株式会社不二越の2025年11月期第3四半期累計期間の連結決算は、売上高が前年同期比2.9%減の1,741億円となったものの、利益面では大幅な改善を達成した。営業利益は66億円(前年同期比62.7%増)、経常利益は51億円(同169.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は36億円(同31.0%増)と、いずれも大幅な増益を記録した。これは、自動車分野の緩やかな回復が見られる一方で、米国経済の減速懸念や中国・欧州の経済減速など、先行き不透明な事業環境が続く中、設備や人員の適正化、標準ベアリングの集約生産、全部門を対象とした合理化、内製拡大といった構造改革を推進した結果、固定費削減や原材料価格上昇分の販売価格への転嫁、生産ラインの自動化・合理化、調達コストダウンが奏功したためである。また、資本効率向上のため政策保有株式の縮減を進め、投資有価証券売却益19億円を特別利益に計上した一方、構造改革費用として12億円を特別損失に計上した。株主還元については、年間配当予想は100円で据え置き、自己株式の取得も実施された。総じて、売上高は減少したものの、利益体質の改善が明確に進んでおり、投資家にとってはポジティブな決算発表であった。
2025年11月期第3四半期累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比2.9%減の1,741億円となった。国内の自動車分野は緩やかに回復したものの、建設機械分野の需要低迷やアセアンでの在庫調整の影響を受け、売上高は減少した。しかし、利益面では構造改革の推進が奏功し、固定費削減、原材料価格転嫁、生産ラインの自動化・合理化、調達コストダウンが寄与した。その結果、営業利益は62.7%増の66億円、経常利益は169.4%増の51億円と大幅な増益を達成した。政策保有株式の縮減による投資有価証券売却益19億円を特別利益に計上した一方で、構造改革費用12億円を特別損失に計上した結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は31.0%増の36億円となった。
指標 | 2025年11月期3Q(累計) | 2024年11月期3Q(累計) | 前年同期比 |
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売上高 | 1,741億円 | 1,794億円 | △2.9% |
営業利益 | 66億円 | 40億円 | 62.7% |
経常利益 | 51億円 | 19億円 | 169.4% |
純利益 | 36億円 | 27億円 | 31.0% |
機械工具事業が占める全社売上割合は約31.3%である。当第3四半期累計期間において、国内の産業機械分野の需要は増加したものの、中国におけるロボットの需要減少の影響を受け、売上高は前年同期比3.9%減の545億円となった。しかし、営業利益は、工作機械における操業度の改善に加え、労務費などの固定費削減が奏功し、前年同期比10.6%増の24億円を達成した。厳しい市場環境下においても、工作機械の改善とコスト削減努力により利益を確保する堅調な推移を示している。
部品事業が占める全社売上割合は約62.3%である。当第3四半期累計期間において、一部自動車メーカーの生産回復によりカーハイドロリクスの需要は増加したものの、国内の建設機械メーカーの生産調整やアセアンの市販代理店での在庫調整により油圧機器やベアリングの需要が減少した。結果として、売上高は前年同期比1.9%減の1,085億円となった。一方で、営業利益は設備や人員の適正化など、構造改革による固定費・販管費の削減が奏功し、前年同期比272.4%増の37億円と大幅な増益を記録した。需要の変動が大きい中で、構造改革による利益改善が顕著に表れている。
その他事業が占める全社売上割合は約6.4%である。当第3四半期累計期間において、国内を中心に特殊鋼の需要が減少し、売上高は前年同期比7.3%減の111億円となった。営業利益は操業度の悪化などにより、前年同期比47.5%減の4億円となった。このセグメントは、需要減少と操業度悪化の影響を直接的に受けている状況である。
株式会社不二越は、資本効率の向上を目的として、政策保有株式の縮減を推進した。この取り組みにより、投資有価証券売却益として19億円を特別利益に計上した。これは、財務体質の改善と株主価値向上に向けた積極的な資本政策の一環であり、企業の資産効率を高めることを目指すものである。
進行期の全社業績予想は、2025年1月14日発表の予想数値から変更なく据え置きである。構造改革の推進により利益は大幅に改善しているものの、売上高の減少傾向や不透明な事業環境を考慮し、慎重な見通しを維持している。通期予想に対する第3四半期累計の実績進捗率は、売上高が71.7%、営業利益が77.1%、経常利益が77.9%、純利益が91.0%となっている。特に利益面での進捗が好調である。
指標 | 通期予想 | 進捗率(3Q) |
---|---|---|
売上高 | 2,430億円 | 71.7% |
営業利益 | 86億円 | 77.1% |
経常利益 | 66億円 | 77.9% |
純利益 | 40億円 | 91.0% |
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は3,247億円となり、前連結会計年度末に比べ100億円減少した。主な変動として、現金及び預金が53億円、受取手形、売掛金及び契約資産が19億円、有形固定資産が68億円減少した一方で、棚卸資産が16億円、投資有価証券が18億円増加した。負債合計は1,587億円となり、前連結会計年度末に比べ113億円減少した。電子記録債務が69億円、借入金が36億円、未払法人税等が10億円減少した。純資産合計は1,659億円となり、前連結会計年度末に比べ12億円増加した。利益剰余金が13億円、その他有価証券評価差額金が12億円増加した。自己資本比率は49.7%に改善し、財務の健全性が維持されている。当第3四半期連結累計期間に係る四半期連結キャッシュ・フロー計算書は作成されていない。なお、減価償却費は139億円であった。
配当
自己株式取得
株式会社不二越の2025年11月期第3四半期決算は、売上高の減少にもかかわらず、利益面で大幅な改善を達成した点が投資家にとって非常にポジティブな要素である。これは、厳しい事業環境下で推進してきた構造改革が着実に成果を上げ、固定費削減やコストダウンが利益を押し上げた結果であり、企業の収益体質が強化されていることを明確に示している。政策保有株式の縮減による特別利益計上も、資本効率改善への積極的な姿勢を示すものとして評価できる。
通期業績予想が据え置きである点は、売上高の回復に対する慎重な見方を示唆するものの、営業利益、経常利益、純利益の進捗率がそれぞれ77.1%、77.9%、91.0%と非常に高い水準にあることは、通期予想に対して利益面で上振れの可能性を強く示唆している。これは、今後の第4四半期でのさらなる利益積み上げに期待が持てる状況であり、投資家にとっては安心材料となる。
事業セグメント別に見ると、機械工具事業と部品事業は、市場環境の厳しさから売上高は減少したものの、構造改革による利益改善が顕著である。特に部品事業の営業利益が272.4%増と大幅な伸びを見せたことは、コスト構造改革の成功を裏付けている。一方で、その他事業は特殊鋼需要の減少により売上・利益ともに減少しており、このセグメントの回復が今後の課題となる。
財務状態は、総資産が減少したものの、純資産は増加し、自己資本比率も改善しており、健全性が維持されている。自己株式取得も実施されており、株主還元への意識も高い。
全体として、売上高の減少は引き続き懸念材料ではあるが、利益体質の改善が明確に進んでおり、投資家にとっては企業価値向上のための基盤が着実に強化されていると評価できる。今後の焦点は、グローバル経済の不透明感が続く中で、売上高の回復をいかに実現するか、そして構造改革による利益改善効果の持続性をいかに高めるかにある。特に、中国経済の動向や地政学リスクが引き続き不透明な中、グローバルな事業展開におけるリスク管理と、新商品開発や技術提案による競争力強化が、持続的な成長と企業価値向上に不可欠となる。利益進捗率の高さから、通期での利益予想達成、あるいは上振れへの期待は大きく、今後の動向が注目される。
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