネは、2023年5月31日に稼働した新デリカセンターの生産数が順調に増加していること、及び株式会社平和堂の生産性改善の取り組みによる受注増もあり、増収・増益となった。一方、ビル管理会社を営む株式会社ナショナルメンテナンスは、前年に能登半島地震被害の復旧工事受注が多かったことの反動により、減収・減益となった。
その他事業が占める全社売上割合は約3.7%である。 外食事業を展開する株式会社ファイブスターは、売上高が伸長し販売管理費の抑制効果もあり、増収・増益となった。同じく外食事業を展開する株式会社シー・オー・エムは、主力のケンタッキーフライドチキンの売上が好調に推移し増収となったが、宅配サービスの拡大等により経費が増加し減益となった。アミューズメント事業を展開していた株式会社ユーイングは、ショッピングセンターの魅力向上を実現するため、2025年5月24日取締役会決議をもって株式の全てを譲渡した。
当中間期において、事業再編やM&Aに関する複数の動きがあった。 まず、アミューズメント事業を展開していた株式会社ユーイングについては、ショッピングセンターの魅力向上を実現するため、アミューズメント業界において豊富な実績とノウハウを持つ企業との連携が最善であると判断し、2025年5月24日取締役会決議をもって株式の全てを譲渡した。これにより、特別利益として2.39億円の売却益を計上している。 また、京都府で総合小売業を展開する株式会社エールは、2025年8月21日に株式会社平和堂が吸収合併した。これにより、グループ内での事業効率化とシナジー創出が期待される。 さらに、2024年8月21日には株式会社丸善より6店舗を承継し、これらの店舗はそれぞれのエリアで平和堂と一体的にエリア戦略を構成するよう、一部業態転換して営業を開始している。これらのM&Aや事業再編は、グループ全体の事業ポートフォリオの最適化と、地域密着型戦略の強化に資するものと見られる。
2026年2月期の通期連結業績予想は、2025年4月3日公表時より修正はなく据え置きである。当中間期までの実績は、通期予想に対して順調に進捗している。営業収益は通期予想4,560.0億円に対し、中間期累計で2,235.4億円を達成し、進捗率は49.0%である。営業利益は通期予想145.0億円に対し、中間期累計で68.3億円を達成し、進捗率は47.1%である。経常利益は通期予想156.0億円に対し、中間期累計で75.1億円を達成し、進捗率は48.1%である。親会社株主に帰属する当期純利益は通期予想108.0億円に対し、中間期累計で49.0億円を達成し、進捗率は45.4%である。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
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売上高 | 4,560.0億円 | 49.0% |
営業利益 | 145.0億円 | 47.1% |
経常利益 | 156.0億円 | 48.1% |
純利益 | 108.0億円 | 45.4% |
当中間連結会計期間末の総資産は3,057.3億円となり、前連結会計年度末に比べ21.4億円減少した。これは主に現金及び預金が26.6億円、有形固定資産が11.6億円減少した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が9.9億円、投資有価証券が8.6億円増加したことによる。負債は1,130.2億円となり、前連結会計年度末に比べ28.2億円減少した。支払手形及び買掛金が27.0億円、未払法人税等が7.0億円、短期借入金が30.0億円、退職給付に係る負債が4.1億円減少したことが主な要因である。一方で長期借入金は8.3億円増加した。純資産は1,927.1億円となり、前連結会計年度末に比べ6.8億円増加した。これは利益剰余金が32.4億円増加した一方で、自己株式が26.8億円増加したことによる。
キャッシュフローの状況を見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは112.9億円の収入となり、前中間連結会計期間の142.1億円の収入から減少した。投資活動によるキャッシュ・フローは△68.8億円の支出となり、前中間連結会計期間の△65.0億円の支出から支出額が増加した。これは主に有形及び無形固定資産の取得による支出が増加したためである。財務活動によるキャッシュ・フローは△65.8億円の支出となり、前中間連結会計期間の△105.8億円の支出から支出額が減少した。これは主に長期借入金の返済額が減少したことによる。結果として、現金及び現金同等物の中間期末残高は204.9億円となった。
配当
自己株式取得
株式会社平和堂の2026年2月期第2四半期決算は、厳しい経済環境下で増収増益を達成し、通期業績予想を据え置いたことから、投資家にとっては概ねポジティブな内容と評価できる。特に、小売事業が堅調に推移し、営業収益が「2030年定量目標」に向けて先行して向上している点は、今後の成長期待を高める要素である。
同社は「地域密着ライフスタイル総合(創造)企業」を目指す中長期ビジョンに基づき、「第五次中期経営計画」の重点戦略を着実に実行している。子育て世代ニーズへの対応としてHOPアプリ会員数が105万人に達し、HOPマネーの利用環境も拡大していることは、顧客基盤の強化とデジタル戦略の進展を示しており、将来的な収益安定化に寄与するだろう。また、滋賀県内でのドミナント戦略強化や、株式会社丸善からの店舗承継によるエリア戦略の再構築は、地域における競争優位性をさらに高める可能性を秘めている。
一方で、物価上昇に伴う人件費、建築資材、光熱費などのコスト上昇は引き続き懸念材料であり、生産性改善を含むコスト構造改革の推進が重要となる。株式会社ベストーネの新デリカセンター稼働による増収増益はポジティブだが、株式会社ナショナルメンテナンスの減収減益や、外食事業の一部での減益など、一部事業では課題も残る。
財務面では、総資産が減少したものの、純資産は増加し自己資本比率も62.3%と健全な水準を維持している。自己株式取得による株主還元強化の姿勢も評価できる。
今後の見通しとしては、同社が掲げる「2030年定量目標」達成に向けた進捗が注目される。特に、営業利益率4.5%以上、ROE8%といった利益率目標の達成には、コスト構造改革のさらなる推進と、各事業セグメントでの収益性向上が不可欠となる。小売事業の好調を維持しつつ、小売周辺事業やその他事業の収益改善、そしてM&Aや事業再編によるシナジー効果の最大化が、企業価値向上への鍵となるだろう。投資家としては、足元の堅調な業績と戦略の着実な実行を評価しつつ、今後の利益率改善とキャッシュフローの創出状況を注視していく必要がある。
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