ナガイレーベン株式会社の2025年8月期連結決算は、売上高が前年同期比3.5%増の169.8億円と増収を達成した。しかし、原材料価格の高騰や人件費の上昇が響き、営業利益は35.8億円(△10.5%減)、経常利益は37.1億円(△9.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は25.7億円(△8.8%減)と減益となった。特に、第4四半期において大型案件の納入が翌期にずれ込んだことが売上高の伸びを鈍化させ、利益を圧迫した。株主還元については、2025年8月期の期末配当金は普通配当60円00銭に記念配当40円00銭を加えた100円00銭となり、年間配当金は30.5億円に増加し、配当性向は120.1%に達した。また、当連結会計年度中に合計21.8億円の自己株式取得を実施しており、積極的な株主還元姿勢を示している。全体としては、厳しい市場環境下での増収は評価できるものの、利益率の悪化と高すぎる配当性向は投資家にとって懸念材料となる可能性がある。本決算発表は、増収ながら減益という結果であり、今後の利益改善策の進捗が注目される。
2025年8月期の連結業績は、売上高が前年同期比3.5%増の169.8億円と増収を達成した。これは、主力のコア市場における高機能商品群の堅調な推移や、周辺市場での患者ウェア・手術ウェアの新規案件獲得が寄与した。しかし、原材料価格の高騰、最低賃金引き上げに伴う人件費上昇、海外委託工場の加工賃引き上げ、航空便活用による物流費増加、円安の継続などが原価を押し上げ、売上総利益率は前年同期比3.3ポイントダウンの39.5%となった。その結果、営業利益は35.8億円(△10.5%減)、経常利益は37.1億円(△9.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は25.7億円(△8.8%減)と、いずれも減益を計上した。
指標 | 2025年8月期(通期) | 2024年8月期(通期) | 前年同期比 |
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売上高 | 169.8億円 | 164.1億円 | 3.5% |
営業利益 | 35.8億円 | 40.0億円 | △10.5% |
経常利益 | 37.1億円 | 40.7億円 | △9.0% |
純利益 | 25.7億円 | 28.2億円 | △8.8% |
ナガイレーベン株式会社はメディカルウェア等の製造・販売の単一事業であるため、セグメント別の記載は省略されている。しかし、市場別の販売状況が報告されており、以下の通りである。
コア市場の売上高は119.9億円で、前年同期比3.1%増となった。主力の高機能商品群は第3四半期までは順調に推移したものの、第4四半期に納入予定だった大型案件が翌期にずれ込んだため、通期の売上高は計画を下回った。この市場では、高付加価値の新商品群および低価格市場の海外一貫戦略商品の市場浸透を図る方針である。また、高感覚のハイエンド商品群や高機能の高付加価値商品群の企画開発を強化し、販促活動を強化することで買い替え需要を喚起する。時代の流れに即した新しい販売チャネルの構築にも経営資源を投入し、市場深耕を目指す。
周辺市場の売上高は47.6億円で、前年同期比5.7%増と堅調に推移した。患者ウェアでは高付加価値商品への移行が順調に進み、手術ウェアでは新規案件の獲得が進展したことが増収に貢献した。この市場では、患者ウェアにおいて利用者の視点に立った高感度・高機能商品の開発と市場投入を進め、市場の成長を享受する。手術ウェアにおいては、医療廃棄物削減という医療機関の課題に対応するため、米国スタンダードテキスタイル社との技術提携による再利用可能な環境対策医療資材商品「コンペルパック」の市場浸透に注力し、シェア拡大を図る。
海外市場の売上高は2.2億円で、前年同期比15.1%減となった。売上規模が小さいことに加え、第4四半期に予定していた案件の入札遅延が発生したことが大きく影響し、減収となった。海外市場では、台湾での洗濯アウトソーシングの普及とEC直販モデルの確立を通じて事業基盤の拡充を進める。また、韓国ではソウル支店の設立による直接参入を推進し、収益の一層の拡大を図る方針である。東アジアを中心に販売活動を行い、国内で培ったノウハウを活かしたビジネスモデルの海外展開により、業容拡大を目指す。
当連結会計年度において、特筆すべき事業/資本提携やM&A等の動向は確認されていない。ただし、中長期的な経営戦略として、周辺市場のシェア拡大のため、米国スタンダードテキスタイル社との技術提携による再利用可能な環境対策医療資材商品「コンペルパック」の市場浸透に注力している。これは、医療廃棄物削減という医療機関の大きな環境課題に対応するものであり、手術ウェア市場におけるシェア拡大を目指す取り組みである。
2026年8月期の連結業績予想は、売上高180.0億円、営業利益40.3億円、経常利益42.0億円、親会社株主に帰属する当期純利益29.0億円と、いずれも増収増益を見込んでいる。
指標 | 2026年8月期(予想) | 2025年8月期(実績) | 増減率 |
---|---|---|---|
売上高 | 180.0億円 | 169.8億円 | 6.0% |
営業利益 | 40.3億円 | 35.8億円 | 12.3% |
経常利益 | 42.0億円 | 37.1億円 | 13.3% |
純利益 | 29.0億円 | 25.7億円 | 12.7% |
当連結会計年度末の総資産は446.9億円となり、前期末から20.4億円減少した。流動資産は362.0億円で、現金及び預金の21.0億円減少、受取手形及び売掛金の4.3億円減少が主な要因である。一方、棚卸資産は4.6億円増加した。固定資産は84.9億円で、前期比0.5億円増加した。負債合計は33.7億円となり、前期末から6.6億円減少した。これは主に支払手形及び買掛金の5.3億円減少、未払法人税等の1.1億円減少による。純資産は413.2億円となり、前期末から13.8億円減少した。これは当期純利益25.7億円を計上したものの、自己株式取得による21.8億円の減少と配当金支払による18.9億円の減少が影響した。結果として、自己資本比率は前期末の91.4%から92.5%に上昇した。
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは21.8億円の獲得となった。これは税金等調整前当期純利益37.1億円や減価償却費2.8億円の増加要因があった一方で、法人税等の支払12.3億円や仕入債務の減少5.3億円、棚卸資産の増加4.6億円が減少要因となった。投資活動によるキャッシュ・フローは11.1億円の獲得となった。定期預金の払戻による収入210.0億円が主な増加要因である一方、有形固定資産の取得2.9億円、無形固定資産の取得1.0億円、定期預金の預入による支出195.0億円が減少要因となった。財務活動によるキャッシュ・フローは38.9億円の使用となった。これは配当金の支払額18.9億円と自己株式取得による支出額21.8億円が主な要因である。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は47.5億円となり、前期末から6.0億円減少した。
配当
自己株式取得
ナガイレーベン株式会社の今後の見通しは、増収を計画しているものの、厳しい市場環境が継続する中で利益率の改善が課題となる。2026年8月期の連結業績予想では、売上高180.0億円(前年同期比6.0%増)、営業利益40.3億円(同12.3%増)、経常利益42.0億円(同13.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益29.0億円(同12.7%増)と、増収増益を見込んでいる。
投資家目線では、この見通しはポジティブな要素とネガティブな要素を併せ持つ。ポジティブな点としては、医療・介護業界において診療報酬のプラス改定が期待され、経営環境の改善が見込まれること、そして売上高の成長を継続する計画である点が挙げられる。特に、コア市場では高付加価値の新商品群や海外一貫戦略商品の市場浸透、周辺市場では患者ウェアの高付加価値商品への移行推進や手術ウェアの新規展開、海外市場では台湾でのEC直販モデル確立や韓国での直接参入など、各市場で具体的な成長戦略を掲げている。生産面でも、海外素材の導入や海外生産への移行、生産設備の導入による効率的な原価低減、価格改定の浸透を通じて収益構造の強化を図る方針は評価できる。
一方で、ネガティブな点としては、インフレの進行による原材料価格のさらなる値上げ、物流費および人件費の上昇が予測されており、依然として厳しい市場環境が続くことが挙げられる。価格改定の実施が予定されているものの、その効果が利益率改善にどれだけ寄与するかは不透明である。また、2025年8月期決算では増収ながら減益となっており、利益率の改善が喫緊の課題である。株主還元は積極的だが、配当性向が120.1%と非常に高く、自己株式取得も多額に実施しているため、財務の健全性や成長投資とのバランスが今後の企業価値向上において重要となる。
総じて、ナガイレーベン株式会社は、厳しい事業環境下で増収を維持し、具体的な成長戦略と収益構造改善策を打ち出している。しかし、これらの施策が計画通りに進捗し、利益率の改善に繋がるかが今後の企業価値を左右する重要な要素となる。投資家にとっては、売上成長の可能性と利益率改善の不確実性を慎重に評価し、今後の進捗を注視する必要がある。
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