日本オラクル株式会社の2026年5月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比3.7%増の662.75億円と堅調に推移した一方、営業利益は211.28億円(前年同期比△4.8%減)、経常利益は213.69億円(前年同期比△3.7%減)、純利益は148.05億円(前年同期比△3.7%減)と減益となった。国内の情報サービス産業におけるIT投資は底堅く推移しており、当社は広範で統合されたクラウドサービス、最高水準のセキュリティ、パフォーマンス、効率性を備えたエンタープライズ向けAIの活用により、顧客企業のイノベーションとビジネス変革を支援している。クラウド事業は堅調に成長し、特にOracle Cloud Infrastructure (OCI)はガバメントクラウドに認定されるなど、将来の成長ドライバーとなる戦略的な取り組みが進展している。しかし、前年同期に価格改定前の駆け込み需要があったソフトウェア・ライセンスビジネスの反動減や、ハードウェア事業の売上減少が利益を圧迫したと推測される。株主還元については、2026年5月期の年間配当予想は期末190.00円で据え置きとなっている。全体として、戦略的な成長投資は評価できるものの、短期的な利益減少は投資家にとって懸念材料となり得る決算であった。
2026年5月期第1四半期累計期間の全社業績は、売上高が前年同期比3.7%増の662.75億円と増収を達成した。これは、クラウド・アンド・ソフトウェア事業およびサービス事業の堅調な成長が牽引した結果である。しかし、営業利益は211.28億円、経常利益は213.69億円、純利益は148.05億円となり、それぞれ前年同期比で△4.8%減、△3.7%減、△3.7%減と減益を記録した。これは、前年同期にソフトウェア・ライセンスビジネスで価格改定前の駆け込み需要があったことによる反動減や、ハードウェア事業の売上減少が影響したと考えられる。
指標 | 2026年5月期1Q(累計) | 2025年5月期1Q(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 662.75億円 | 639.15億円 | 3.7% |
営業利益 | 211.28億円 | 221.94億円 | △4.8% |
経常利益 | 213.69億円 | 221.93億円 | △3.7% |
純利益 | 148.05億円 | 153.74億円 | △3.7% |
クラウド・アンド・ソフトウェア事業は、全社売上高の85.3%を占める主要セグメントである。当第1四半期累計期間の売上高は565.39億円となり、前年同期比3.9%増と堅調に推移した。当社は、お客様企業の基幹システムのクラウド移行と積極的なデータ活用によるビジネス成長を支援することをミッションとし、クラウドシフトのさらなる加速に注力している。特に、既存顧客向けのOracle Fusion Cloud Applicationsへのアップグレード(オンプレミスからクラウドへのリフト&シフト)に一層注力するとともに、新規顧客の獲得にも積極的に取り組んだ。
Oracle Cloud Infrastructure (OCI)については、パフォーマンス、セキュリティ、費用対効果を重視するお客様からの引き合いが引き続き強く、東京および大阪データセンターの利用量は順調に増加している。OCIは、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)に適合したクラウドサービスとして登録されており、2022年10月にはデジタル庁におけるガバメントクラウド整備のためのクラウドサービスに決定した。これにより、政府機関や地方自治体等のデジタル化推進に伴う、中長期的な需要創出および基盤構築への寄与を目指している。中堅中小企業向けCloud ERPのNetSuiteも、組織再編を進めクラウドサービスを導入する企業の需要を取り込み堅調に推移した。
ソフトウェア・ライセンスビジネスにおいては、レガシーシステムからの脱却とシステム標準化・オープン化の動きが活発化しており、コスト削減だけでなく、デジタル改革を推進する柔軟なIT基盤への刷新、ビジネス成長のためのIT投資需要が引き続き堅調である。しかし、前年同期に価格改定前の駆け込み需要があったため、当期は反動減を記録した。ソフトウェア・サポートは、高い契約更新率を維持しており、オンプレミスライセンスの販売に伴う新規保守契約も高水準を堅持している。
ハードウェア事業は、全社売上高の5.2%を占める。当第1四半期累計期間の売上高は34.63億円となり、前年同期比△4.1%減となった。2025年1月には、最新世代の“Oracle Exadata X11M”プラットフォームの提供を開始した。この“Oracle Exadata X11M”は、AMD EPYC™プロセッサ向けに最適化され、前世代と同じ価格でAI、分析、オンライン・トランザクション処理(OLTP)のパフォーマンスを大幅に向上させる。インテリジェントな電力管理と、ミッション・クリティカルなワークロードをより少ないシステムで高速に実行する機能により、エネルギー効率とサステナビリティの目標達成を支援する。パフォーマンス面では、ストレージボトルネックの排除、アナリティクス、IoT、不正検出、高頻度取引など、最も過酷なワークロード全体でパフォーマンスを大幅に向上させる。AIではベクトル検索の大幅な高速化、トランザクション処理ではIOPSの大幅な高速化とレイテンシの短縮、分析ではデータスキャンとクエリ処理能力の大幅な高速化が実現している。
サービス事業は、全社売上高の9.5%を占める。当第1四半期累計期間の売上高は62.72億円となり、前年同期比6.9%増と好調に推移した。コンサルティングサービスにおいては、オンプレミス環境からOracle Cloud Infrastructure環境への基盤移行、Cloud Applicationsとの連携案件など、当社の総合的な製品サービス・ポートフォリオを活かした複合型案件が堅調に推移している。
日本オラクル株式会社は、当第1四半期決算短信において、具体的な事業提携やM&Aに関する直接的な発表は行っていない。しかし、重点施策として「パートナー様との連携をさらに強化」する方針を掲げている。特に、中堅中小企業向けの需要創出においては、パートナー企業とのアライアンス強化やクラウドパートナーとの協業強化を積極的に推進している。これにより、広範な業界のお客様に最適なオラクルソリューションを提供し、お客様のビジネスに貢献することを目指している。これらの連携強化は、間接的に事業拡大や市場浸透に寄与する重要な戦略的動向と捉えられる。
2026年5月期の全社業績予想は、2025年6月27日に発表された内容から修正はなく、据え置きである。売上高は前年同期比6.0%~10.0%増を見込んでいる。当第1四半期累計期間の実績に基づくと、売上高の通期予想に対する進捗率は23%である。
指標 | 通期予想 | 進捗率(1Q) |
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売上高 | 2,845.91億円 | 23% |
当第1四半期会計期間末における総資産は2,976.16億円となり、前事業年度末比で187.87億円減少した。流動資産は1,845.03億円(前事業年度末比193.57億円減)、固定資産は1,131.12億円(前事業年度末比5.70億円増)であった。負債は1,434.68億円(前事業年度末比92.54億円減)となり、純資産は1,541.47億円(前事業年度末比95.34億円減)となった。この結果、自己資本比率は51.8%となり、前事業年度末比で0.1ポイント上昇した。当第1四半期累計期間に係る四半期キャッシュ・フロー計算書は作成されていないが、減価償却費は3.40億円であった。
配当
自己株式取得
日本オラクル株式会社の2026年5月期第1四半期決算は、売上高の成長は維持されたものの、利益面では減益となった。しかし、通期業績予想は据え置きであり、会社側は今後の回復に自信を持っていると解釈できる。投資家目線では、この決算発表はポジティブな要素とネガティブな要素が混在していると評価できる。
ポジティブな側面としては、まずクラウド事業の堅調な成長が挙げられる。Oracle Cloud Infrastructure (OCI)がガバメントクラウドに認定され、政府機関や地方自治体のデジタル化推進に貢献する見込みであることは、中長期的な需要創出と基盤構築への寄与が期待され、非常に大きな成長ドライバーとなる。また、生成AI技術への積極的な投資と活用推進は、今後の市場トレンドに合致しており、大規模AIモデル作成の高速化・低コスト化、セキュアな生成AIサービス提供は、企業の競争優位性を高める可能性が高い。さらに、「Oracle Alloy」を活用した日本初のソブリンクラウド展開は、地政学リスクや経済安全保障リスクに対応し、データ主権・運用主権の要件を満たすことで、新たな市場ニーズを開拓する可能性を秘めている。パートナー連携の強化も、事業拡大と市場浸透を加速させる重要な戦略である。これらの戦略的な取り組みは、将来の企業価値向上に大きく貢献すると考えられる。
一方で、ネガティブな側面としては、当第1四半期における営業利益、経常利益、純利益の減少が挙げられる。これは、前年同期のソフトウェア・ライセンスビジネスにおける駆け込み需要の反動減や、ハードウェア事業の売上減少が影響していると推測される。売上高は増加しているものの、利益が減少している点は、投資家にとって短期的な収益性への懸念材料となる。通期業績予想が据え置きであるため、今後の四半期で利益の改善が見られるか、あるいは積極的な成長投資が利益を圧迫し続けるのかが注目される。
総じて、日本オラクルはクラウドとAIという成長分野に戦略的に注力しており、OCIのガバメントクラウド認定やソブリンクラウドの展開など、将来の企業価値向上に繋がる強力なポジティブ要素を多く持っている。しかし、短期的な利益の減少は、これらの投資がいつ、どのように収益に結びつくのか、その進捗を投資家が慎重に見極める必要があることを示唆している。今後の四半期決算では、クラウド事業の利益貢献度や、AI関連投資の具体的な成果、そして全体的な利益率の改善が、投資判断において重要なポイントとなるだろう。
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