象印マホービン株式会社の2025年11月期第3四半期連結累計期間の決算は、売上高が前年同期比3.0%増の676.87億円、営業利益が同24.2%増の55.60億円、経常利益が同14.8%増の61.07億円と増収増益を達成した。しかし、親会社株主に帰属する四半期純利益は、前年同期の固定資産売却益の反動により同15.1%減の41.37億円となった。国内市場では高単価商品が好調に推移し、円安による輸入コスト上昇に対する価格転嫁も進んだことで利益率が改善した。一方で、海外市場、特に中国での販売が大幅に減少したことが課題として挙げられる。全体としては、国内事業の堅調さと利益率改善が評価されるものの、海外事業の不振と特別利益の反動減による純利益の減少は投資家にとって懸念材料となる可能性がある。配当については、2025年11月期の年間配当予想を前年実績の40.00円から64.00円に増配する計画であり、株主還元への意欲はポジティブな要素である。
2025年11月期第3四半期連結累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比3.0%増の676.87億円、営業利益が同24.2%増の55.60億円、経常利益が同14.8%増の61.07億円と堅調な増収増益を記録した。これは、国内での高単価商品の販売好調に加え、円安に伴う輸入コスト上昇に対する価格転嫁が奏功した結果である。しかし、前年同期に計上された物流倉庫移転に伴う固定資産売却益の反動により、親会社株主に帰属する四半期純利益は同15.1%減の41.37億円となった。海外売上高は前年同期比8.4%減となり、特に中国市場での大幅な減少が全体の成長を抑制する要因となった。
指標 | 2025年11月期3Q(累計) | 2024年11月期3Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 676.87億円 | 657.35億円 | 3.0% |
営業利益 | 55.60億円 | 44.78億円 | 24.2% |
経常利益 | 61.07億円 | 53.17億円 | 14.8% |
純利益 | 41.37億円 | 48.74億円 | △15.1% |
調理家電製品は全社売上高の約72.8%を占める主要セグメントであり、売上高は前年同期比5.1%増の492.88億円となった。国内では、最上位機種である圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き」が引き続き好調に推移し、炊飯ジャー全体の売上を牽引した。また、オーブンレンジ「EVERINO」やオーブントースター、ホットプレート、電気ケトルといった製品も好調に推移し、国内市場での堅調な需要を捉えた。海外では、台湾でオーブンレンジ「EVERINO」が好調だったほか、北米と台湾で炊飯ジャーが前年実績を上回った。しかし、中国市場では炊飯ジャーや電気ポットの販売が減少し、海外全体では前年実績を下回る結果となった。国内の高単価製品への需要は引き続き堅調であるものの、中国市場の低迷が海外事業の成長を阻害する要因となっている。
リビング製品は全社売上高の約18.8%を占め、売上高は前年同期比10.6%減の127.34億円となった。国内では、ステンレススープジャーの販売が好調だったものの、主力製品であるステンレスボトルが減少したことで、国内全体では前年実績を下回った。海外市場でも、主力の中国市場でステンレスボトルやステンレスポットの販売が苦戦し、全体として前年実績を下回る結果となった。このセグメントは、国内・海外ともにステンレスボトルの販売不振が響き、厳しい状況が続いている。特に中国市場での苦戦は、同社の海外戦略において重要な課題として認識される。
生活家電製品は全社売上高の約5.5%を占め、売上高は前年同期比31.3%増の37.30億円と大幅な増収を達成した。国内では、需要の高まりを受けて加湿器の販売が好調だったほか、食器乾燥器や空気清浄機、ふとん乾燥機も好調に推移し、前年実績を大きく上回った。これは、季節家電や衛生関連製品への需要が国内で高まったことを示唆している。海外では、加湿器が韓国で減少したことで前年実績を下回ったものの、国内の好調がセグメント全体の成長を牽引した。
その他製品の売上高は、前年同期比9.4%増の19.35億円となった。
本決算資料において、事業/資本提携やM&A等の具体的な動向に関する記載はない。
2025年11月期の連結業績予想は、第3四半期連結累計期間の業績状況を鑑みても、2025年7月1日に公表された内容から修正はなく、据え置きとなった。現在の進捗率は売上高が75.2%、営業利益が79.4%、経常利益が81.4%、純利益が86.2%であり、各利益項目は売上高よりも高い進捗率を示している。これは、国内での高単価商品の販売好調と円安による価格転嫁が利益率改善に寄与しているためであり、通期目標達成に向けて順調に推移していると評価できる。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
---|---|---|
売上高 | 900.00億円 | 75.2% |
営業利益 | 70.00億円 | 79.4% |
経常利益 | 75.00億円 | 81.4% |
純利益 | 48.00億円 | 86.2% |
当第3四半期連結会計期間末の総資産は1,105.98億円となり、前連結会計年度末と比較して41.71億円減少した。負債は27.48億円減少し、純資産は14.23億円減少した。その結果、自己資本比率は前連結会計年度末の75.3%から1.6ポイント増加し76.9%となった。
総資産の減少は、主に流動資産が49.92億円減少したことによる。流動資産では、受取手形及び売掛金が49.16億円、商品及び製品が10.30億円減少した一方で、現金及び預金が9.94億円増加した。固定資産は8.21億円増加し、投資有価証券が10.12億円増加したことが主な要因である。
負債の減少は、流動負債が37.76億円減少したことによる。流動負債では、未払法人税等が18.99億円、1年内返済予定の長期借入金が15.00億円、賞与引当金が5.94億円減少したことが主な要因である。固定負債は10.27億円増加した。
純資産の減少は、その他有価証券評価差額金が8.63億円、利益剰余金が6.59億円増加した一方で、自己株式が33.82億円増加したことによる。
なお、当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。
配当
象印マホービン株式会社の今後の見通しは、国内事業の堅調さと海外事業の課題が混在する状況である。第3四半期連結累計期間において、国内では高単価の調理家電製品が好調に推移し、生活家電製品も需要増に支えられ大きく成長した。円安による輸入コスト上昇分を価格転嫁できたことも利益率改善に貢献しており、国内市場でのブランド力と製品競争力は引き続きポジティブな要素である。
一方で、海外事業、特に中国市場での販売不振は懸念材料である。調理家電製品、リビング製品ともに中国での販売が大幅に減少しており、今後の海外戦略の再構築が求められる。台湾や北米での一部製品の好調はあるものの、中国市場の規模を考慮すると、この地域の回復が全体の成長を左右する重要な鍵となる。
通期業績予想は据え置きであり、第3四半期までの進捗率は売上高75.2%、営業利益79.4%、経常利益81.4%、純利益86.2%と、利益項目は売上高を上回る進捗を見せている。これは、国内事業の好調と利益率改善が通期目標達成に寄与する可能性が高いことを示唆している。為替レートの前提を1ドル=150円と設定しており、現在の為替水準を考慮すると、為替変動による大きな下振れリスクは限定的であると判断できる。
中期3ヵ年計画『SHIFT』の実行を通じて、暮らしと社会の課題解決を目指すソリューションブランドへの移行を進めているが、その具体的な成果が海外事業の回復にどう繋がるかが注目される。投資家目線では、国内事業の安定性と増配計画はポジティブな要素であるものの、海外事業の不透明感、特に中国市場の回復が遅れる場合は、今後の成長性に影響を与える可能性がある。したがって、国内の堅調な業績と株主還元姿勢は評価できるが、海外事業の動向、特に中国市場の回復状況が企業価値評価の重要なポイントとなるだろう。
• 提供されるレポートに誤った情報が含まれる場合があります。正確性や品質を保証するものではないため、決算短信全文を併せてご確認ください。
• 提供されるレポートに投資を推奨するようにも読み取れる内容が含まれる可能性がありますが、当社が投資を推奨するものではありません。投資に関する決定は、利用者ご自身の判断で行ってください。
• 決算短信についての訂正の開示があった場合でも、訂正の内容はレポートに反映されませんので、最新の適時開示をご参照ください。また、提供されるレポートの内容は予告なく変更されることがありますのでご注意ください。
• 本レポートにより提供される内容について、当社は、その信頼性、正確性、最新性、完全性、有効性、特定目的への適合性、有用性(有益性)、継続性について保証しません。これらに起因してお客様が何らかの損害を被ったとしても、当該損害につき責任を負わないものとします。
• 提供されるレポートを利用する際は、著作権法、商標法、金融商品取引法などの法令に違反しないようご注意ください。
• 提供されるレポートに関する権利は当社に帰属します。これらの情報を第三者に提供する目的での転用、複製、販売、加工、再利用および再配信は固く禁じます。