株式会社アピリッツは、2026年1月期第2四半期(中間期)において、売上高は前年同期比22.2%増の5,156百万円となった。しかし、営業利益は18,507百万円の損失、経常利益は25,340百万円の損失、親会社株主に帰属する中間純損失は35,531百万円となり、大幅な減益となった。これは、主にWebソリューション事業における不採算案件への注力による費用増加や、デジタル人材育成派遣事業におけるM&Aに伴う一時的な費用増加が影響した。
株主還元については、2026年1月期の年間配当予想は16円となっている。
全体として、売上は増加したものの、利益面では大幅な悪化が見られ、投資家目線ではネガティブな決算発表となった。
株式会社アピリッツの2026年1月期第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高が前年同期比22.2%増の5,156百万円と堅調に推移した。これは、インターネット業界全体におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)需要の拡大や、生成AIへの注目度向上といった追い風を捉え、Webソリューション事業、デジタル人材育成派遣事業、推しカルチャー&ゲーム事業の各セグメントで事業拡大を図った結果である。特に、Webソリューション事業では顧客ニーズに合わせたサービス設計から開発・保守までの一連の業務を受託し、売上高は同30.7%増となった。デジタル人材育成派遣事業でも、未経験者採用と育成を強化し、株式会社JUTJOYのM&Aによるシナジー効果も期待される中で、売上高は同23.7%増となった。推しカルチャー&ゲーム事業も、IPを活用したビジネス展開や運営体制の効率化を進め、売上高は同14.9%増となった。
しかしながら、利益面では大幅な悪化が見られた。営業利益は13,262百万円の黒字から18,507百万円の損失へと転落し、経常利益も10,681百万円の黒字から25,340百万円の損失となった。親会社株主に帰属する中間純損失は16,163百万円から35,531百万円へと拡大した。この要因として、Webソリューション事業における不採算案件への対応による外注費増加、デジタル人材育成派遣事業における株式会社JUTJOYのM&Aに伴う一時的な費用増加、推しカルチャー&ゲーム事業における新規案件対応のための外注費増加などが挙げられる。
指標 | 2026年1月期(累計) | 2025年1月期(累計) | 前年同期比 |
---|---|---|---|
売上高 | 5,156億円 | 4,221億円 | 22.2% |
営業利益 | △18億円 | 13億円 | △240.7% |
経常利益 | △25億円 | 10億円 | △353.9% |
親会社株主に帰属する中間純利益 | △35億円 | △16億円 | △119.3% |
Webソリューション事業は、全社売上高の約37.7%を占める。 顧客ニーズに合わせたサービス設計から開発・保守までの一連の業務を受託し、ロイヤリティループの形成を目指している。若手エンジニアの育成と継続的な案件受注、新規案件の獲得に注力している。好調な市場環境を背景に案件の引き合いは多く、売上高は1,949百万円(前年同期比30.7%増)と順調に成長した。しかし、不採算案件への対応による外注費の増加が利益を圧迫し、セグメント利益は231百万円(前年同期比25.5%増)となったものの、利益率の低下が見られた。
デジタル人材育成派遣事業は、全社売上高の約17.6%を占める。 急速に進むデジタルビジネスの進展に伴うデジタル人材の需給ギャップを背景に、未経験者採用と質の高い教育によるデジタル人材の提供に注力している。堅調な需要を捉え、売上高は920百万円(前年同期比23.7%増)と成長した。また、株式会社JUTJOYのM&Aにより、人材育成・派遣事業の強化とシナジー効果が期待される。しかし、M&Aに伴う一時的な費用増加により、セグメント利益は22百万円(前年同期比35.4%減)と減少した。
推しカルチャー&ゲーム事業は、全社売上高の約45.1%を占める。 オンラインゲームとファンクラブサービスの運営を通じて、「推し活」ビジネスを推進している。『けものフレンズ3』や『UNI'S ON AIR』の周年イベント開催、株式会社gumiとの共同運営タイトル『乃木坂的フラクタル』の移管などにより、事業拡大を図っている。運営体制の効率化や内製化を進め、原価低減に努めている。売上高は2,326百万円(前年同期比14.9%増)と増加した。しかし、下期にかけてのアプリ外決済導入に向けた一時的な外注費増加などにより、セグメント利益は131百万円(前年同期比18.0%減)となった。
株式会社アピリッツは、中期ビジョン「アピリッツVISION2030」に基づき、デジタル人材の確保・育成と事業領域の拡大を目指し、積極的なM&A戦略を推進している。当中間連結会計期間においては、デジタル人材育成に強みを持つ株式会社JUTJOYをM&Aによりグループインさせた。これにより、デジタル人材の教育・育成を加速させ、シナジー効果による事業成長を目指している。また、2025年6月1日付で連結子会社であった株式会社ムービングクルーを吸収合併し、システム開発事業をWebソリューション事業へ統合、ファンコミュニティサイトの企画・開発・運営等を推しカルチャー&ゲーム事業へ統合することで、サービス提供の強化を図った。さらに、2025年8月29日には、ベトナムのソフトウェア開発企業であるBunbu Joint Stock Companyの全株式取得により、完全子会社化することを決議した。この取得により、収益拡大、コスト最適化、優秀な人材の確保、品質向上、海外事業展開が期待され、両社間のシナジー創出によるさらなる事業拡大を見込んでいる。
2026年1月期の通期業績予想は、売上高10,551百万円、営業利益103百万円、経常利益90百万円、親会社株主に帰属する当期純利益51百万円となっている。 中間期までの進捗率は、売上高が約48.9%、営業利益が約-179.6%、経常利益が約-101.1%、親会社株主に帰属する当期純利益が約-66.7%となっている。 特に利益面での進捗率が著しく低く、通期での達成には厳しい状況が示唆される。
指標 | 通期予想 | 進捗率(2Q) |
---|---|---|
売上高 | 10,551億円 | 48.9% |
営業利益 | 103億円 | -179.6% |
経常利益 | 90億円 | -101.1% |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 51億円 | -66.7% |
該当する決算発表は中間決算のため、通期業績予想の記載はない。
2026年1月期中間連結会計期間末の総資産は5,717百万円となり、前連結会計年度末から42百万円減少した。流動資産は513百万円減少し、固定資産は86百万円増加した。負債合計は3,375百万円となり、前連結会計年度末から98百万円増加した。純資産合計は2,341百万円となり、前連結会計年度末から526百万円減少した。これは主に、中間純損失の計上や配当金の支払いによる利益剰余金の減少によるものである。 キャッシュ・フローの状況としては、営業活動によるキャッシュ・フローは193百万円の支出となった。これは、税金等調整前中間純損失の計上や、売上債権及び契約資産の増加などが主な要因である。投資活動によるキャッシュ・フローは225百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは2067百万円の支出となった。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は1,871百万円となり、期首残高から422百万円減少した。
株式会社アピリッツの2026年1月期第2四半期決算は、売上高の増加というポジティブな側面があるものの、大幅な利益の悪化というネガティブな側面が強く印象付けられる結果となった。特に、営業利益、経常利益、純利益が赤字に転落したことは、投資家にとって大きな懸念材料である。
今後の見通しとしては、まず、利益悪化の主因となったWebソリューション事業における不採算案件への対応と、デジタル人材育成派遣事業におけるM&Aに伴う一時的な費用増加が、いつまで影響を及ぼすのかが注目される。これらの要因が一時的なものであれば、下期以降の回復が期待できるが、構造的な問題であれば、さらなる収益改善策が求められる。
また、同社は「セカイに愛されるインターネットサービスをつくり続ける」というミッションを掲げ、デジタル人材の育成と事業領域の拡大に注力している。今回のM&A戦略は、その成長戦略の一環であり、Bunbu Joint Stock Companyの取得による海外展開やシナジー効果への期待は大きい。しかし、これらの戦略が早期に収益に結びつくかどうかが、今後の企業価値向上における重要な鍵となるだろう。
さらに、推しカルチャー&ゲーム事業における「推し活」市場の拡大や、新規事業への取り組みも注目される。これらの事業が、既存事業の収益悪化をカバーし、新たな成長ドライバーとなる可能性も秘めている。
総じて、今回の決算発表は、短期的な収益の悪化により投資家心理を冷え込ませるものとなったが、中長期的な成長戦略への期待も残されている。今後の業績回復に向けた具体的な施策と、その実行力、そして市場環境の変化への適応力が、同社の企業価値を左右する重要な要素となるだろう。投資家としては、下期以降の業績動向、特に利益率の改善状況を注視していく必要がある。
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