株式会社安川電機は、2026年2月期第2四半期(中間期)において、売上収益2,601.95億円(前年同期比△0.5%)、営業利益233.34億円(同+1.8%)、親会社の所有者に帰属する中間利益182.47億円(同+2.2%)を計上した。地政学的リスクや米国の関税政策による不透明な経営環境が続く中、半導体市場のAI関連投資集中や、中国・韓国の自動車市場、一般産業分野における自動化需要の堅調さが業績を支えた。受注残の正常化が進む中で新規受注を売上につなげ、売上収益はほぼ横ばいながらも想定を上回る着地となった。利益面では、モーションコントロールセグメントにおける付加価値改善や間接費の抑制が寄与し、増益を達成した。通期業績予想も上方修正されており、今回の決算発表は総じて投資家にとってポジティブな内容であったと評価できる。配当予想は据え置きで、株主還元方針に大きな変更はない。
2026年2月期第2四半期(中間期)の連結業績は、売上収益が前年同期比でわずかに減少したものの、営業利益および親会社の所有者に帰属する中間利益は増加し、増益を達成した。これは、受注残の正常化と新規受注の確実な売上計上、モーションコントロールセグメントにおける付加価値改善や間接費抑制が主な要因である。為替レートの変動も影響したが、全体として利益率の改善が見られた。
指標 | 2026年2月期2Q(累計) | 2025年2月期2Q(累計) | 前年同期比 |
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売上収益 | 2,601.95億円 | 2,615.73億円 | △0.5% |
営業利益 | 233.34億円 | 229.26億円 | 1.8% |
税引前利益 | 252.04億円 | 244.27億円 | 3.2% |
純利益 | 182.47億円 | 178.51億円 | 2.2% |
モーションコントロール事業は全社売上収益の約43.36%を占める。当中間連結会計期間において、売上収益は1,128.37億円(前年同期比△5.5%)と減収となったものの、営業損益は120.24億円(同+9.2%)と増益を達成した。受注残の正常化が進む中で減収となったが、日本および欧州における需要回復が売上を支え、想定通りの着地となった。利益面では、付加価値の改善と間接費の抑制が奏功し、増益に貢献した。ACサーボモータ・コントローラ事業では、米州・アジアの半導体市場向け販売が減少したが、日本の電子部品市場向け販売が大きく増加し、全体の売上収益は微増となった。インバータ事業では、米国における太陽光発電用パワーコンディショナや空調用途向け販売が堅調に推移した一方で、オイル・ガス用途向け販売の減少により減収となった。
ロボット事業は全社売上収益の約45.81%を占める。当中間連結会計期間において、売上収益は1,192.04億円(前年同期比+6.4%)と増加したが、営業損益は105.42億円(同△0.5%)とわずかに減少した。自動車市場において、日本・米州での設備投資計画見直しによる影響があったものの、中国・アジアでの堅調な需要に支えられ、売上収益は増加した。営業利益の減少は、当期における一時的な売上案件のミックスの影響によるものと説明されている。中国では自動車市場の堅調な設備投資需要が継続し、一般産業分野における自動化需要も底堅く推移した。製造業全般のグローバル展開に向けた投資も高まり、需要は堅調に推移している。
システムエンジニアリング事業は全社売上収益の約7.18%を占める。当中間連結会計期間において、売上収益は186.90億円(前年同期比+0.5%)と微増し、営業損益は19.39億円(同+3.7%)と増益を達成した。上下水道用電気システムおよび港湾クレーン関連の販売は減少したが、鉄鋼プラント関連の販売が拡大したことが売上収益の微増に寄与した。利益面では、鉄鋼プラント関連の販売増加による採算性改善や、売上増加に伴う利益増の影響により増益となった。
その他事業は全社売上収益の約3.64%を占める。当中間連結会計期間において、売上収益は94.62億円(前年同期比△17.4%)と減少したが、営業損益は9.35億円(同+12.5%)と増益を達成した。その他セグメントは、物流サービス事業などで構成されている。売上収益は減少したものの、営業利益はその他の収益の増加などにより前年同期比で改善した。
当中間連結会計期間において、事業/資本提携やM&A等に関する具体的な動向は決算短信に特段の記載は確認されない。
2026年2月期通期の連結業績予想は、上期の実績や足元の需要環境を考慮し、2025年7月4日に公表された前回予想から上方に修正された。米国関税政策の影響などによる不透明な状況は継続しているものの、堅調な需要と利益率改善が上方修正の背景にある。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
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売上収益 | 5,250億円 | 49.6% |
営業利益 | 480億円 | 48.6% |
税引前利益 | 505億円 | 49.9% |
純利益 | 370億円 | 49.3% |
当中間連結会計期間末の資産合計は7,658.66億円となり、前連結会計年度末から220.91億円増加した。これは主に棚卸資産や契約資産の増加による流動資産の増加(22.64億円増)と、有形固定資産や無形資産等の増加による非流動資産の増加(198.27億円増)が要因である。負債合計は3,100.63億円で、前連結会計年度末から58.99億円増加した。流動負債は社債の非流動負債からの振替えや短期借入金等の増加により265.01億円増加したが、非流動負債は社債及び借入金の流動負債への振替え等により206.02億円減少した。資本合計は4,558.03億円で、利益剰余金やその他の資本の構成要素の増加により161.92億円増加した。
キャッシュフローの状況を見ると、現金及び現金同等物は483.01億円となり、前連結会計年度末から107.26億円減少した。営業活動によるキャッシュフローは、税引前中間利益や減価償却費の計上により158.04億円の収入となったが、棚卸資産の増加や法人所得税の支払いにより前年同期比で72.70億円の収入減となった。投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出等により156.25億円の支出となり、前年同期比で44.79億円の支出増となった。財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払いや長期借入金の返済等により114.91億円の支出となり、前年同期比で118.45億円の支出増となった。結果として、フリー・キャッシュ・フローは1.79億円の収入を確保した。
配当
自己株式取得
株主優待
株式会社安川電機の2026年2月期第2四半期決算は、通期業績予想の上方修正を伴い、投資家にとって総じてポジティブな内容であったと評価できる。売上収益は前年同期比で微減ながらも、利益面では増益を確保し、想定を上回る着地となったことは、経営の効率化と市場環境への適応力を示している。
特に、モーションコントロールセグメントにおける付加価値改善と間接費抑制による利益率向上は、収益性の改善に大きく貢献している。ロボット事業では、中国・アジア市場の堅調な需要が売上を牽引しており、今後の成長ドライバーとして期待される。システムエンジニアリング事業も鉄鋼プラント関連の販売拡大により増益を達成しており、特定の分野での強みが発揮されている。
通期業績予想の上方修正は、上期の実績が好調であったことと、足元の需要環境が堅調に推移していることを反映しており、今後の業績に対する自信の表れと捉えられる。ただし、米国関税政策や地政学的リスクによる不透明感は継続しており、為替レートの想定(1ドル=145.00円、1ユーロ=160.00円)が据え置かれている点も考慮する必要がある。為替変動が業績に与える影響は引き続き注視すべき要素である。
地域別に見ると、日本では電子部品市場の中国向け需要や鉄鋼プラント関連が好調。米州では半導体や自動車市場に不透明感が残るものの、データセンター向け空調関連需要は堅調。欧州では経済回復基調が見られるが設備投資は伸び悩み。中国では自動車市場の堅調な設備投資需要と一般産業分野の自動化需要が底堅く、製造業全般のグローバル展開に向けた投資も高まっている。中国除くアジアでは、半導体関連需要の回復が遅れる一方で、自動車関連や一般産業分野の自動化需要が堅調に推移している。これらの地域ごとの状況を鑑みると、特定の市場に依存せず、多様な地域で需要を取り込む戦略が奏功していると言える。
企業価値の見通しとしては、堅調な需要と利益率改善の継続、そして上方修正された通期業績予想が、投資家の信頼感を高める要因となる。ただし、グローバルな経済情勢の不確実性や、半導体市場の一部における需要の偏りなど、潜在的なリスク要因も存在するため、今後の市場動向と企業の対応が引き続き重要となる。全体としては、今回の決算発表は安川電機の堅実な経営と成長戦略の進捗を示すものであり、投資家にとってはポジティブなシグナルと受け止められる。
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