株式会社アドヴァングループの2026年3月期第2四半期(中間期)連結決算は、売上高が前年同期比で減少したものの、為替予約評価益の計上により経常利益および親会社株主に帰属する中間純利益が大幅に増加した。売上高は82.8億円(前年同期比△3.9%減)と減少したが、営業利益は10.7億円(同△19.3%減)となった。しかし、為替予約評価益16.0億円を営業外収益に計上した結果、経常利益は33.8億円(同431.2%増)、親会社株主に帰属する中間純利益は20.1億円(同269.4%増)と大きく伸長した。
財務状態では、資産総額は前連結会計年度末に比べ19.8億円減の783.1億円、負債総額は25.4億円減の238.9億円となり、純資産は5.6億円増の544.2億円で、自己資本比率は69.5%に改善した。キャッシュフローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが4.5億円の収入(前年同期は16.9億円の支出)とプラスに転換した点が注目される。投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはそれぞれ22.7億円、31.6億円の支出となった。
株主還元については、2026年3月期の年間配当予想は中間20.00円、期末20.00円の合計40.00円で据え置き。また、自己株式取得に11.7億円を支出した。
全体として、本決算発表は売上高の減少というネガティブな側面があったものの、為替益による利益の大幅な押し上げと、コスト効率改善の取り組み、財務体質の健全化、そして営業キャッシュフローのプラス転換は投資家にとってポジティブな要素と評価できる。ただし、為替益は一時的な要因であるため、本業の売上回復と収益性向上が今後の課題となる。
2026年3月期第2四半期(中間期)連結累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比で減少したものの、為替予約評価益の計上により経常利益と親会社株主に帰属する中間純利益が大幅に増加した。大型プロジェクトの下期への遅延や在庫の健全化に伴う棚卸資産廃棄損の計上が売上高と粗利率の低下に影響したが、新入社員の積極採用や昇給・昇格といった戦略的な人への投資を進めつつ、組織のスリム化による人件費削減を実行し、コスト効率の改善に努めた。為替予約評価益16.0億円を営業外収益に計上したことが、経常利益および親会社株主に帰属する中間純利益の飛躍的な増加に大きく貢献した。
指標 | 2026年3月期2Q(累計) | 2025年3月期2Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 82.8億円 | 86.2億円 | △3.9% |
売上総利益 | 32.2億円 | 34.3億円 | △6.1% |
営業利益 | 10.7億円 | 13.3億円 | △19.3% |
経常利益 | 33.8億円 | 6.4億円 | 431.2% |
純利益 | 20.1億円 | 5.4億円 | 269.4% |
建材関連事業は、全社売上高の約99.1%を占める主要事業である。当中間期においては、大型プロジェクトの下期への遅延が売上高に影響を与え、前年同期比で売上高が減少した。また、在庫の健全化を進める過程で棚卸資産廃棄損を計上したことにより、粗利率が低下した。しかし、将来の成長に向けた新入社員の積極採用や昇給・昇格といった戦略的な人への投資を進めつつ、組織のスリム化による人件費削減を実行し、コスト効率の改善に努めた。これにより、売上高は82.1億円、セグメント利益は12.4億円を計上した。市場環境としては、賃金と物価の上昇による景気拡大への期待がある一方で、地政学的リスクの継続や世界経済の不確実性により、先行き不透明な状況が継続している。
不動産賃貸事業は、全社売上高の約0.9%を占める事業である。当中間期における外部顧客への売上高は0.7億円を計上し、セグメント利益は6.2億円となった。この事業においても、全社的なコスト効率改善の取り組みが利益に貢献している。不動産賃貸市場は、経済全体の動向や金利環境、オフィス需要の変化など様々な要因に影響を受けるが、安定的な収益源としてグループ全体のポートフォリオに貢献している。
その他事業は、当社商品の入出庫事業などを含んでいる。当中間期におけるセグメント利益は1.9億円を計上した。この事業も、全社的なコスト効率改善の取り組みの恩恵を受けている。
本中間期決算短信において、事業/資本提携やM&Aに関する具体的な動向の記載はない。
進行期の全社業績予想は、直近に公表された内容から修正はなく、据え置きとなった。売上高は185.0億円、営業利益は28.2億円を見込んでいる。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益については、為替相場に影響を受ける為替差損益や為替予約評価損益の見通しが困難であるため、業績予想は記載されていない。当中間期までの実績に対する進捗率は、売上高で44.8%、営業利益で37.9%となっている。売上高はほぼ計画通りに進捗しているが、営業利益はやや遅れが見られる。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
---|---|---|
売上高 | 185.0億円 | 44.8% |
営業利益 | 28.2億円 | 37.9% |
当中間期末における資産総額は783.1億円となり、前連結会計年度末に比べ19.8億円減少した。これは主に現金及び預金の減少による。負債総額は238.9億円と前連結会計年度末から25.4億円減少し、純資産は544.2億円と5.6億円増加した。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の67.1%から69.5%へと改善し、財務健全性が向上した。
キャッシュフローの状況では、営業活動によるキャッシュ・フローが4.5億円の収入となり、前年同期の16.9億円の支出からプラスに転換した。これは主に税金等調整前中間純利益の増加と売上債権及び契約資産の減少によるが、為替予約評価益の減少や法人税等の支払いが影響した。投資活動によるキャッシュ・フローは22.7億円の支出となり、定期預金の預入や有形固定資産、投資有価証券の取得が主な要因である。財務活動によるキャッシュ・フローは31.6億円の支出となり、長期借入金の返済、自己株式取得、配当金の支払いが主な内訳である。現金及び現金同等物の期末残高は45.9億円となった。
配当
自己株式取得
株式会社アドヴァングループの2026年3月期第2四半期決算は、売上高の減少という課題を抱えつつも、為替予約評価益の計上により利益面で大幅な改善を見せた。投資家目線では、この決算は複合的な評価となる。
ポジティブな側面としては、まず為替予約評価益による経常利益と純利益の飛躍的な増加が挙げられる。これは一時的な要因ではあるものの、企業の収益力を大きく押し上げ、財務体質の改善に貢献した。自己資本比率の向上や営業キャッシュフローのプラス転換も、財務健全性の強化を示す重要な指標であり、企業の安定性を評価する上で好材料となる。また、組織のスリム化や人件費削減といったコスト効率改善の取り組みは、本業の収益性向上に繋がる可能性があり、今後の利益率改善に期待が持てる。自己株式取得の実施は、株主還元への積極的な姿勢を示すものであり、株主価値向上への意識が高いと評価できる。
一方で、ネガティブな側面として、本業である売上高の減少は懸念材料である。大型プロジェクトの遅延や棚卸資産廃棄損は一時的な要因と説明されているが、これが構造的な問題に発展しないか、今後の売上回復の具体的な道筋が投資家にとっては重要となる。特に、経常利益と純利益の通期業績予想が為替変動リスクを理由に非開示である点は、将来の収益の不確実性を高め、投資判断を難しくする要因となる。為替益に大きく依存した利益構造は、為替相場の変動によって大きく業績が左右されるリスクを内包している。
今後の見通しとしては、為替益に頼らない本業の売上回復と収益性向上が最重要課題となる。大型プロジェクトの進捗状況や、在庫戦略の改善による粗利率の回復が注目される。また、コスト効率改善の取り組みを継続し、持続的な利益体質を確立できるかが企業価値向上の鍵を握る。為替変動リスクへの対応策や、非開示となっている経常利益・純利益の業績予想に関する情報開示が待たれる。投資家は、一時的な為替益による利益増だけでなく、本業の成長性と安定性を重視し、今後の動向を注視していく必要がある。
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