株式会社魚力の2026年3月期第1四半期連結累計期間の決算は、売上高が前年同期比16.9%増の101億72百万円と大幅な増収を達成した一方、営業利益は同34.9%減の2億34百万円、経常利益は同26.4%減の4億33百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同24.0%減の2億96百万円と、利益面では大幅な減益となった。これは、2025年3月に株式会社最上鮮魚を連結子会社化したことが売上高の増加に大きく寄与したものの、物流コストや人件費の増加が利益を圧迫したためである。既存店売上高は前年を上回ったが、利益率の悪化が顕著に見られる。株主還元については、年間配当予想は中間26円、期末26円の合計52円で据え置きとなっている。全体として、売上高の成長はポジティブな要素であるものの、利益の減少幅が大きく、投資家目線ではややネガティブな決算と評価できる。
2026年3月期第1四半期連結累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比16.9%増の101億72百万円と大幅な増収を記録した。これは主に、2025年3月に連結子会社化した株式会社最上鮮魚の売上が寄与したことや、既存店売上高の増加による。しかしながら、営業利益は同34.9%減の2億34百万円、経常利益は同26.4%減の4億33百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同24.0%減の2億96百万円と、利益は大幅に減少した。物流コストや人件費の増加が売上総利益率の低下を招き、販売管理費の増加が利益を圧し下げたことが主な要因である。
指標 | 2026年3月期1Q(累計) | 2025年3月期1Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 101.72億円 | 86.98億円 | 16.9% |
営業利益 | 2.34億円 | 3.60億円 | △34.9% |
経常利益 | 4.33億円 | 5.88億円 | △26.4% |
純利益 | 2.96億円 | 3.90億円 | △24.0% |
小売事業が占める全社売上割合は約87.8%である。当第1四半期連結累計期間の小売事業は、売上高が前年同期比20.4%増の89億33百万円と大幅な増収となった。これは、既存店の売上増加に加え、新たに連結子会社となった株式会社最上鮮魚の売上が大きく寄与したためである。増収に伴い売上総利益額は増加したものの、物流コストや人件費の大幅な伸びなどにより、仕入コストが増加し売上総利益率は低下した。結果として、販売管理費の増加額が売上総利益の増加額を上回り、営業利益は前年同期比12.3%減の3億66百万円と減益となった。物流コストの増加に対応するため、物流拠点の変更や配送ルートの組み替えなどの物流改革に着手している。
飲食事業が占める全社売上割合は約4.0%である。当第1四半期連結累計期間の飲食事業は、売上高が前年同期比9.7%増の4億11百万円、営業利益が前年同期比47.0%増の10百万円と増収増益を達成した。原材料費などの調達コストの上昇を受け、メニューや価格設定の見直しを適時適切に行った結果、来店客数は伸び悩んだものの売上高は前年を上回った。また、店舗オペレーションの見直しや物流の合理化を含む構造改革に取り組んだことで、粗利益額が増加し、人件費をはじめとする店舗運営コストを吸収できた。限られた経営資源の効率的な活用を図るため、2025年6月に「魚力海鮮寿司花小金井店」を退店している。
卸売事業が占める全社売上割合は約7.9%である。当第1四半期連結累計期間の卸売事業は、売上高が前年同期比8.7%減の8億9百万円、営業利益が前年同期比10.2%減の7百万円と減収減益となった。これは、株式会社最上鮮魚が連結子会社へ異動したことにより、今期から魚力商事株式会社から同社向けの売上がグループ間取引として連結消去されたことが大きく影響している。国内向け取引は、飲食店舗向け売上が好調に推移した一方、スーパーマーケットや地方荷受向けの販売が苦戦した。海外向け取引は、ドバイの高級ホテル・レストラン向けの輸出が増加したことや、タイの合弁会社CP-Uoriki Co., Ltd.が運営する小売店舗向けの輸出が伸びたことにより、海外向け取引全体では前年を上回る売上を上げている。
株式会社魚力は、2025年3月に持分法適用関連会社であった株式会社最上鮮魚に対する出資比率を引き上げ、連結子会社化した。この連結化により、当第1四半期連結会計期間より、最上鮮魚の売上高およびセグメント利益が魚力グループの「小売事業」、「飲食事業」、「卸売事業」、「その他」の各セグメントに含まれることになった。これにより、グループ全体の売上高は大幅に増加したが、一方で、最上鮮魚向けの売上がグループ間取引として連結消去されたため、卸売事業の売上高は前年同期を下回る結果となった。このM&Aは、魚力グループの事業規模拡大と国内事業の成長戦略の一環として位置づけられる。
進行期の全社業績予想は、直近の業績動向等を踏まえ、第2四半期連結累計期間の連結業績予想が修正された。通期業績予想に対する第1四半期連結累計期間の実績進捗率は、売上高が約23%、営業利益が約13%、経常利益が約21%、純利益が約26%である。売上高は順調な進捗を見せる一方、利益の進捗は売上高に比べてやや遅れている状況にある。
指標 | 通期予想 | 進捗率(1Q) |
---|---|---|
売上高 | 443.00億円 | 22.96% |
営業利益 | 18.20億円 | 12.86% |
経常利益 | 20.90億円 | 20.72% |
純利益 | 11.60億円 | 25.52% |
当第1四半期連結会計期間末の総資産は234億37百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億74百万円増加した。これは主に、現金及び預金が1億18百万円、商品及び製品が90百万円増加したことによる流動資産の増加と、投資有価証券が1億57百万円増加したことによる固定資産の増加が要因である。負債合計は56億15百万円で、前連結会計年度末に比べ3億99百万円増加した。これは支払手形及び買掛金、賞与引当金の増加が主因である。純資産合計は178億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ74百万円増加した。その他有価証券評価差額金が1億46百万円増加したことが主な要因である。自己資本比率は75.1%と、前連結会計年度末の76.3%からわずかに低下したものの、引き続き健全な財務状態を維持している。なお、当第1四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。
配当
株式会社魚力の2026年3月期第1四半期決算は、売上高の大幅な増加と利益の大幅な減少という二面性を示した。売上高の成長は、株式会社最上鮮魚の連結子会社化が大きく寄与しており、事業規模の拡大という点ではポジティブな進展である。しかし、営業利益以下が大幅な減益となったことは、投資家にとって懸念材料となる。特に、物流コストや人件費の増加が利益率を圧迫している状況は、今後の収益性改善に向けた課題として認識される。
セグメント別に見ると、小売事業は増収減益、飲食事業は増収増益、卸売事業は減収減益と、各事業の状況は異なる。飲食事業の増益は、原材料費高騰に対するメニュー・価格設定の見直しや店舗運営の効率化が奏功した結果であり、今後の利益改善に向けた好材料と捉えられる。一方、小売事業の減益は、売上増をコスト増が上回った結果であり、物流改革などの取り組みが早期に効果を発揮し、利益率改善につながるかが注目される。卸売事業の減収は、最上鮮魚の連結化に伴うグループ間取引の消去が主因であり、実質的な事業活動の悪化とは異なるものの、連結ベースでの売上構成に影響を与えている。
通期業績予想は修正されたが、その具体的な内容が本資料からは不明であるため、投資家は今後の詳細な情報開示を待つ必要がある。第1四半期時点での利益進捗率は売上高に比べて低く、通期目標達成に向けては、残りの四半期で利益を大きく伸ばす必要がある。コスト構造の改善や効率化の取り組みが、今後の業績にどのように反映されるかが、企業価値評価の重要なポイントとなる。
配当予想は据え置きであり、株主還元への姿勢は維持されている。しかし、利益の減少が続く場合、将来的な配当政策に影響を与える可能性も考慮する必要がある。全体として、今回の決算発表は、売上成長の勢いはあるものの、利益面での課題が顕在化したものであり、投資家にとっては慎重な評価が求められる。今後の見通しとしては、コスト削減策の進捗と、それによる利益率の改善が最も重要な焦点となる。
• 提供されるレポートに誤った情報が含まれる場合があります。正確性や品質を保証するものではないため、決算短信全文を併せてご確認ください。
• 提供されるレポートに投資を推奨するようにも読み取れる内容が含まれる可能性がありますが、当社が投資を推奨するものではありません。投資に関する決定は、利用者ご自身の判断で行ってください。
• 決算短信についての訂正の開示があった場合でも、訂正の内容はレポートに反映されませんので、最新の適時開示をご参照ください。また、提供されるレポートの内容は予告なく変更されることがありますのでご注意ください。
• 本レポートにより提供される内容について、当社は、その信頼性、正確性、最新性、完全性、有効性、特定目的への適合性、有用性(有益性)、継続性について保証しません。これらに起因してお客様が何らかの損害を被ったとしても、当該損害につき責任を負わないものとします。
• 提供されるレポートを利用する際は、著作権法、商標法、金融商品取引法などの法令に違反しないようご注意ください。
• 提供されるレポートに関する権利は当社に帰属します。これらの情報を第三者に提供する目的での転用、複製、販売、加工、再利用および再配信は固く禁じます。