株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンの2026年2月期第2四半期(中間期)決算は、売上高が前年同期比で微減に留まったものの、利益が大幅に減少した。売上高は23.68億円(前年同期比△0.3%減)とほぼ横ばいだったが、営業利益は1.59億円(同△51.2%減)、経常利益は1.58億円(同△52.1%減)、親会社株主に帰属する中間純利益は1.26億円(同△45.3%減)と、いずれも大幅な減益となった。これは主に、金融ソリューション事業における住宅ローン取り扱い件数の低調や、不動産ソリューション事業における不動産オークション取引の成約・決済時期の遅延が影響した。一方で、建築ソリューション事業と士業ソリューション事業は堅調に推移し、特に建築ソリューション事業は大幅な増収増益を達成した。通期業績予想は据え置きだが、利益進捗率は低調であり、下半期での巻き返しが課題となる。配当予想は期末6.00円で据え置き。全体として、市場環境の厳しさが利益を圧迫しており、投資家にとってはネガティブな決算内容と評価される。
2026年2月期第2四半期累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比0.3%減の23.68億円とほぼ横ばいだったものの、利益項目は大幅な減益となった。営業利益は51.2%減の1.59億円、経常利益は52.1%減の1.58億円、親会社株主に帰属する中間純利益は45.3%減の1.26億円となった。これは、金融ソリューション事業における住宅ローン取り扱い件数の低調や、不動産ソリューション事業における不動産オークション取引の成約・決済時期の遅延が主な要因である。一方で、建築ソリューション事業は敷地調査業務の受託件数や設計サポートサービスが好調に推移し、士業ソリューション事業も堅調な売上を維持した。
指標 | 2026年2月期2Q(累計) | 2025年2月期2Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 23.68億円 | 23.74億円 | △0.3% |
営業利益 | 1.59億円 | 3.26億円 | △51.2% |
経常利益 | 1.58億円 | 3.30億円 | △52.1% |
純利益 | 1.26億円 | 2.30億円 | △45.3% |
金融ソリューション事業が占める全社売上割合は約38.4%である。 金融ソリューション事業は、主に金融機関に対し、住宅ローンに係る事務及び相続手続きの利便性、安全性及び業務の効率化に寄与する各種サービスを提供している。取引関係者には不動産取引に係る受発注管理、進捗管理及び品質管理等に資するクラウドシステム「EPS (EAJ Platform System)」を通じてサービスを提供。連結子会社の株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託では、信託サービスや相続手続き代行サービスを提供し、決済の安全性確保や財産保全等のニーズに対応している。当中間連結会計期間においては、主に金融機関の住宅ローン取り扱い件数が低調であったことに伴い、各種サービス利用件数が減少した。結果として、セグメント売上高は9.10億円(前年同期比15.9%減)、セグメント利益は4.18億円(前年同期比18.9%減)となった。住宅ローン市場の動向が直接的に業績に影響を与える構造であり、市場の低迷が続く限り厳しい状況が続く見込みである。
不動産ソリューション事業が占める全社売上割合は約12.4%である。 不動産ソリューション事業は、主に不動産事業者に対し、不動産取引の非対面決済サービス「HOURS」を提供する等、取引の利便性、安全性及び業務の効率化のための各種サービスを提供している。連結子会社の株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン信託では、税理士等の士業からの相談に応じ、不動産の調査から取引決済まで安全性の高い不動産オークション取引の機会の場を提供している。当中間連結会計期間においては、不動産市況高騰の影響等により不動産オークション取引の成約及び決済時期に遅れが見られ、また、「HOURS (アワーズ)」の利用件数も前年を下回った。結果として、セグメント売上高は2.92億円(前年同期比27.6%減)、セグメント損失は0.84億円(前年同期は0.24億円のセグメント損失)と大幅な損失拡大となった。不動産市場の動向に大きく左右される事業であり、市場の不透明感が続く中で厳しい状況が続いている。
建築ソリューション事業が占める全社売上割合は約28.1%である。 建築ソリューション事業は、主に建築事業者に対し、現場管理及び建築確認・申請業務等の利便性、安全性及び業務の効率化に寄与する各種サービスを提供している。連結子会社の株式会社中央グループでは、建築事業者に対し建築の申請から各種申請用図面の作成、検査・アフターフォローまでワンストップでトータルサポートを行う住宅建築支援ツール「ARCHITECT RAIL(アーキテクト・レール)」の提供を行うとともに、測量、建築設計等の専門サービスを提供している。当中間連結会計期間においては、建築事業者からの敷地調査業務の受託件数、及び設計サポートサービスが好調に推移した。結果として、セグメント売上高は6.65億円(前年同期比52.8%増)、セグメント利益は0.90億円(前年同期比69.6%増)と大幅な増収増益を達成した。建設コストの値上がりや住宅ローン金利上昇といった市場環境の中でも、専門性の高いサービス提供が奏功している。
士業ソリューション事業が占める全社売上割合は約20.9%である。 士業ソリューション事業は、主に不動産取引に関わる士業に対し、業務の利便性、安全性及び業務の効率化のための各種サービスを提供している。連結子会社の株式会社サムポローニアでは、主に登記申請に関連する分野において、オンライン申請機能や情報管理機能など多様な機能を有する「サムポローニアシリーズ」を通じて、士業へサービスを提供している。また、マイナンバーカードを利用した本人確認及び電子署名を可能とする「サムポロトラスト」を提供している。当中間連結会計期間においては、主力商品であるサムポローニアシリーズ関連の売上が堅調に推移した。結果として、セグメント売上高は4.95億円(前年同期比10.7%増)、セグメント利益は0.57億円(前年同期比19.7%減)となった。売上は増加したものの、利益は減少しており、コスト管理が課題となっている可能性がある。
2026年2月期の通期連結業績予想は、2025年4月4日に公表された内容から修正はなく、据え置きとなった。第2四半期累計の実績は、売上高が通期予想の43.6%(23.68億円/54.35億円)、営業利益が33.3%(1.59億円/4.77億円)、経常利益が32.6%(1.58億円/4.84億円)、純利益が35.5%(1.26億円/3.55億円)の進捗率となっている。売上高は順調な進捗だが、利益項目は通期予想に対して低調な進捗であり、下半期での巻き返しが求められる。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
---|---|---|
売上高 | 54.35億円 | 43.6% |
営業利益 | 4.77億円 | 33.3% |
経常利益 | 4.84億円 | 32.6% |
純利益 | 3.55億円 | 35.5% |
当中間連結会計期間末の総資産は45.64億円となり、前連結会計年度末と比較して1.97億円減少した。流動資産は32.20億円で3.88億円減少したが、固定資産は13.43億円で1.91億円増加した。これは主に投資その他の資産の増加による。負債合計は11.44億円となり、前連結会計年度末と比較して0.60億円減少した。流動負債は9.39億円で0.83億円減少、固定負債は2.05億円で0.23億円増加した。純資産合計は34.19億円となり、前連結会計年度末と比較して1.37億円減少した。これは親会社株主に帰属する中間純利益1.26億円があった一方で、剰余金の配当2.61億円があったことによる。自己資本比率は74.8%と前連結会計年度末の74.7%から微増し、高い水準を維持している。
キャッシュフローの状況では、現金及び現金同等物は前連結会計年度末より5.20億円減少し、22.73億円となった。営業活動によるキャッシュフローは0.40億円の収入(前年同期は3.43億円の収入)と大幅に減少した。これは主に税金等調整前中間純利益の減少や、法人税等の支払額、貸倒引当金の減少額が影響した。投資活動によるキャッシュフローは2.77億円の支出(前年同期は1.13億円の支出)となり、投資有価証券の取得による支出1.53億円が主な要因である。財務活動によるキャッシュフローは2.80億円の支出(前年同期は2.73億円の支出)で、配当金の支払額2.61億円が主な要因である。全体として、営業キャッシュフローの減少と投資活動による支出の増加により、資金が減少している。
配当
今回の第2四半期決算発表は、投資家にとってネガティブな内容と評価される。売上高は前年同期比で微減に留まったものの、営業利益、経常利益、純利益が軒並み50%前後という大幅な減益となったためである。特に、主力の金融ソリューション事業と不動産ソリューション事業が市場環境の悪化により苦戦しており、これが全体の業績を押し下げた主要因である。金融機関の住宅ローン取り扱い件数の低調や、不動産オークション取引の成約・決済時期の遅延は、短期的な回復が見込みにくい市場要因に起因しており、今後の収益改善には時間を要する可能性がある。
一方で、建築ソリューション事業は敷地調査業務の受託件数や設計サポートサービスが好調に推移し、大幅な増収増益を達成した点はポジティブな要素である。また、士業ソリューション事業も売上は堅調に増加している。これらの成長セグメントが、低迷するセグメントの業績をどこまで補完できるかが今後の焦点となる。特に、建築ソリューション事業は建設コストの値上がりや住宅ローン金利上昇といった市場環境の中でも、専門性の高いサービス提供が奏功しており、この事業のさらなる拡大が企業全体の成長ドライバーとなる可能性を秘めている。
通期業績予想は据え置きとされたが、第2四半期時点での利益進捗率は30%台と低く、下半期に大幅な巻き返しが必要となる。特に、金融・不動産市場の回復が不透明な中で、残りの期間でどのように利益を確保していくのか、具体的な戦略が投資家から注目されるだろう。コスト削減や効率化の推進、あるいは新たな収益源の確保など、多角的なアプローチが求められる。
財務状態は自己資本比率が74.8%と健全性を維持しているものの、キャッシュフローは営業活動によるキャッシュフローが大幅に減少し、投資活動による支出が増加したことで、現金及び現金同等物が減少している。これは、事業活動からの資金創出能力が低下していることを示唆しており、今後の資金繰りや投資戦略について懸念材料となる可能性がある。特に、成長投資を継続しつつ、どのようにキャッシュフローを改善していくかが、企業価値向上に向けた重要な課題となる。
全体として、市場環境の厳しさが続く中で、成長セグメントのさらなる拡大と、苦戦するセグメントの立て直しが喫緊の課題である。投資家としては、通期予想達成に向けた具体的な施策や、各事業セグメントの収益性改善に向けた進捗を注視する必要がある。現状では、業績の不透明感が強く、株価へのポジティブな影響は限定的であると見られる。
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