京都機械工具株式会社の2025年3月期連結決算は、売上高が前年同期比7.3%増の90.46億円と増収を達成したものの、営業利益は8.47億円で前年同期比0.0%と横ばい、経常利益は9.44億円で同4.7%増と微増益にとどまった。親会社株主に帰属する当期純利益は5.44億円で同△6.5%減となり、減益決算となった。これは、当社製品のデジタルトルクレンチにおける不具合による自主回収及び対策に伴う関連費用1.31億円を特別損失に計上したことが主な要因である。
財務状態では、総資産が162.88億円、純資産が122.53億円となり、自己資本比率は75.2%と高い水準を維持している。キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが10.73億円と大幅に増加した一方で、投資活動によるキャッシュ・フローは△12.52億円、財務活動によるキャッシュ・フローは△3.18億円となり、期末の現金及び現金同等物は29.19億円に減少した。
株主還元については、年間配当金は前年と同額の1株当たり80.00円(中間40.00円、期末40.00円)を維持し、配当金総額は1.93億円、配当性向は35.6%であった。また、自己株式取得として0.85億円を支出した。
全体として、売上は堅調に推移したものの、製品不具合に伴う特別損失の計上が純利益を圧迫し、減益となった点はネガティブな要素である。しかし、本業の営業利益は横ばいを維持しており、事業基盤は安定していると評価できる。
2025年3月期の連結業績は、売上高が前年同期比7.3%増の90.46億円と増収を達成した。しかし、営業利益は8.47億円で前年同期比0.0%と横ばい、経常利益は9.44億円で同4.7%増と微増益にとどまった。親会社株主に帰属する当期純利益は5.44億円で同△6.5%減となり、減益決算となった。これは、デジタルトルクレンチの不具合に伴う自主回収費用1.31億円を特別損失に計上したことが主な要因である。
指標 | 2025年3月期(累計) | 2024年3月期(累計) | 前年同期比 |
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売上高 | 90.46億円 | 84.28億円 | 7.3% |
営業利益 | 8.47億円 | 8.47億円 | 0.0% |
経常利益 | 9.44億円 | 9.01億円 | 4.7% |
純利益 | 5.44億円 | 5.82億円 | △6.5% |
工具事業は全社売上高の約97.4%を占める。 当連結会計年度の工具事業は、売上高88.13億円(前年同期比7.5%増)、セグメント利益6.88億円(前年同期比0.3%増)となった。主力の自動車市場向け販売が堅調に推移し、付加価値の高いソリューション案件を中心とした直販部門も堅調であった。 同事業部門では、「安全、快適、能率・効率、環境」をキーワードに、既存顧客の深耕、新規顧客の開拓並びにブランド価値向上などの事業戦略を展開している。開発面では、IoT技術を搭載した工具や測定具、作業支援デバイス、システムソフトウェアで構成される「TRASAS (TRAceable Sensing and Analysis System)」シリーズを市場投入し、作業履歴の自動的な記録・管理・分析を可能にした。また、RFIDを搭載したIoT対応工具「nepros ID」シリーズを展開しており、世界初となる360°あらゆる角度から電波の読み取りが可能な同IoT対応工具は、「MRO Asia Pacific 2024」において「MRO Technology Achievement of the Year」のファイナリストに選出され、「2024年度グッドデザイン賞」を受賞した。厳格な工具管理が求められる作業現場で活用することで、使用履歴管理による紛失抑制や工具探索の容易化に貢献している。 さらに、京都大学との産学連携による共同研究を進めていた構造最適化手法「トポロジー最適化」を用いた「nepros neXT」シリーズを展開し、材料や構造・機構に関する新たな開発にも積極的に取り組んでいる。販売面では、国内営業の専門部隊「凄腕究め隊」を中心に、全国の得意先やエンドユーザーに向けて「KTCものづくり技術館」に加え、お客様の現場にて様々な研修会の開催に注力している。2025年1月にはフラッグシップブランド「nepros」が誕生30周年を迎え、ロゴマークの刷新とタグライン「BEYOND THE BEST」を設定した。グローバル展開にも注力し、主に米国自動車アフターマーケットを対象に、全米で約12,000台存在する現地のツールトラックの一部を活用し販売している。生産面では、「新・工具大進化」を支えるため、人とロボットそれぞれの長所を活かした協働環境の運用を目指し、脱着作業などの単純な繰り返し作業は協働型ロボットが行い、人はより付加価値の高い作業へシフトする独自の少人化ラインの展開を目指すなど、「ものづくりの最適化」を図り生産性の向上を推進している。サプライチェーンマネジメントの強化のため、新規設備の導入を行い主力工場の改善に取り組み、生産体制のさらなる安定と強化に取り組んでいる。ESGの取り組みとして、製品包装パッケージの刷新や生産方法の見直しによるプラスチック使用量の削減を含めた環境にやさしい生産活動の実現に取り組んでいる。また、国立大学法人奈良女子大学工学部の実習に当社グループの従業員が講師として参加するなど、産学連携を通じた「技育(技術の教育)」分野でのオープンイノベーションを推進している。
ファシリティマネジメント事業は全社売上高の約2.6%を占める。 当連結会計年度のファシリティマネジメント事業は、売上高2.32億円(前年同期比1.7%増)、セグメント利益1.58億円(前年同期比1.1%減)となった。同事業部門では、所有不動産の有効活用を目指し、物件の整備、運営管理を推進している。不動産の賃貸については、全ての物件で高い入居率を確保しており、引き続き入居者満足度の向上を図り、収益の安定化に取り組んでいる。2025年2月には、久御山町に新たな収益物件を取得し、賃貸物件として運営を開始した。所有不動産や石川県羽咋市の太陽光発電所は安定的に稼働している。
当連結会計年度において、ファシリティマネジメント事業では、2025年2月に久御山町に新たな収益物件を取得し、賃貸物件として運営を開始した。これにより、同事業の収益基盤の強化を図る。 また、政策的に保有する意義が希薄化したため、投資有価証券の一部を売却した。売却内容は、当社保有の上場有価証券1銘柄で、売却期間は2025年9月9日、投資有価証券売却益は5.06億円であった。
2026年3月期の連結業績予想については、現段階では合理的な業績予想の算定が困難であるため、未定としている。今後、連結業績予想の算定が可能となった時点で速やかに開示する予定である。
当連結会計年度末の総資産は162.88億円となり、前連結会計年度末に対し2.51億円減少した。主な変動は、土地が4.74億円、仕掛品が1.38億円、電子記録債権が1.33億円増加した一方で、投資有価証券が5.74億円、現金及び預金が3.87億円、工具、器具及び備品が0.62億円減少したことによる。 負債合計は40.35億円となり、前連結会計年度末に対し1.36億円減少した。主な変動は、未払金が1.32億円、製品回収関連損失引当金が1.31億円増加した一方で、繰延税金負債が1.89億円、その他流動負債が1.55億円、未払法人税等が0.46億円減少したことによる。 純資産合計は122.53億円となり、前連結会計年度末に対し1.15億円減少した。主な変動は、利益剰余金が3.25億円、自己株式が0.76億円増加した一方で、その他有価証券評価差額金が3.88億円減少したことによる。 キャッシュ・フローの状況では、営業活動によるキャッシュ・フローは10.73億円の増加(前年同期は5.03億円の増加)となり、税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の増加、その他の負債の増加が主な要因である。投資活動によるキャッシュ・フローは△12.52億円の減少(前年同期は△2.03億円の減少)となり、主に固定資産の取得による支出11.62億円、定期預金の預入による支出1.34億円が減少要因となった。財務活動によるキャッシュ・フローは△3.18億円の減少(前年同期は△1.82億円の減少)となり、主に配当金の支払額2.18億円、自己株式の取得による支出0.85億円が減少要因となった。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は29.19億円となった。
京都機械工具株式会社の株主還元に関する方針と実績は以下の通りである。
配当
自己株式取得
京都機械工具株式会社の2025年3月期決算は、売上高の増加は評価できるものの、製品不具合に伴う特別損失の計上により純利益が減少した点は投資家にとってネガティブな要素である。しかし、本業の営業利益は横ばいを維持しており、事業基盤の安定性は示している。
今後の見通しについては、2026年3月期の連結業績予想および配当予想が「未定」とされている点が最大の懸念材料である。これは、連結子会社である北陸ケーティシーツール株式会社における不適切会計の再発防止策に係るシステム投資や、不採算事業の見直しに係る費用などにおいて合理的な見積りが困難な状況にあるためと説明されている。この不透明感は、投資家にとって企業価値評価の難易度を高め、株価に下押し圧力をかける可能性がある。特に、特別調査費用として概算総額6.21億円(保険補償50百万円を控除した5.71億円)を翌連結会計年度の決算において特別損失として計上する予定であると明記されており、これは翌期の業績に大きな影響を与えるネガティブな要因となる。
一方で、同社は「KTC vision 2030」を策定し、長期的な成長戦略を推進している。特に、IoT技術を活用した「TRASAS」シリーズや「nepros ID」シリーズの開発・展開、京都大学との産学連携による「nepros neXT」シリーズの開発など、技術革新を通じた競争力強化への取り組みはポジティブな要素である。また、ESGの取り組みとして環境負荷低減や技術者育成にも注力しており、持続可能な企業としての価値向上を目指している。工具事業における堅調な販売動向や、ファシリティマネジメント事業における収益物件の取得など、各事業の成長ドライバーは存在している。
投資家としては、短期的な業績の不透明感と特別損失の計上は懸念材料となるが、長期的な視点で見れば、技術革新と成長戦略の推進、ESGへの取り組みは企業価値向上に繋がる可能性がある。しかし、不適切会計問題の解決とそれに伴う費用の影響、そして新たな業績予想の開示が待たれる状況であり、現時点では慎重な姿勢が求められる。業績予想が明確になり、不適切会計問題が完全に解消されれば、投資家からの評価は改善する可能性を秘めている。
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