株式会社クシムの2025年10月期第3四半期連結累計期間の決算は、主要子会社の連結除外により、極めて厳しい業績となった。売上高は前年同期比で大幅に減少し、引き続き多額の営業損失、経常損失、純損失を計上している。特に、親会社株主に帰属する四半期純損失は△10.54億円と、前年同期の△8.14億円からさらに拡大した。
これは、2025年2月3日付で連結子会社であった株式会社ZEDホールディングスおよびその子会社群(株式会社Zaif、株式会社クシムソフト、チューリンガム株式会社、株式会社web3テクノロジーズ、Digital Credence Technologies Limited)の株式を譲渡したことによる連結範囲の変更が主因である。この譲渡は会社法467条に基づく株主総会の特別決議の承認を得ていないため、当社は違法無効と認識し、現在、複数の法的手続きを進めている状況にある。
このような状況から、継続企業の前提に重要な疑義が生じており、業績予想も困難であると判断されている。投資家視点では、事業基盤の喪失、多額の損失継続、継続企業の前提に関する不確実性、そして複数の訴訟を抱える状況は極めてネガティブな決算発表である。株主還元については、2025年10月期の年間配当予想は0.00円と発表されており、直近の予想からの修正はない。自己株式取得や株主優待に関する新たな発表は確認されていない。
2025年10月期第3四半期連結累計期間の全社業績は、主要子会社の連結除外により、売上高が前年同期比で大幅に減少し、各利益項目も引き続き赤字を計上した。売上高は0.19億円となり、前年同期の11.68億円から98.3%減と大幅な落ち込みを見せた。EBITDAは△3.72億円、営業利益は△3.73億円、経常利益は△3.57億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は△10.54億円となり、いずれも前年同期と比較して損失幅が縮小したものの、依然として多額の損失が継続している。
指標 | 2025年10月期3Q(累計) | 2024年10月期3Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 0.19億円 | 11.68億円 | △98.3% |
EBITDA | △3.72億円 | △6.45億円 | 42.3% |
営業利益 | △3.73億円 | △7.86億円 | 52.6% |
経常利益 | △3.57億円 | △8.01億円 | 55.4% |
純利益 | △10.54億円 | △8.14億円 | △29.5% |
当社は、以前は「ブロックチェーンサービス事業」、「システムエンジニアリング事業」、「インキュベーション事業」を展開していた。しかし、2025年2月3日付で連結子会社であった株式会社ZEDホールディングスおよびその子会社群(株式会社Zaif、株式会社クシムソフト、チューリンガム株式会社、株式会社web3テクノロジーズ、Digital Credence Technologies Limited)の株式を譲渡したことにより、これらの子会社が連結範囲から除外された。これにより、旧来のセグメント事業は2025年度決算への算入が不可能となっている。
現在、当社はホールディングス機能を有する株式会社クシムおよび事業子会社の中間持株会社としての機能を有していた株式会社クシムインサイトの二社のみで連結決算を報告している。同時に、2025年6月より「ブロックチェーン開発・コンサルティング事業」を主力事業として再立ち上げ、育成を進めている。当第3四半期連結累計期間におけるブロックチェーンサービス事業の売上高は0.18億円であり、全社売上高のほぼ全てを占めている。これは、過去に培った知見を活用し、ブロックチェーン領域での事業展開を進める方針に基づくものである。しかし、事業再編の途上にあり、旧事業からの大幅な売上減少を補うには至っておらず、事業の再構築が急務となっている。
当社は、2025年2月3日付で、連結子会社であった株式会社ZEDホールディングス(以下「ZEDHD」)の株式を株式会社カイカフィナンシャルホールディングスに対する借入金の代物弁済として譲渡した。これにより、ZEDHDおよびその子会社である株式会社Zaif、株式会社クシムソフト、チューリンガム株式会社、株式会社web3テクノロジーズ、Digital Credence Technologies Limitedの計6社が連結範囲から除外された。この結果、当社はこれらの子会社に対する実質的な経営支配権を喪失し、2025年10月期以降の連結損益計算書において売上高が大幅に減少する見込みである。
しかし、当社は、この株式譲渡が会社法467条に基づく株主総会の特別決議の承認を得ていないことから違法無効であると認識しており、現在、法的手続きを進めている。具体的には、2025年8月19日付でZEDHD、カイカFHD、ネクスグループを被告として、新株発行無効等請求訴訟を大阪地方裁判所に提起した。また、2025年8月20日付でZEDHDが当社に対し、ZEDHD株主権不存在確認訴訟を東京地方裁判所に提起している。さらに、当社は2025年8月19日付でZEDHD、カイカFHD、ネクスグループを債務者とした議決権行使許容・禁止の仮処分を大阪地方裁判所に申し立て、2025年8月28日付で仮処分決定に係る異議申し立てへの抗告を大阪地方裁判所に提起している。
これらの法的手続きの進捗は、当社の事業構造および業績に重大な影響を与える可能性がある。また、当社は2025年9月10日付で、旧経営陣(中川博貴元代表取締役会長、伊藤大介元代表取締役社長、松崎祐之元取締役ら)に対し、会社法423条1項に基づく損害賠償請求を理由とした役員責任追及訴訟を提起する方針を取締役会で決議した。この訴訟の金額は、顧問弁護士と協議の上、決定される予定である。これらの動向は、当社の事業再編と企業価値に大きな影響を及ぼす重要な要素である。
進行期の全社業績予想については、直近に公表されている業績予想からの修正はない。しかし、実質的な経営支配権を喪失した事業子会社による連結業績への影響を見積もることが不可能であるため、業績の予想は極めて難しいと判断している。このため、通期業績予想の数値は開示されていない。
当第3四半期連結会計期間末における総資産は4.88億円となり、前連結会計年度末の865.38億円から大幅に減少した。これは主に、利用者暗号資産、預託金、現金及び預金、自己保有暗号資産の減少により、流動資産が852.03億円減少し2.67億円となったことが要因である。固定資産も投資有価証券の減少などにより8.46億円減少し2.20億円となった。
負債合計は0.57億円となり、前連結会計年度末の851.06億円から大幅に減少した。流動負債は預り暗号資産や預り金の減少により833.93億円減少し0.54億円となった。固定負債も長期借入金の減少などにより16.55億円減少し0.02億円となった。
純資産は4.30億円となり、前連結会計年度末の14.31億円から10.01億円減少した。これは主に利益剰余金の減少によるものである。自己資本比率は前連結会計年度末の1.6%から86.6%へと大幅に改善したが、これは資産と負債が大幅に減少した結果であり、事業規模の縮小を反映している。キャッシュフロー計算書は作成されていない。
株主還元については、以下の通りである。
株式会社クシムの今後の見通しは、極めて不透明であり、投資家にとっては非常にネガティブな状況が継続すると判断される。当期に発生した臨時的な経営交代の過程で主要な子会社や資産が譲渡され、事業や人材を喪失した結果、売上高は前年同期に比し著しく減少し、重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する四半期純損失を計上している。この状況は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるものであり、企業価値は大幅に毀損している可能性が高い。
当社グループは、この状況を解消するため、不当に譲渡された子会社などの取り戻しに向けた法的な対応を進めるとともに、抜け殻となった組織の再整備、収益基盤の早期確立、企業価値の向上に努める方針である。また、これらの実施に必要な資金調達も早急に検討している。しかし、これらの対応策は実施途上であり、利害関係者の意向に左右されるため、予定通りに進まない場合等には、現状からの脱却ができないという不確実性が存在する。
現在進行中の複数の法的手続き(新株発行無効等請求訴訟、株主権不存在確認訴訟、議決権行使許容・禁止の仮処分、仮処分決定に係る異議申し立てへの抗告、旧経営陣に対する役員責任追及訴訟)は、当社の事業構造や財務状況に大きな影響を与える可能性があり、その結果次第で企業存続の可否すら左右されかねない。特に、連結業績予想については、実質的な経営支配権を喪失した事業子会社による連結業績への影響を見積もることが不可能であるため、業績予想は極めて難しいと判断されており、具体的な数値目標が示されていない点は、投資家にとって将来の事業計画を評価する上で大きな障害となる。
このような状況下では、事業の再構築や収益性の回復には相当な時間と労力を要すると見込まれる。法的手続きの長期化や不利な結果は、さらなる企業価値の毀損を招くリスクがある。投資家は、これらの不確実性を十分に考慮し、今後の法的手続きの進捗、新たな収益基盤の確立状況、資金調達の成否を慎重に見極める必要がある。現時点では、ポジティブな要素は少なく、企業価値の回復には極めて高いハードルが存在すると言える。
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