株式会社多摩川ホールディングスの2025年10月期第3四半期連結累計期間の決算は、売上高39.90億円、営業利益1.74億円、経常利益1.20億円、親会社株主に帰属する四半期純利益1.86億円を計上した。前年同期との比較は決算期変更のため行われていない。通期業績予想は売上高が下方修正されたものの、営業利益、経常利益、純利益は上方修正され、利益面での改善が示された。特に営業利益は期初予想を大幅に上回る進捗を見せ、利益率の改善が顕著である。継続企業の前提に関する重要事象は存在するものの、事業構造改革と利益改善の兆しが見られ、経営陣は重要な不確実性は認められないと判断している。株主還元については、2024年10月期末配当として1株当たり3.00円を実施し、2025年10月期も同額の期末配当を予想している。全体として、売上高は計画を下回る見込みであるものの、利益面での上方修正と事業基盤の強化に向けた取り組みは、投資家にとってポジティブな要素が多い決算発表であった。
2025年10月期第3四半期連結累計期間の全社業績は、売上高39.90億円、営業利益1.74億円、経常利益1.20億円、親会社株主に帰属する四半期純利益1.86億円を計上した。前年同期は決算期変更の経過期間に伴い7ヶ月決算となっており、比較対象となる第3四半期連結財務諸表が作成されていないため、前年同期比は記載されていない。売上高は通期予想に対して約73%の進捗だが、営業利益、経常利益、純利益は通期予想を既に上回る進捗率を示しており、利益面での好調が際立つ。これは、主力事業である電子・通信用機器事業における利益率改善と、再生可能エネルギー事業における売電収入の増加が主な要因である。
指標 | 2025年10月期3Q(累計) | 2024年10月期3Q(累計) | 前年同期比 |
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売上高 | 39.90億円 | 確認されていない | 確認されていない |
営業利益 | 1.74億円 | 確認されていない | 確認されていない |
経常利益 | 1.20億円 | 確認されていない | 確認されていない |
純利益 | 1.86億円 | 確認されていない | 確認されていない |
電子・通信用機器事業は、全社売上高の約89.62%を占める主要事業である。当第3四半期連結累計期間の売上高は35.76億円、セグメント利益は3.88億円を計上した。前年度に引き続き需要は安定的に増加しており、今後も堅調に推移すると予測されている。部品調達リードタイム長期化の影響を考慮し、取引先からの受注が先行した結果、受注高は42.49億円に達した。受注済み官公庁向け新規案件を契約納期通りに品質トラブルなく納入すること、即戦力のキャリア採用、生産フロア増床、測定器等の設備投資による生産能力増強、社内の情報セキュリティ強化、社員教育体制強化を今年度の取り組みとして推進している。事業領域の拡大を強力に推進し、自社開発品の提案強化を図ることで、事業全体としての安定した事業基盤確立を目指し、収益拡大に向けた活動を継続している。特に、5G関連市場や官公庁・公共関連市場での拡販営業に加え、新規市場や顧客開拓にも注力し、新たな領域の受注獲得を進めている。従来のアナログ高周波製品に加え、光関連製品、高速信号処理に不可欠なデジタル信号処理装置、大容量データの無線伝送に必要なミリ波帯、テラヘルツ帯域製品等、新規開拓顧客と新しい市場からの引き合いが増加している。移動体通信インフラ分野ではベトナム子会社でのインフラシェアリング機器の量産を進め、基地局インフラ推進機関や大手鉄道会社向けの新機種検討も開始する見込みである。6Gについては早稲田大学との産学共同研究で100G、300GHz無線システムの設計・製造が最終年度を迎え、Beyond5G向けフレキシブル導波管技術研究開発への参画など、将来を見据えた開発投資も積極的に進捗している。官公庁分野では国家予算増大に伴う新規引合い案件が増加し、中長期的な成長を見据えた大型で継続的なプロジェクトの受注活動に注力している。公共プロジェクト分野では、大手鉄道会社の老朽化した無線設備の更新需要に大きな期待を寄せ、最新技術を活用した列車用業務無線システムの提供に注力し、鉄道運行の安全性向上や運航効率改善に貢献することを目指している。ドローン監視装置は設計・開発が完了し、量産段階に移行しており、市場の需要に迅速に応えるための供給体制を整える準備を進めている。FA・計測分野では、半導体信頼性試験装置において、半導体産業が国策となり、先端プロセスへの投資が拡大することから、通信用半導体に不可欠な高周波技術を強みとした製品開発、拡販活動を強化している。
再生可能エネルギー事業は、全社売上高の約10.38%を占める。当第3四半期連結累計期間の売上高は4.14億円、セグメント利益は0.60億円を計上した。銀行による協調融資やサステナブル融資の資金を活用し、太陽光、小形風力発電所の開発に取り組んできた。保有する北海道・東北の小形風力発電所や長野県、茨城県、山梨県などの高圧、低圧太陽光発電所は順調に売電を行っている。これに加え、売却した発電所の管理・メンテナンス、発電所の建設・修繕に伴う工事請負等により売上高を確保している。金融機関からシンジケートローン方式で調達した資金をもとに開発した小形風力発電所30基が本格的に稼働を開始し、保有する太陽光発電所も順調に売電を行っている。今後も開発基数の増加に向けた取り組みを加速させ、保有基数の増加を推し進めることで、売電により安定した収入を確保できる収益基盤の確立を目指している。一方で、再生可能エネルギー普及に対する社会の要請により、太陽光発電所、小形風力発電所に対する購入の引き合いが高まっていることも勘案し、発電所の売却も検討している。経済産業省の第7次エネルギー基本計画として、次世代電力ネットワークの構築に向けた蓄電池やDR(デマンド・リスポンス)等による調整力の確保、系統・需給運用の高度化を進め、再生可能エネルギーの変動性への柔軟性確保、再生可能エネルギーの主力電源化・長期安定電源化を目指すことが、2025年2月に閣議決定された。これを受け、子会社「株式会社多摩川エナジー」内に「系統用蓄電所事業調査・検討準備室」を設置し、蓄電池を活用した系統用蓄電所事業の調査・検討に着手している。従来から進めている太陽光発電所、小形風力発電所の開発を通じて培った発電所開発ノウハウを活用すると共に、収益性・機動性を確保して事業リスクの分散化を図りつつ、新たな再生可能エネルギー電源の開発に向けて、継続的なCO2削減に貢献する。さらにインドネシア東ヌサ・トゥンガラ州フローレス島の小水力発電所プロジェクトの2025年11月中の完成・連系など、未来へ向けた電源の多様化にも着手し、再生可能エネルギー事業全体として安定した事業基盤の確立を目指している。
株式会社多摩川ホールディングスは、再生可能エネルギー事業において、経済産業省の第7次エネルギー基本計画に基づき、次世代電力ネットワークの構築に向けた取り組みを強化している。具体的には、子会社である株式会社多摩川エナジー内に「系統用蓄電所事業調査・検討準備室」を設置し、蓄電池を活用した系統用蓄電所事業の調査・検討に着手した。これは、従来の太陽光発電所や小形風力発電所の開発ノウハウを活用しつつ、収益性・機動性を確保しながら事業リスクの分散化を図り、新たな再生可能エネルギー電源の開発を通じてCO2削減に貢献することを目的としている。また、インドネシア東ヌサ・トゥンガラ州フローレス島における小水力発電所プロジェクトが2025年11月中に完成・連系する予定であり、これは未来へ向けた電源の多様化への着手と、再生可能エネルギー事業全体の安定した事業基盤確立を目指す動きである。これらの動向は、同社の再生可能エネルギー事業の多角化と国際展開を加速させ、長期的な企業価値向上に寄与すると想定される。
2025年10月期の連結業績予想は、最近の業績動向を踏まえ、2025年3月21日に公表された業績予想から修正された。売上高は下方修正された一方で、利益面は上方修正された。特に営業利益、経常利益、純利益は第3四半期累計で既に通期予想を上回る進捗率を示しており、利益率の改善が顕著である。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
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売上高 | 54.70億円 | 72.94% |
営業利益 | 1.20億円 | 145.00% |
経常利益 | 0.70億円 | 171.43% |
純利益 | 1.64億円 | 113.41% |
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べ7.47億円増加し、105.89億円となった。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産や仕掛品が増加したためである。負債は、前連結会計年度末に比べ3.83億円増加し、55.40億円となった。これは主に、支払手形及び買掛金や長期借入金が増加したためである。純資産は、前連結会計年度末に比べ3.63億円増加し、50.48億円となった。これは主に、保有上場会社の時価上昇によるその他有価証券評価差額金の増加及び為替影響に伴う為替換算調整勘定の増加によるものである。なお、当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。
株式会社多摩川ホールディングスの今後の見通しは、継続企業の前提に関する重要事象が存在するものの、事業構造改革と利益改善の兆しが見られる点で、投資家にとってポジティブな要素が多い。同社は2023年3月期連結会計年度より3期連続で営業損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる状況にあると認識している。しかし、電子・通信用機器事業においては、金融機関からの資金調達の目途がつき、官公庁関連を含む公共インフラ案件の受注拡大と半導体供給環境の改善による受注済案件の生産拡大により、収益環境が大幅に改善され、利益確保が十分に見込まれている。また、大型案件の量産に対応するため、本社工場近隣に工場賃貸契約を締結し、生産能力を増強したことで、今後の市場需要拡大に迅速かつ効率的に対応できる体制を整え、経営戦略上の重要なステップを踏み出す見込みである。
再生可能エネルギー事業においては、長年にわたるノウハウを活用し、太陽光発電所や小形・中形風力発電所等の開発及び系統用蓄電所等を拡大させる方針である。発電所のストックを積み上げると共に、売却スキームを拡充し、精度の高い事業計画の策定を進めることで、収益基盤の確立を目指す。さらに、経済産業省の第7次エネルギー基本計画に基づき、子会社内に「系統用蓄電所事業調査・検討準備室」を設置し、蓄電池を活用した系統用蓄電所事業の調査・検討に着手するなど、新たな再生可能エネルギー電源の開発にも意欲的である。インドネシアでの小水力発電所プロジェクトの完成・連系も、未来へ向けた電源の多様化と国際展開を示すものであり、長期的な企業価値向上に貢献する可能性を秘めている。
通期業績予想は売上高が下方修正されたものの、営業利益、経常利益、純利益は上方修正された。これは、電子・通信用機器事業において主力商品の量産移行が期初想定よりも円滑に進捗し利益率が改善したこと、再生可能エネルギー事業において利益率の高い売電収入が増加したことによる。売上高の下方修正は、再生可能エネルギー事業におけるポートフォリオ見直しの一環として、一部発電所の売却方針から保有方針への転換によるものであり、必ずしもネガティブな要因とは捉えられない。むしろ、利益率の高い事業に注力し、収益性を重視する経営戦略への転換と評価できる。
これらの状況を総合的に判断すると、同社は過去の損失から脱却し、収益体質の改善と事業基盤の強化に向けて着実に前進していると見られる。継続企業の前提に関する疑義は残るものの、具体的な改善策と利益面での上方修正は、投資家にとって安心材料となる。今後の焦点は、電子・通信用機器事業での安定的な受注獲得と利益率維持、再生可能エネルギー事業での開発拡大と収益性向上、そして新たな事業領域への展開が計画通りに進むかどうかに移る。特に、系統用蓄電所事業の進捗やインドネシアプロジェクトの成功は、将来の企業価値を大きく左右する重要な要素となるだろう。現時点では、利益面での改善と事業戦略の明確化が進んでおり、投資家目線ではポジティブな見通しが示されたと言える。
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